第15話 サッカーボール桃太郎

 前回のあらすじ


 エロ本を設置しに来たしいたけとアルト先輩と部長だが、そこでたまたま出会った小学生とサッカーをすることになった。

 しかし、その途中でサッカーボールは桃のようにどんぶらこ、どんぶらこと流れてしまった。


 あれ、これって相当やばくね?



 本編


「あ!」


 そう言い1人の少年が走り出す。

 それから次々と1人、また1人と、ボールが落ちた川へと走り出す。

 僕も川に向かって走り出した。


 意外と川の流れは緩やかで、すぐにサッカーボールに追いつくことが出来た。


 しかし、来た時には、ボールは向かいにある河川敷の方まで寄っていた。


 ようするに僕たちがボールを取ろうとしても、もう届かない距離にあるということだ。


「どうしよう」


 1人の少年が涙目で言う。


「この距離は諦めるしかないんじゃないか?」

「泳いでとるのも危ないしな」

「向こうにいる、心優しい人が拾って交番に届けるのを祈るしか手段がもう」


 それを僕たちは、どうすることも出来ないと否定する。


 せめてここに泳ぎのうまい姫琉之がいれば·····。

 いやでも上がったときにブラが透けて見えるのでは?


 僕は少し赤くなる。


 あ、でもあいつさほど胸無いからブラなんてつけないか、アハハ


 じゃあノーブラじゃねえかぁ!


 そんなくだらないことを考えている間にもボールは、どんぶらこ、どんぶらこと流れていってる。


 うわーーーーんーーー


 そして1人の少年、おそらくこのボールの持ち主が、川の前でついに泣き出した。


 その声は僕の「あった!」より何倍も大きな声だった。


 それほど悲しかったのだろう。


「お母さんにお願いして、やっと買ってもらったサッカーボールなのに、」


 分かるよ、その気持ち、僕も新しいシャーペン買ってもらって初日で友達にぶっ壊されたからな。

 ちなみにその友達はわざとでは無く、誤ってやってしまったと供述している。

 普通に扱ったらまず壊れないと思うが、


「ドンマイ、ドンマイ」


 僕たちは少年を全力で励ました。

 そして辺りが夕日に染まる頃、少年は涙を拭いたち上がる。


 そして僕と部長、そしてアルト先輩に少年は頭を下げて言った。


「今日はありがとうございました、またいつか一緒にやりましょう」


 そして少年は顔を上げる。

 その顔は笑顔で、どこか悲しい顔だった。


「ああ、またいつかな」


 部長はそう言うと手を振り、後ろへと振り返る。

 僕とアルト先輩も後ろへ振り返り、歩き出した。


 自分が相手にパスをしたことで、ボールは飛んでいき、川へと落ちた。

 じゃあ、もし僕が触らず、そのままスルーしていたなら、ボールはどうなっていただろう。


 そう考えると、僕の胸には罪悪感しか残らなかった。



 やっぱりサッカーは、苦手だ。


 そう強く思った。


 _________________________________


 やがて、僕たちは部室へと戻った。


 まだ鳩サブレーたちは帰っていなかったので、机でスマホをいじりながら僕は待っていた。


 部長はパソコンでカチャカチャと何かをしており、アルト先輩はつかれたのかぐっすり眠っていた。


「ただいま! お、もう帰ってたのか」


 ドアが勢いよく開いた。

 声から察するに蘭舞先輩だろう。


 そして、鳩サブレーの手には見覚えのあるボールが乗っていた。


 そう、そのボールとは、


 今日使った、サッカーボールのことだ。

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