第19話色んな一面

つ、司とお泊まり!?

う、嬉しいけど......恥ずかしい......


ただ、私の心の中を幸福感でいっぱいに満たして言っているのは確かだ。


不意に招いたこの状況をみすみす手放してはいられない。

でも、何をすれば......

司はずっと上の空だし......

ちょっと、一旦気持ちを切り替えよう。


「司、トイレ行ってくるね」

「おう、行ってらっしゃい」


そして勢い良く立ち上がる。


スカートと共に......


ひらりと舞い上がったスカート。

私の手がそれを押さえつけようとした頃には地面と並行という程に上がってしまっていた。


顔がカァァと熱くなるのを感じて、私は急いで部屋を出てトイレに駆け込んだ。

み、見られちゃったかな......?

多分、ガン見してたよね。


ちょっと恥ずかしいけど、案外えっちなのはいい作戦かも。

で、でも、花音ちゃんと比べたら色気なんてないに等しいよね......

ま、まずはスキンシップを図ってみよう。


トイレの中で一人の作戦会議を終えて、部屋に戻る。

そしてドアを開けると、司が私の顔を見て視線を落とした。

そして、分かりやすく顔を赤くした。

あ、見られたな。

私はそう確信する。

そして、一縷の希望を見つけたような気がした。


「司?もしかして見ちゃった?」


司の隣に腰を下ろして、私と司の間に手をついて身体がくっつかないくらいに寄せる。


「み、見たって何を?」

「その、私の、あれ......」

「あ、あれって?」


まだしらばっくれるようだ。


「ぱ......」

「ぱ?」

「ぱんつ見たでしょ」


私はその一言で全身の血が沸騰していくかのような熱さに包まれる。

司は何も喋らない。


「見たよね?」

「.....................」

「つかさ?」

「見ました......」


司は怒られると思っているのか少し萎縮している。


「そんなに縮こまらないでよ。私の不注意だし、そんなに怒ってないよ?」


私は俯いた司を顔を下から覗き込むようにしてみる。

すると、司の顔は真っ赤に染まっていた。


「司はうぶだな〜」


私もさっきまでめっちゃ悶えてたけど......


「いや、でもほんとに悪かった」


ここまでバカ正直に謝られてしまうと、私としてもどうしていいか分からなくなってしまう。

からかう程度のつもりだったのに、司は結構重く捉えてしまっているようだ。


「そ、そう思うなら、も、もう一回」


私はまた両手を広げた。

外の雨や雷はさらに勢いを増していて、さっきまで全く気にならなかったのが嘘みたいだ。


「わかった......」


司は私の脇の下から腕を入れ、背中に回す。

そうされていることがどうしようもなく嬉しくなってしまって、早まっていく鼓動にさえ気が付かなかった。


――コンッコンッ


「司くんに涼音そろそろご飯だよ」


ドアの向こうで、母の声。

私たちはドア越しにハグをしている。

その状況を理解して、急いで私たちはそのハグを解いた。

司の匂いや、筋肉質な身体の感触が名残惜しい。


司の方を見てみると、彼は外の世界に完全に意識を向けていた。

ただ窓の外を見つめて、こっちに首が動きそうな気配すらない。

少し呆れてしまう。

でも、ちょっと小心者の彼を見れてまた、新しい彼を知れたのも嬉しかった。

すぐに下に降りなきゃ行けないので、私は司を後ろから包み込んで、こう囁く。


「また、あとにする?」


すると明らかに、司は耳まで赤くしていた。

そして私は部屋の外に出た。

司は何も言わずに後ろを着いてきた。




夕飯は珍しく品数が豊富で、食卓を囲む私たちもいつもより賑やかだ。


「いただきまーす!」「いただきます」

「はいどうぞ」


私はまずは唐揚げをとり口に含む。

すると熱い肉汁が溢れ出てきて、猫舌な私はそれに悶える。


「あ、あふい!」

「ゆっくり食べなさいよ」

「ふぁーい」


何とか飲み込むと司もおずおずとおかずに手をつけ始める。


「とっても、美味しいです」

「そう?良かった」

「これは、うちじゃあ作れませんよ」

「お母さんはいつもどんなの作ってくれるの?」

「母は単身赴任中の父に着いて行っていていないんですけど、その前は良くオムライス作って貰ってましたね」

「一人暮らし?すごいじゃない!でも寂しくなったらうちに来ていいからね?」

「ありがとうございます」


司はいつもとは少し違った優しげな笑みを浮かべて、ご飯を咀嚼していた。

また、司の新しい所を一つ知れたな!

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