第16話 サッカーボールは何処ヘ?

前回のあらすじ


サッカーボールは川の向こう側へと行き、もう諦めることにした。

そして、僕達は部室へと帰る。

しかし、帰ってきた鳩サブレーたちが持っていたのは、どこか見覚えのあるボールであった。


本編


鳩サブレーが持っていたボールについて、時を遡る。


――――――――――――――――――――


僕たちBフロアは、Aとは逆の方向にある河川敷へと向かっていった。

担当は僕、鳩サブレーと笑顔が怖い蘭舞先輩だ。


部室ではうるさかった蘭舞先輩だが、外に出ると、あの時のように大人しくなっていた。

黙っていれば可愛いのにな、

そう思いながら歩いていると、僕はあることに気づいてしまった。


僕、今女子と2人きりでいる!?


そう考えていると少し緊張してきた。

それもそのはず、僕は1度も彼女が出来たことない。つまり童貞だ。

それに、よくよく考えたら女子と2人きりの時なんて、妹以外なかった。

姫流乃はいつもクラスの女子と帰っていたし。



気まづい雰囲気が2人の間に流れる。

その中まず最初に話を切り出したのは蘭舞先輩だった。


「そういや、なんで帰宅部に入ったの?」


言われてみればそんな事考えたことなかった。当時はどこでもいいから入りたいって感じだったし、でも今はやっぱり


「楽しそうだったからですかね、ここが」


「そうか、そして今はどう?たのしい?」


「楽しいです!」


僕は笑顔で言った。

先輩はホットして、


「良かった、ちょっと頭のネジ1本取れてるようなクラブだけどこれからもよろしくね」


確かにこの部活は生徒にエロ本を転売したり、元ぼっちが部活を仕切っていたり、フォニックス発音がギリシャ語の人だったり、普通じゃない人が集まる部活だ。でも、それがいい! 個性溢れる人達が集まるこの部活が僕は好きだ!


「よろしくです!」


帰宅部に入ってよかったと実感できたところで、目的地の場所に着いた。


「あそこよ」


そう言い先輩は茂みの方を指さした。

僕達はそっちに向かった。


「今月は6冊、ギリノルマ達成ね」


エロ本の数を数えて安心そうに先輩は言った。


「ノルマとは?」


ノルマが気になった僕は先輩に尋ねた。


「うーん、簡単に言うと目標みたいな感じかな? ここで言う目標はエロ本が10冊から7冊以下になっていることよ」


「じゃあもしそのノルマが達成できなかったら・・・」


「退部」


「え?」


僕は一瞬固まった。

つまり、今日設置したエロ本がもし7冊以上残ってしまったら・・・僕はまた本当の帰宅部に・・・。


「ハハハ、なに人生終わったみたいな顔してんのよ冗談に決まってるんじゃない」


「え? えええええええ! 驚かさないでくださいよ」


少々先輩に対して怒りが沸いたものの、内心ホッとした。


「さて、エロ本設置したことだし帰りますか」


その時だった。


「うわぁーーーーーーん」


どこかしらか、子供の鳴き声が反対の方の河川敷から聞こえてきた。


そのせいか近くで釣りをしていたおっさんが激怒していた。

おそらく魚がびっくりして逃げてしまったのだろう。


しばらくすると子供の泣き声は止んだ。

僕達は何が起こったのか気になり、川の近くまで来た。


するとあら不思議、誰かのサッカーボールがどんぶらこどんぶらこと流れてきました。


「先輩あれ!」


「誰のか分からないけど、なんか放っておいては駄目な気がするわね」


そう思い、僕達はそのサッカーボールを川から取り出し、学校に持ち帰った。


――――――――――――――――――――


「そして、今に至るわけ」

僕が経緯を説明し終わると、部長は嬉しそうに、


「よくやったぞ、鳩! 助かった」


「まじですか?」


「ああ、そのボールは今日一緒に遊んだ近所の子達のボールでな、さっきまでどうしたらいいか悩んでたんだ」


「それに見ろ、あいつの顔」


そう言い、部長はしいたけの方を指差す。

そして僕はしいたけの顔を見た。


その時のしいたけはまるで、なにかの罪悪感から一気に解き放たれたようだった。


「ああ、ほんとに良かった、あのままボールが見つからなかったら僕は一生サッカーが嫌いになってたよ」


「え? お前サッカーしたの? 運動音痴なのに」


「ハハハ、半ば強制的だったけどな。でも楽しかったよ」


あのしいたけが体育の時間以外で運動をするなんて。と感動しつつ、それもこれも全部帰宅部に入ったおかげだなと思った。


「ということで、明日は休みだ! 思う存分休むがいい!」


「「やったーーーーー!」」











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