第6話いざ、到着!

空が暗い街は小さな家がたくさん連なっている。道には提灯を掲げた露店が無数にあって、ごちゃごちゃとした賑わいのある街。この街は楽しそうだ。それがこの街に来たときの俺の感想だ。


ドラゴンと降りた山からは目的地である「夢占いの街」が見える。

「ありがとう」

「……」

ドラゴンは俺の言葉を無視して街を眺める俺の隣から消えた。暗くてすぐには見つからなかったが山の奥にズンズンと進んでいることに気付いた。

「おい、お前」

走って追いかけたのだが、見かけによらず早いあいつは消えてしまった。そしてあたりを探す俺の前には、俺の腰たけぐらいの背の1人の少年がいた。

「いくぞ」

出会ったばかりの銀髪の少年はまるで親が子供に言いきかせるように言った。

「君だれなの?」

「は?俺だぞ」

俺。オレ。おれ。

「さっきまでの姿だと街の中になんて行けないだろ」

俺は納得出来なかったが、ずんずんと山を降りる“ドラゴン”の後ろに続いて、急いで山を降りた。


ドラゴンにはフィニー・メタモ(変身魔法)ですら変身できない、唯一の生物だ。だからこそやはりドラゴンだとの主張は信用できる。

俺はある論文を読みドラゴンについて知る必要性があるのでとても大切な観察対象だ。俺のオーラが見えすぎる症状と関係するのだから。


街の入口にはようこそ夢見街へと書かれた大きな立て看板があるだけの普通の町だ。ここに建つ家はどれも赤レンガで出来た屋根に煙突があり、それからもくもくと煙が出ていて懐かしい匂いがする。肉の匂いだな、そんなことを思いながらもくもくの道を道なりに曲がると新しい風景が視界に入ってきた。

「すっげ~。お祭りじゃん」

目の前にはこれまで歩いてきた道の両サイドに小さな提灯を掲げた露店が多く存在する。歩くと小さな提灯にはMr.カリーヌや中華飯店など店名が書かれている。

「なあカリーヌ行こうぜ」

「……」

「そういえばお前って名前なんなの?」

「……」

“お前”は顔をしかめて、急に立ち止まってしまった。

「どういうこと?名前を聞いているんだけど」

地面を見つめたまま俺の言葉を無視していたのに、急に大きく目を見開いて“リュウ”と答えた。

「……それはドラゴンだから?」

俺を置いて“リュウ”はカリーヌと表記された提灯の方へ走っていってしまった。どんどんと小さくなっていく後ろ姿は初めて見るはずなのにまるで自分の子供の頃のようだ。


「なあ兄ちゃんたちよそもんだろ」

「観光に来た感じですね。ハハ」


Mr.カリーヌという提灯を掲げるくらいだからおしゃれなお店だと思ったら白いハチマキをまいたおじさんが立っていた。

「なにがいいんだ」

ハチマキのおじさんが指す先にはメニューと書かれた木の板があり、達筆で1つ600円「テリーヌとぱん」「ロッシーニ風すてーき」「日替わりぱすた」の3つが書かれている。

オススメを聞くと全てと答えたので3つ頼もうと思いポケットから財布を取り出したが、中には1000円しか入ってなかった。       

そのとき俺は困った顔をしていたのだろうか、隣で“リュウ”は笑顔で言ってきた。

「おにいちゃんお金ないの。貸そうか?」

俺は黙って頷いた。店主が料理を作るところを眺めた。リュウの嬉しそうな憎たらしい笑顔をみないように必死に調理過程を眺めていた。


うぜー。人間になると喋るし。いや俺もテンション上がっていたけどさ。こっちが本性?でもそんなことはいい。


「リュウ聞いていいか。俺さオーラが見えるんだよ」

「そういうのいいから」

「なんか知らないか?」

「占い始めるなら勝手にどうぞ」

リュウはそう言うと会計を済ませ、あと15分らしいから歩こうと言ってきた。2人で歩き出すと、リュウは珍しく自分から話し出した。

「オーラってどれくらい見えるんだ?」

「やっぱり気になるのかよ。なんか急にボンって」

オーラのことを話すのはミカン以外では初めてなので説明が難しい。

「最初はたまに見えるぐらいだったんだけど、頻度も上がってきてさ」 

リュウは自分から聞いてきたにも関わらず、黙って頷いているだけだ。

「人を直接見ないと見えなかったものが、例えば扉ごしに見えるようなってきて」

「そうか……」

リュウは地面に転がる石を蹴ると、俺の方を向いた。

「お前はドラゴンを探していたからすぐについてきたんだろ」


俺は言うべきか迷った。これは警察に罪を告白するような悪者になったような感じがしたからだ。向こうに言われた通りついて来ただけなのに。


「興味があったからさ。ドラゴンって」

「そうか……」


するとリュウは学校はどうかと聞いて来た。大雑把な質問だったが、馬鹿げた学校の授業をかなりサボること、それを怒るのはミカンだけであること。色々と答えた。


「知っていると思うが、お前がどんな魔法を使いこなせるようになるのはオーラの力だぞ」

「知っている。なにかで読んだことある」

「ならドラゴンとオーラのことも知ってるだろ」

お手上げだ。

「オーラが見える人間は将来ドラゴンになる可能性があるんだろ」

やっぱりか、と言って先程のカリーヌの方向へ歩みを変えた。

「食事をとったら教えてやるよ。夢占いの館で」


俺は確実に近づいている。

 

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