第7話冷酷姫との噂

 週末は一瞬のように過ぎ去ってまた、地獄の月曜日がやってきた。

 俺は重い腰を上げて学校へ向かう。

 俺のテンションはただでさえ低いのに、夏のジリジリとした日差しが俺を差して、汗が湧き出てくる。


 学校に着いても朝の早いこの時間は冷房なんて効いていなくて高い湿気と、暑い気温がその存在を誇示してくる。


 ――はぁ。


 俺は自然とため息が出てしまうような体のだるさを覚えていた。

 すると背中をバンッと叩かれた。


「よぉ、司」


「よっ、風季」


 風季は朝練が終わった後のようで、汗をかいているが、爽やかさが溢れ出てる。

 なんで、イケメンってだけで汗をかいてる姿がかっこよく見えるんだよ。

 卑怯だな。


 俺はべったりしてくる風季に「暑苦しい」とか「汗臭い」と悪態をついているのだがまるで聞いてくれる様子がない。


「さっさとどっか行けよ......」


「なあ、司〜週末なんかあったか〜?」


「別に何もなかった。だから自分の席に戻るとかしろ」


 そうだ、週末は何もなかった。俺が黒瀬と一緒に寝たなんて事実はない。

 風季は席に戻る様子なんてこれっぽっちも見せずにただニヤニヤとしている。


「スーパーで、お前と黒瀬さんが一緒にいたって情報が出てるんだけど?」


「気のせいだ。事実無根だ。俺はあいつと一緒にスーパーに行くはずがねぇだろ」


「でも、先週黒瀬の家行ったんだろ?誘われてたし」


「行ってない。俺はずっと自分の家にいた」


「おっかしいなぁ。俺は一回お前ん家行こうとしたけど誰も出なかったんだよな」


「あれはお前を家に入れるのが嫌だっただけだ」


 そう言うと風季は口角を上げて、嬉しそうにしている。


「まあ、俺はお前ん家行ってないんだけどな」


「はぁ?ってお前カマかけるのはずるい。とりあえず死ね」


 俺が家に居なかったって完全にバレてしまった。

 風季はずっとニヤニヤとしていて、俺が黒瀬と居たって事を話さないと帰ってくれそうにない。


「死ねはないだろ......でどうなんだよ?どうせ黒瀬といたんだろ?ナニしたんだよ?」


「お前が思ってるようなことなんてない。強いて言うなら掃除した」


「そ、掃除?」


 と風季は困惑した表情を見せている。


「そうだ。掃除だ」


「え?本当にそれだけ?そのヤったりしなかったの?」


「ヤるわけねぇだろ......お前は俺の事をなんだと思ってんだよ......」


 すると風季は軽快に笑った。


「お前に春はなかなか来なそうだな!」


 そう言って風季は自分の席に戻って行った。

 すると、教室のドアが空く音がする。

 そちらを見るとちょうど黒瀬が入ってきた。

 彼女はいつものように話しかけるなという感じのオーラを発していた。


 俺は風季がこっちを見ていないうちに彼女のもとに向かう。


「お前、今日も寝れなかったのか?」


「....................」


 無言だったが、それはある意味肯定を示していた。

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