第18話雷のせい
「私も恥ずかしくなるからうつむかなでよっ!!」
「仕方ないだろっ!あれは涼音が悪い!」
お互い羞恥でいっぱいになっていた。
「いきなり倒れてくんなよ......」
「ご、ごめんなさい......」
気恥ずかしくなってお互い無言になってしまう。
でも、雷が落ちるとその度に涼音はビクッとなっていて、なんだかさっきの事がどうでもよくなってきてしまった。
「はぁ~なんかどうでもよくなってきちゃったな」
「ど、どうでもいいって何よ!?こんな美少女抱いておいてどうでもいいって!?」
「だ、抱くとか言うなって」
抱くという言葉に反応してしまうのは男子高校生なら仕方あるまい。
「ばかっ!へ、変態!」
涼音は自分の体を抱くようにして、下がっていく。
「ご、ごめんって......」
「そのどうだった?」
「ど、どうだったって」
「抱いた感覚は?」
か、感想求めるの!?
「大変柔らかくてよかったです......」
「やっぱ変態」
「ひどいなぁ......」
だって本当に柔らかかったんだもん。
すると涼音がいきなり両腕を開いてまるでハグ待っている姿勢になっている。
「ど、どうした?」
「怖い......」
「雷が?」
「うん......花音ちゃんと寝てたんだし私とハグできないなんてことないよね」
その言い方はずるいって......
すると、また空が光った。
「は、早く......」
「わかったよ......」
俺はおずおずと彼女に近づいて、背中の後ろに手を回す。
その感触はさっきよりもよく伝わってきて、甘い匂いも近くで感じる。
涼音の俺を抱く腕が強くなる。
時間が止まったように長く感じる。
秒針の進む音が聞こえる。
「なんか、不思議な感じ」
「ほんと、なんで涼音とハグしてるんだよ」
「司がしたいって言ったからでしょ?」
「言ってねーよ」
顔も見ずにするやり取りは新鮮だった。
そして、意外と落ち着いて話せた。
「もう五時だね......そろそろ帰るの?」
「うん、帰ろうかな......」
俺と涼音は同時にハグを解いて離れた。
涼音の顔は赤くなっていて、その様子を見て俺も顔が赤くなってくるのを感じる。
「それじゃあ、帰るか」
俺は部屋のドアを開けて涼音と共に階段を降りていく。
一度リビングに出ると涼音のお母さんが料理をしていた。
「お邪魔しました」
「帰る?車で送るけど?」
「いえいえ、そこまでして頂かなくても大丈夫ですよ」
「でも電車止まってるし......」
「えっ!?」
俺はその話を聞いてスマホで調べると確かに電車は止まっていた。
「なんなら、うちに泊まってく?」
「お母さん!?」
俺は涼音を様子を見て帰った方がいいだろうなとは思いつつも送って貰うのは申し訳なくてどうすればいいのか困ってしまう。
「遠慮しなくていいわよ?涼音もたまにはお友達とお泊まりとかしたいだろうし」
俺は涼音に視線を移す。
「ま、まあ、たまにはね?」
俺はその様子を見て泊まることに決めた。
「すいません一晩お邪魔させていただきます」
◇◆◇
一晩泊まることが決まって、また涼音の部屋に戻ってくる。
「じゃあ、よろしくな......」
「うん......よろしく」
「迷惑だったか?」
「ううん、むしろうれ――じゃなくて、そんなことないよ」
嬉しいって言おうとしたよね......
その言葉を聞いて少し俺まで嬉しくなってしまう。
「そっか涼音は嬉しいのか」
「嬉しくないしー!」
この状況で二人で笑いあえているのが不思議に思えてくる。
年頃の異性の男女が二人。
一晩を共にすると言うんだから、多少はぎこちなくなるはずなのにそんな様子は全くない。
でも、俺の思考の中はどこで寝るのか、とかの期待が入り交じっていて、涼音から少しだけ視線をずらしてしまう。
起こりうるはずのない未来を勝手に想像してしまっているのがなんだか恥ずかしくて、俺は涼音との会話だけに身を投じた。
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