第7話 初クエスト
――――……
――……
「――おいおい、『とっておき』って……薬草採集かよ!!」
登録から一時間後。俺たちは村の裏山に来ていた。
受注したクエストは『
「あーだめだよにーちゃん、もっと気合いれて根っこから抜かなきゃ! 腰使って、腰!」
「違う違う! それは『
「あーあー、見ちゃいらんないよ。薬草採りすらできんとは、最近の若いもんはまったく……」
必死こいて薬草摘んでる傍らで、のんきにお花見をしている村の老人会ご一行。話によればこの裏山には魔族がいないらしい。初めてのクエストだというのに、緊張感もクソもあったものじゃない。
「くそ、なんだってこんなことを……」
「しょうがないじゃろう。そもそも発注されていたクエスト自体これしかなかったのじゃから」
「ここは我らが領地の膝元、魔族との争いもないしな。さあ、黙って手を動かせ!」
冒険者を必要とするほどの
まあなんだかんだ言って、俺だって戦いがしたいわけじゃない。というか、採集用の鎌すら買えない状態では戦闘なんて無理だろう。
「いやあ、リリアちゃんはほんとに良い子だねえ」
「うちの孫といい勝負だ!」
「ほら、飴ちゃん食べるかえ?」
「ぶれいこう!」
と、じじばばたちに可愛がられてご機嫌なリリア。まっ、幼女が楽しそうならそれでよし。平和が一番というわけだ。……ただ、あまりに平穏すぎて俺は少し気になってしまった。
「なあ、この世界って大量に魔王がいるんだろ? こんなにのんびりしてて大丈夫なのか……?」
ここが田舎の方の村だと仮定しても、いくら何でものんきすぎやしないだろうか?
すると、パロは当然のように肩をすくめた。
「ほっほっほ、何を言っておる。二百柱もおれば十人十色、世界のどこでも人間と魔族が争っているなんてことはないのじゃ。中にはアムネス様のように人間と友好的な王もおるし、友好的とはいかないまでも互いに不干渉を守っている地もある。むしろ、全体で見れば戦争状態にある地の方がずっと少数なのじゃよ」
確かに、いつもドンパチやってたらお互い身が持たないもんな。
……ただし、パロは表情を曇らせながら付け加えた。
「ただ、最近はそのバランスも崩れてきておるがの……」
理由はだいたい想像がつく。‘転移者’――俺と同じ別世界から召喚された者たちのせいだろう。
「なあ、転移者ってどんな奴らなんだ?」
「その名の通り、異世界から‘転移’してきた者たちじゃよ。伝え聞く限りじゃと、転移者たちはみなこう証言するらしい――『アイオニア』という世界から来た、と」
『アイオニア』……初めて聞く地名だ。
「そなたは確か……‘チキュウ’の‘ニホン’という国から来たんじゃったな?」
「ああ、アイオニアなんて聞いたことないぜ」
「ふむ、となると、既存の転移者とはまた違う世界から呼び出してしまったのかも知れぬのぅ。やはり
「お、俺のステータスの話はいいから! ……それより、転移者ってのはどれぐらいいるんだ?」
聞いた感じだと数十人ぐらいいそうだが……
「そうじゃのぅ、転移者の力が知れ渡った昨今、召喚の数は一気に増えているからのぅ……少なく見積もっても百は越えておるじゃろう」
「げっ、そんなに!?」
おいおい、勇者のバーゲンセールかよ。
「っていうか、異界召喚ってそんな簡単にできるもんなのか?」
「いんや、召喚には特殊な魔導書が必要じゃ。一回使えば無くなってしまうものじゃから、どこの国も血眼になって探しておるらしいぞ。わしらの場合はアムネス様の隠し書庫にあったものを使ったのじゃ」
「ああ、俺が召喚された時の地下室か……」
特殊な魔導書ねえ。一体どこの誰が作ったんだか知らないが、もうちょっと希少価値ってのを考えて欲しいものだ。
なんて考えていると、横からセラが噛みついてきた。
「――おい、貴様ら! 口よりも手を動かせ!」
「ほいほい、わかっておるよ」
「ああ」
そう、今は遠い国の転移者たちより、目先の飯の方が大事なのだ。
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