俺は女を助ける
この後優勝を祝ってパーティーなどが開かれたが俺は別件を抱えていたので
静かに抜けて帰ることにした。
「ただいま」
「遅かったな、どうかしたのかい?」
「ちょっとな」
「飯食べる?」
「ああ、そうする」
どうやら、飯は出来ているらしい。
食べながらでも話すとするかな。
☆◇☆◇☆◇☆◇☆◇☆◇☆◇
「なぁ、フォード」
「なんだい」
俺は今日起こったことを事細かに説明した。
優勝したことや大会が開かれた学校からの
スカウトのこと。
「お前はどうしたいんだい」
「何が」
「だから、あの魔法学校にはいるのか」
俺は個人的にどうでも良い。
結局魔法学校に入ったところで魔法を習っても
使えないから意味がない。
それに、構築図や付与魔法の勉強も疎かに
なるくらいなら別に行かなくても
良いとさえ思っている。
俺の目的は、魔王の討伐であって魔法学校に
入ることではない。
確かに色々な奴らと戦って己を鍛えることは
魔王討伐の近道になるかもしれないが、
あまり干渉し過ぎて、元の仲間達と出会えなく
なるのは最悪の結果だからな。
「別に、入りたいとは思わない」
「ふ~ん。
ま、あんたが決めるなら良いんじゃない。
まだ時間はあるんだから悩んで悩んで
最終的に決めな」
「ああ」
「…別にあたしのことは気にしなくて
もいいからな」
そう言ってフォードは出ていく。
別に気を使っているわけではないんだがな。
まあ、俺が未来から来たと言ったところで
フォード信じるとは思わないしな。
さて、俺もまた明日から勉強の続きだな。
俺は二階の自分の部屋で勉強することにした。
☆◇☆◇☆◇☆◇☆◇☆◇☆◇
俺は今日も今日とてひたすら勉強していた。
ちょうど一段落し、フォードが作った飯を
食べていたときだ。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
不意に女の声がした。
今家にいるのは、俺だけでフォードはいない。
と言うことは外だな。
俺はすぐに着替え外に出た。
☆◇☆◇☆◇☆◇☆◇☆◇☆◇
案の定そこには魔物と襲われている女がいた。
やれやれ。今日は本を読んでいる時からいつも
と違う魔力を感じたが、やはり近くに
魔物が発生していたらしい。
「がるぁぁぁぁぁぁぁ!」
「きゃぁぁぁ!こっち来ないで!」
どうやらこの女も魔物も俺に気づいてないな。
こういうとき魔法を使えないのが不便だ。
俺は魔物の気を引くために石をぶつけた。
「ぎゃおん!……グルァァァァ!」
よし、こっちに気を引けたな。
あとは、奴が攻撃するときを待つだけ。
「グルァァァァァ!」
奴は、爪で攻撃してきた。
ライオンのような体に腕が六本あるこの魔物は
単純攻撃ではなく、ちゃんと闇魔法を使って
来てくれた。
読書を邪魔された恨みも込めて、攻撃を倍以上
と付与魔法で強化しておいた。
奴は一発でやられてみるみるうちに
跡形もなく消えていった。
ふう、一件落着だな。
俺は、家に戻り本を読もうと帰ろうとしたところで、
「まっ、待ってください」
そういえば、こいつを助けるために
来たんだった。
目的を忘れるところだった。
「なんだ」
「あ、あの助けてくれてありがとう」
ん?こいつどこかで見たことあるような?
気のせいか。
「気にするな。
ただ、本を読むのに邪魔だっただけだ」
「そ、そう。けど本当にありがと」
「ああ、立てるか」
俺は、この女に手を差しのべる。
「いたた。……助かった」
どうやらさっきの魔物に襲われて
怪我をしたらしい。
やれやれ。手がかかる奴だ。
「こい」
「え…」
俺はこの女の手を引き、
自分の家に帰っていった
☆◇☆◇☆◇☆◇☆◇☆◇☆◇
「これで大丈夫だ」
「わざわざありがとう」
俺は家に女を連れて聞く。
「お前回復魔法使えるか」
「ちょっとなら使えるよ…。
どうかした?」
「ちょっと使ってみてくれ」
「う、うん」
そしてこの女に回復魔法を使わせたところで
「反・回復魔法」
「わぁー!」
女の傷がみるみるうちに消えていく。
この女は蒼の眼だったので使えるか不安
だったがどうやら成功したようだ。
付与魔法でも回復魔法を強化したから
大丈夫だろう。
「ありがとう。ええっと……」
「………ノイルだ」
「ノイル、ありがとう!」
この満面の笑顔、やはりどこかで
見たことがある気がする。
「お前の名前は?」
「サファイア!」
やっぱりな。
こいつは八年後にパーティーを組むことになる
俺のかつての仲間だった。
☆◇☆◇☆◇☆◇☆◇☆◇☆◇
さて、状況を整理しよう。
俺はさっき魔物から女を助けてやった。
そしてどこかで見たことがあると感じ、
名前を聞いてみると、かつての仲間だった。
どうやら、ちゃんと過去に戻り仲間達も
生き返っているようだった。
一先ず安心だな。
「ところで、サファイア」
「ん?なに?」
「お前はどこから来た?
少なくともここら辺の奴ではないと思うが」
「北地区から来た」
「そんな遠いところからどうした?」
「耐えられなくなって」
どうやら、サファイアは家が貴族なだけあって
毎日毎日習い事や勉強を強いられていたため
逃げるように走り続けてここまで来たらしい。
その途中に魔物に遭遇し、俺が助けて
今に至るということだ。
さて、どうしたものか。
馬車を呼んで北地区に戻す選択もあるが
本人も嫌がってるし尚且つ馬車代がない。
だからといって他に手段があるわけではないので大人しくフォードが帰ってくるのを待つことにした。
☆◇☆◇☆◇☆◇☆◇☆◇☆◇☆◇
「ただいまー」
「ノイル!誰かがきたよ!」
「落ち着けサファイア。味方だ」
フォードが帰ってきた。
「ふぃー疲れ………えっ?!なにこの子?!
誰?!お前の知り合いかい?!」
俺はフォードことの経緯を伝えた。
「ふむふむ、なるほどね。
サファイアちゃんは家に
かえりたくないと。」
「はい………」
「けどここら辺もうどこもやってないだろ。
さっき聞いたけどサファイアもお金は
持ってきてないって言ってたし」
日はフォードを待っている間にすっかり
落ちてしまっていた。
これから泊まれるところを探すのも
危険だからな。
「どうするんだ」
「ふっふっふ。良いこと思い付いたよ」
「何ですか……?」
「私達の家に住めば良いんだよ!」
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