第14話 きっとこういうことなんだ。

 前回のあらすじ


 僕たちは先輩たちとともにAとBに分けて、エロ本を設置することになった。

 ちなみに僕、鳩サブレーは蘭舞先輩といくことに、絶対に何かやらされる、嫌だー!


 え? 僕今日出番無いのですか?


 本編


 河川敷の茂みの中、先輩は黙々と先月くらいに設置されたであろうエロ本を回収していく。


「おいアルト、10冊から5冊に減ってるぞ」


「やりましたね、今月も目標達成ですよ」


「エロ本が減ってるとやりがいを感じるな」


「そうですね」


 え? 何話してんのこの人たち、減ってる? 目標達成? どういうこと?


「あ、ごめんしいたけ、お前には説明してなかったな、まあ鳩にもだけど」


「あ、はい」


 分からないというのが顔に出てたみたいだ。

 めっちゃ申し訳なさそうに部長とアルト先輩はこちらを見る。


「アルト、説明を!」


「ここ、帰宅部は月1にエロ本を取り替え、新しいのを設置している。その理由としては単純に飽きるのと、こっそり持ち帰る人もいてエロ本が減るからだ」


「確かに無くなったら元も子もないですからね」


「そこで我が帰宅部は1ヶ月に10冊以上の乳●とま●この見えない良質なエロ本を調達し、設置して1ヶ月後に7冊以下に減っているのを目標としている!」


 そうアルト先輩は僕と部長に聞こえるくらいの声量で言った。


「ちなみにこの本を読むのは年代的に3、4年生のまだ女の子の仕組みを知らないガキたちだ。無いと思うがこの本たちの中に1ページでも女の大事な部分が写っていたならすぐに処分しろ」


 補足として部長が言った。


 とりあえず僕は適当に取ったエロ本のページをペラペラとめくる。


 やばいシーン、さすがにそんなのあるわけ·····。


 !?


「あ、あったー!」


 僕は大きな声で叫んだ。

 その声は河川敷中に響き渡った。


 いやだって、しょうがないじゃん、まさかあると思って無かったんだもの。


 その声を聞きつけた、サッカーをしていた小学生達が僕たちの方へ駆け寄った。


「お兄ちゃんたちどうしたの」


「なに? ツチノコ?」


 やべ、どうしよう。

 僕は戸惑った。


「アルト、なんとか誤魔化してこい」


「はい部長、分かりました」


 なんとか部長が策を練ってくれたがアルト先輩大丈夫かな?


「おい、しいたけ、何を見つけたんだ」


「は、実はちょっとあそこが見えている部分がありまして····」


「そうかよくやった、ではその本は部室に保管しとこう」


「はい、わかりました」


 その間、アルト先輩は、


「お兄ちゃん何見つけたの?」


 そう聞かれたアルト先輩は胸ポケットに入っているロケットペンダントを取り出す。


「これを探してたんだ、とても大事なものだったから見つかってよかったよ」


 このロケットペンダントは確か、あの時の、いつも持ち歩いてるんだったけ?


「そうなんだ、よかったねお兄ちゃん!」


「ああ」


 いい感じに終わってるけど、本当はエロいシーンが写ってて叫んだだけなんだよな。

 面目ない。


「そうだ、お兄ちゃん、一緒にサッカーしない?」


「僕はサッカーとかそういうスポーツ出来ないんだ、だから変わりにあそこにいるお兄ちゃんたちとしてくれないかな?」


 そう言ってアルト先輩は僕と部長を指差す。


 え? 僕サッカー苦手なんだけど。



「しいたけ、もちろんやるよな」


 部長がニッコリと圧を入れながら言ってきた。

 しょうがない、久々に僕の力を発揮するか。


「はい、やりましょう!」


 そう言って、僕と部長は小学生たちの元へ駆け寄った。


 _________________________________


 試合は7分間の1試合のみだ。

 チームは部長チームと僕、しいたけチームに別れて行うらしい。

 審判はもちろんアルト先輩、前と同じで、サングラスをかけて、白い日傘をさしている。

 こうやって見ると、本当の監督のようで少し怖い。


 やがて、試合が始まろうとしていた。

 ボールは正々堂々とジャンケンして僕が負けたので、部長チームが持っている。


「よーいスタートー!」


 アルト先輩の合図と同士に部長はかっこよくドリブルをして前へ行くのかと思いきや、すぐに近くにいた子にパスをした。

 そして、いきなり貰った子も慌てて誰も味方がいない方に蹴ってしまった。


 ボールは僕たちの方に向かって転がっていく。


 よし、チャンスだ。そう思いボールに、向かって走り出す。

 そしてボールを足でキャッチした。


 そこで僕は実感した、サッカーの恐ろしさを、


 何故か足が動かない。

 頭の中ではイメージが出来ているのに、足が思うように動かない。

 辺りを見回すと敵がものすごい勢いで走ってくる。


 やばい、


 せめて味方にボールを回さなくては、


 そこで奇跡が起こることを願い僕は前に思いっきり蹴った。


 ボールは勢いよく転がっていく。


 やがてそのボールは綺麗にコーナーを突きつけた。



 僕の願い、ゴールには、惜しくも届かなかったのか。


 僕は申し訳なさそうに味方の方を振り向く。

 しかし、みな、とても嬉しそうだった。


 何で? 何でミスったのに喜んでるの?


「ナイス! コーナーから相手のボールを取れば1発で決めれますよ、ありがとうございます」


「よし、ここからが本番だ!」


 そう言って盛り上がっていた。

 そうか、この小学生たち、



 めちゃくちゃポジティブじゃないか



 そうと、決まればやってやる。


「よし、お前ら!相手のチームをぶっ潰すぞ!」


「「おーーーー!」」


 こいつらは、めちゃくちゃ良い奴だ。

 今まで出会ったやつと比べたら大違いだ。

 鳩サブレーを除いてな!


 相手がコーナーから味方へとボールを投げた。

 その相手は、僕がちょうどマークしていた相手だ。


 僕は相手に気づかれないように、相手の前へと踊り出た。


 やがて、ボールは僕の元にやってきた。


 それを僕は冷静に判断し、ゴール近くにいた、スポーツ刈りの少年に、ボールを回す。


 そしてそのボールをスポーツ刈りの少年は力いっぱいゴールに向かって蹴った。


 そしてそのボールはゴールを超え、草むらを超えてものすごい勢いで進んで行った。


 そして、そのボールは何故か急に見えなくなった。

 それと同時に、ポチャンという何かが水に落ちる音がした。


 刹那、僕は考えたが、すぐに分かった、


 サッカーボールだ。


 いざ、確かめに、みんなで川の方に行くと、白と黒のサッカーボールは、桃太郎の桃のように、どんぶらこ、どんぶらこと流れていった。


 さらば、サッカーボールよ。






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