第5話 ちょっ、お金なんてものは持ってないぜ!
前回のあらすじ
「エロ本を読んでいるんだよ」
本編
「エ、エロ、エ、エロ、エ?」
僕は訳が分からず戸惑った。
「安心しろ、ちゃんと君の思っているエロ本だから」
さらっと言ってるけどそれって法的に大丈夫なの?
「エロ本ってその、小学生なんかに見せていいものなんですか?」
すると、先輩は冷静に言った。
「もちろん一般的に考えればダメかもしれない、しかし、世の中の小学生がこういうことを知っているのが当たり前になりつつある」
「だからといって、」
「安心しろ!乳〇と〇〇こは一切写ってない!」
先輩はさらっととんでもないことを口に出した。
「だからと言って、下着が写ってる時点でアウトでしょ」
先輩が真剣に僕の顔を見て言う。
「違うんだよ、しいたけ、今の世の中はこれくらいが、健全なんだよ」
ヒューと風が吹く。河川敷の草がガサガサと騒ぎ出す。
確かに僕もHなことはある程度知っている。
もうこの歳頃なんだし、思春期なんだし、
でも僕はふと思う、何故先輩があの子たちはエロ本を読んでいると分かるのか、
「そういや、先輩は何故その子たちがエロ本を読んでいることが分かるのですか」
刹那、辺りが静まり返った。
僕は唾を飲み込む。
「それはね、この本は僕たち帰宅部がこっそり設置したものだからさ」
いや、なんかさらっとかっこよく言ってる感じだけど、先輩やってることはこっそりエロ本設置してるだけだからね、中学生としてありえない事だからね!
「じゃあそろそろ焼却場へと向かいますか」
そう言って先輩が草むらから立ち上がり、おしりに着いた草を払う。
僕も流れで立って草を払う。
正直先輩の言ってることはよく分からなかった。
しかし、これが悪いことだとは思わなかった。
きっとこれは素晴らしいことなのかもしれない。
エロ本を設置することで誰かを助けるかもしれない。
僕はそう思った。
僕と先輩はのんびりと歩く、歩いている間はとくに喋ったりはしない。無言だ。
そのため、僕はさまざまな音が耳に伝わる。
小学生が野球でカキーンとホームランを打った音。
カラスの鳴き声。
自転車を漕ぎながら、チリンチリンとベルを鳴らす音。
そして、不良のイヤリングがあたる音。
その不良は何故か僕たちの方に向かってきた。
「おい、お前らジャンプして見ろ!」
何故か不良に絡まれた。
やばい、どうしよう。
体育の成績4(10段階)の僕が勝てる相手でも無さそうだ。
それに、先輩も運動出来ないつってたし、ヤバくね?この状況。
まあそれよりもジャンプして見ろ!といういかにも昭和っぽい確かめ方につぼりそう。
まあとにかく僕たちは絶対絶命だ。
お金はないが、僕は今日たまたまデパートの商品券を持っていた、これを持っていかれたら今日の夕飯はなしだ。
いやでも紙だからチャリンて言わなくね?
じゃあジャンプしてもいいんだよな?
僕はジャンプをする構えをした。
先輩の方を見ると、何故か冷静だった。
まるでこの状況になれているかのように。
僕は先輩を信じて、ジャンプの体制から起立の体制へと戻した。
先輩は何か策があるのかもしれない。
そんな反応の僕たちを見て不良が殴りかかってきた。
「お前ら後悔してもしらないぞ!」
不良が先輩の顔を目掛けて殴る。
しかし先輩は冷静だった。
パン、
そして先輩は不良の攻撃を日傘を回して跳ね返した。
先輩のかさは布製でパンチの衝撃を抑えることが出来るため無傷だ。
しかし不良の方は金具に当たったせいで痛そうにしている。
もしかしてこの人、
次は僕の方に殴りかかってきた。
しかし先輩はそれを日傘で跳ね返す。
何回も日傘で跳ね返された不良は諦めたのか、アスファルトに唾を吐いて去っていった。
去っていった後、先輩にお金を持っているか聞いたら、首を横に振ってポケットからデパートの商品券を見せた。
そして胸ポケットからあるロケットペンダントを取り出してチャリチャリと鳴らした。
きっと先輩はこれを取られたくなかったのだろう。
ロケットペンダントを胸ポケットにしまった後、先輩はいくか、とだけ言って歩き始めた。僕もそれに着いていった。
そして、不良のジャンプしろ!という古い確かめ方について心の中で爆笑していた。
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