第5話最初の街は夢占いの街らしい
本当に音がビューなんだ。
ドラゴンに乗った俺の感想だ。
必死にドラゴンに捕まっていると、風が切るように肌に当たり痛い。とても普段使う空中浮遊の魔法<カイエル>ですらこんな高速で飛ぶことは出来ない。
「なあ、いつもこんなに早いのか?」
「当たり前だろ。お前達人間みたいに飛んでいたらやってらんねーよ」
そう言いながらもドラゴンの顔は少し辛そうだ。
「手伝おうか?使えそうな魔法みつけたんだぜ」
「黙ってろ」
空を飛び出してからずっとこんな感じで不愛想だ。どこに行くつもりなのか、ドラゴンたちはどこにいるのか疑問を投げかけても全く答えてくれない。
「ゴツゴツしているな体。見たまんだ」
「……」
「それに体のオレンジ色綺麗だなーホント」
「……」
「こんな色どうやったら作れるんだろう~」
「……」
ドラゴンの大きな背中に寝転がるといつもの空が見える。無数の綺麗な星空が散らばる空に大きな雲がいくつもあったので、手でつかもうとした。
「あっ……」
自分の手のひらには何もないのだが、汗で少し濡れている。
本当にもうないのだと感じる。俺が部屋に引きこもっていた時に引っ張り出したくれた力強い手を、俺が初めて魔法を使ったときに震えていた手を、もうこの手では掴むことは出来ない。
空に光る星はこんなにも綺麗だったのだろうか。頬に涙が流れているのがわかる。
疲れた。寝よう。
俺は白線の上に立っている。少しでも足を動かしたらはみ出てしまいそうな幅だ。周りを見ると、同じような白線が等間隔で並んでいる。白線以外が黒いのでまるで昔に存在していたような歩道だ。
今時歩道を必要とするのは、非魔法使い<アン・サースィエ>が何かモノや人をクルマという物で運ぶときに使うくらいで、魔法使い<サースィエ>にとっては特に必要性は感じられないものだ。
「こんなところは出よう」そう考え一歩踏み出すと、足が黒色部分に吸い込まれそうになった。正しくは黒色の部分には何もなくて、白線が浮いているだけだ。目の前にあるそれから落ちないように注意しながら裏側まで見たのだが、何も付いていなかった。ただ白い線が浮遊しているだけなのだ……。
白線を不思議に思い探っていたら後ろからたくさんの声が聞こえた。
「急げ」「間に合わない」「遅れるぞ」
気づいたら俺は思わず足を踏み出していた。そして、黒い部分に吸い込まれていった。
「起きろ。夢占いの街に行くぞ」と声が聞こえる。
どうやら夢の街へ行くそうだ。
俺は目を覚ました。
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