第1話 困窮者の生活

 この世界に来てからたぶん一ヶ月くらい経過した。言いたいことは山ほどあるが、最初に言うべきことはこれだろう。


 ホームレスになりました。


 経緯けいいを話そう。

 おじさんに殴られた後、適当に歩きまわったら大きな街にたどり着いたんだ。

 レンガづくりの建築物が建ち並び、通りは人々の往来おうらいで活気にあふれていた。外観がいかんが中世的でボクは少し興奮した。


 そこまでは良かった。いや良くはないか。

 言葉がまったく通じないのだ。しかも話しかけたらあからさまに不機嫌になって悪態あくたいをつけてくるのだ。民度低!

 たがジェスチャーは通じるらしい。試しに中指をたてたらぶんなぐられた。証明完了。

 しかしそんなことをやっているうちに、空腹という初歩的な問題にぶち当たった。悲しいことに食べ物をめぐんでくれる人は一人もいない。

 街にいる同僚どうりょうホームレスたちが物乞ものごいをする場面を見たが、ひどいあり様だった。


 暴力暴力暴力暴力暴力暴力暴力暴力暴力暴力暴力…………………


 日常的に行われているようで、誰も意にかいさない。人間の残虐ざんぎゃくさをの当たりにした。 

 同じ目にあいたくないので、ボクは街の外に流れている川を拠点きょてんにサバイバル生活を始めた。水やら食料がたくさんあるので合理的ごうりてきな判断だろう。ムシ、オイシイヨ?


 こんな状況でも心がれなかったのは我ながら不思議ふしぎなものだ。要因よういんはわかっている。ダンボールの存在だ。

 寝具しんぐとしてはもちろん、雨風をしのぐためのシェルターにもなった。ダンボールは抜群ばつぐんのポテンシャルをめていたのだ。

 ダンボール最高。愛してる。だがそのダンボールが残り七個しかない、大切にしなければ。そうだ!友人の名前を付けちゃおう…………


 そんなこんなでボクはホームレスになったのだ。野宿のじゅくと言えば多少聞こえはよくなるけど、ダンボールの家では心もとない。

 早急そうきゅうに言葉を覚え、職や家を確保しなければ。このままでは必ず力尽ちからつきて死んでしまう。問題は山積みだ。

 


 


 

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