十二話 帝国–heios–(ヘイオス)
明日からは静かな夜となるだろう。
耳を劈く五月蝿い雄叫びも、吐瀉物を散蒔いたかの如き悪臭も彼の森から此の王都迄届く筈は無し。
無駄に肉付く身丈のみが取柄の悪辣卑小な三馬鹿共は嗜狩ついでに既に用済みの滓を絞り取り小銭を稼ぐ腹積りの様だ。
アレから取り出せる魔晶は既に雀の涙程しか無いというのに全く良くやるものだ。
手間が省けると言えば聞こえはいいが享楽に現を抜かすのも大概にして欲しいものだ。
「リアナよ…間も無くだ…」
紅く、緋く、淀んだ水を遮る厚い硝子に優しく手を触れる。淀みの中から覗く深く静かに閉じた三つの瞳が薄っすらと見開らく。
男は純白のマントを羽織り、鎖に繋がれた装身具を身に付け部屋を出る。
歩きながら懐から細い眼鏡を取り出し、きめ細やかな純白の布で曇り一つなく隅々まで拭き取っていった。
役目を終えた布は廊下に跪き身動ぎ一つも許されぬ小間使いに目も向けられぬままその額に叩き付けられた。
一歩一歩、光の先に伸びる赤い絨毯を踏み締め、壇上への階段を上っていく。
「先のインスマス浄化から三ヶ月っ!小賢しくも隠れ潜んだ勇者などという偽りの現人神を崇める邪教徒共は悉く平伏し我が帝国は更なる発展の一歩を刻んだっっ!!」
眼前に広がる群衆は大歓声と盛大な拍手でその言葉に喝采を送っていた。
「これぞ神を騙る愚かな豚共に降された真なる正義の制裁っ!!天に君臨せしは絶対神ヘイオス、そして其れに連なる三柱の神々である事の証也っ!!」
群衆は壇上の男の一挙手一投足に更なる歓喜の声を投げかける。
「しかぁしっ!!!」
男が仰々しく右手を振り払うと大聖堂に集まる群衆が一瞬にして鎮まり返る。
「未だこの世は不浄に塗れている。」
「醜き邪神を未だ崇め、己が国の繁栄のみに固執する愚かなる大国。矮小な偽神共に拐かされ、自由という名の甘言に妄執し狭い国土で相争う数々の小国。怠惰と傲慢に染められ、争いを重ね続け数多くの悲劇が世に蔓延っている。」
男は顔を歪ませて目から大粒の涙を流していた。
「私は悲しい。不完全な物が欲に塗れ、仮初の地位に溺れ、管理される事なく無為な生に時を費やし、世に何の益も残さず消えゆくこの様に。」
群衆から騒めきが湧き立つ。
「全ての生命は我等が神ヘイオスの名の下に統一され、管理され、神に尽くす事こそ史上の幸福であるっ!」
「我等は神の代行者っ!これより我等は全ての国を統一し、遍く全ての生が絶対神ヘイオスを崇める世と成す為に命を賭す事を此処に宣言するっ!!阻む物には断罪を!賜う物には価値ある生を!」
群衆が再び大歓声を上げて劔を掲げる男を崇め始めていく。
「これは全て我等が渇望と支配を司る絶対神ヘイオスの神託であるっ!神の恵みに感謝をっ!力持つ者に祝福をっ!規律を乱す者に断罪をっ!我等が支配を恒久にっっ!!ナイアーラ・ヘイオス!」
「「「ナイアーラ・ヘイオス!!」」」
「ナイアーラ!!!!!ヘイオス!!!!!」
「「「ナイアーラ・ヘイオス!!」」」
大聖堂に響き渡り続ける号令。
集まる群衆の中、壇上に立ち絶対神ヘイオスの巨大な像の前で一際高らかに叫ぶ男。
神への賛美を終え兵士を鼓舞し壇上を後にする。
部屋に戻り身につけていた九つの剣と鎖をモチーフにしたクリスタルの装身具をテーブルに置いて椅子に腰掛けた。
白い装丁の聖書を開き窓の外の澄み渡る青空を眺めた。
「幾ら三馬鹿とは言え、奴等は地母神の加護を持つ我が国随一の絶対防御結界を発動させる為の依代。巨人族のみに継承される事を許された絶対神ヘイオスに連なる地母神の聖痕を宿し「砦」の最高戦力にして守護兵長。下賤な邪神を崇める愚かなルルイエへ侵略の為、奴等がこの国を護っておらねば他の者を動かし難いというのに…」
片割れの処分を検討していた所に耳聡く話に割り込んだ三馬鹿共が明日、彼の森に向けて出立するとの報告が入った。
しかし、王宮を守護する三星巨塔の番人である奴等が享楽に現を抜かす為に塔を空けるなど本来ならば有ってはならない所業。
長年このヘイオスの専守防衛を担っていた為とは言え、少々甘やかしが過ぎたようである。
そろそろ奴等の首の挿げ替えも考えねばならぬか…
代役にあの塵屑共の監視役をさせていた二人を代役に据えるべきか。いや、エストスはまだしもベルモントは奴等と同じく脳筋だ。
巨人族は脳筋ばかりで扱いに困る。
冷たい眼差しで眉をひそめたまま城下を眺める。
彼の名はハルベイン・テオ・メルティン。
ヘイオス帝国に忠誠を捧げ、帝国の最高戦力である「劔」の称号を拝する国王側近の財政顧問兼軍事大元帥の一人。
幼少期から類い希なる身体能力に恵まれ、魔導にも精通し若干三十歳の若さで賢者の称号を与えられた帝国の要。
莫大な魔力保有量を持つメルティンは若々しい肉体のまま三百年余りの長い時を生き長らえ三代に渡り国王側近として政治を取り仕切っていた。
数々の戦場で武勲を挙げては帝国に逆らう者を悉く抹殺し恐怖と信仰によって領地を平定させ続けた。
卓越した剣技とスキルで敵兵を虐殺し、高度な極大魔法や古代禁呪で都市を焼き尽くし恐怖と弾圧で絶対神ヘイオスを崇める事を強要する姿からついた二つ名は「殺戮の宣教師」
大元帥でありながら常に最前線に立ち続け、単身で他国に恐れられる程の存在としてこの世界に君臨していた。
「天に君臨すべきはヘイオスただ一柱のみ。穢らわしき他国の邪神は須らく排除しヘイオスに支配されるべきである。」
聖書を見つめながら狂気に満ちた不敵な笑みを浮かべる。
「恐怖こそ正義、支配こそ安寧。一刻も早くヘイオスの支配を全世界へ。全ては絶対神ヘイオスの為に。ナイアーラ・ヘイオス。」
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「おーい、いい加減起きろー。」
胸ぐらを掴んで頬を叩きながらワンダに呼びかけてた。
力は加減したつもりだが頬が赤く腫れ上がっている。
「ゔぅぅぅ…お爺様、簀巻きで川に放り込むのは…はっ!ワタクシは…また死の淵を彷徨っていた様ですね。」
死の淵とは大袈裟な…それよりも簀巻きで川に放り込まれた其の後が気になる。
「目を覚まして直ぐで悪いが、このままだと日が暮れてしまう。」
「はい?」
「ウル、頼む。」
「じゃあ、いくよ。」
ワンダの襟首を持ち上げてウルに指示を出して空から辺りを一望した。
「どうだ?帝国への方角はわかるか?」
「はわわわわわ…はっはいっ!えっと…彼方の方ですね。此処からなら大体の道のりは把握できますよ!」
「よし。じゃああっちを目指して移動するか。お前達はどうする?」
「勿論同行しますよっ!行き先も同じですから丁度いいでしょう。」
「出来ればあまり時間を無駄にしたくないんだがな。道が分かるなら此処で一旦別れて向こうで落ち合う方が俺達としては効率がいいんだが…。」
「そんな連れない事言わないで下さいっ!一緒に行きましょうよっっ!!それとも何かお急ぎのご用事でもあるんですか?」
「色々あるんだよ。とにかく先ずは身の回りの身支度と情報収集をしたいんだ。」
「それでしたら尚の事同行した方が宜しいかと思いますよ?失礼ですがあまり金銭をお持ちの様には見えませんし、お持ちの物資も行商するには少なすぎる。ですがワタクシを連れて行けば命を助けていただいた御礼に物資についても色々とお手伝いできますよっ!どんな情報を御所望かは存じませんがそちらについてもお役に立てると思いますが如何か?」
急に自分を売り込みにきたな。
金銭に関しては魔鉱を売ってどうにかしようかと考えていたが、どれだけ価値があるかも分かっていないしな。
協力してくれるというならその言葉に甘えてもいいかもしれない。
「特に情報については雑多にある情報を王都で闇雲に探すよりもワタクシの方からご提供した方がいいと思いますよ。これでもその筋では其れなりの信用は頂いていると自負してますし情報網もそれなりにありますから。なんなら道中、色々とお教えしますよ。」
確かにワンダの言う通りだ。
この世界の事をロクに知らない中で必要な情報を探すのは…やはり難しいか。
前回の世界がいい例だな。
自分で情報を集めていたつもりだが殆どの事が分からないままでこの世界に来た訳だしな。
「うーん…分かった。一緒に王都まで行くとしよう。道中色々教えてくれると助かる。」
「任せてください!これでも色々な国を渡り歩いてきましたからお話しできる事は沢山ありますよ!なんなら物語形式で…」
「「其れはいい。普通に教えて(くれ)。」」
ウルとハモってしまった。ちょっと気恥ずかしい。
「はっはっはっ。仲が宜しいですな!では早速出発しますかな。此処からならば急げば明日の朝には王都に到着できますが一晩野宿をした方がいいでしょう。先に進みながら安全な場所を探しましょう。」
「そうだな。あと、俺達をあまり詮索するのはやめてくれよ。俺自身これまでの出来事をよく理解していないんだ。」
「そうですか…では知っている範囲で構いません。ゆっくりと色々教えて下さい。事情を把握出来ればよりお力になれる事もあるかと思いますから。」
こうして色々と話しているとワンダが少し頼りになる様に見えるから驚きだ。アフム・バグに追われていた時や気絶から覚めた時はとんだ変人だと思っていたが…
「では行きましょうか!巡るめく新たな冒険の始まりを祝してっ!果たして波乱渦巻く深い森を切り抜け三人は無事に王都に辿り着けるのかっ!?深まる友情、花開く恋心、すれ違う互いの心と心!そして目的地を目前に三人に立ちはだかる正体不明の謎の集団の陰謀!次回、交錯する三角関係!!Don't miss it.!!!」
前言撤回。ただの馬鹿だコイツは。
それからはワンダの牛車に乗り込み三人はヘイオス帝国に向かって進んでいった。俺はワンダの隣に座りウルは浮遊しながら進んでいる。
道中、手綱を握るワンダに色々な話を聞いた。
ソートからもある程度色々な事を教えてもらっていたがヘイオス帝国に関する内容を始め、より細かく幅広い情報を聞くことができた。
俺の方も自分が異世界からこの世界に来た事を始め、この世界に来てからの出来事を掻い摘んで話した。
数日をこの森で過ごしていたとか、ソートに出会った事、シアエガに襲われた事、旅の目的等等…
ワンダは魔法に関してはあまり詳しい様では無かったが、世界を渡る魔法が伝承として語られている事や俺が睨んだ通りルルイエ聖皇国であれば力を制御する類の魔法も存在する事を教えてくれた。
確証が何も無かった中でワンダの情報は俺達に明確な道筋を開いてくれた。
しかしどちらも一筋縄で入手できるものではないだろうというのがワンダの見解だ。
ウルは時々聞き耳を立てる様に近づいたり、飽きたかと思うと荷台に腰を落として道中出会った角の生えたウサギの魔物「ラゴラス」という魔獣を肩に乗せて和んでいた。
「触ると気持ちいいよ?」
その魔獣、ソートに聞いた限りだとかなり危険な魔獣なんだが…ワンダもその様子をみて青ざめた顔で慌てて振り払おうとしていたしな。
「そういえばケンさんはどの様にして物資を手に入れようとしていたのですか?」
途中、野宿が出来そうな洞穴近くの平地で火を焚き、薪木を弄る俺にワンダが質問してくる。
「実はな…ウル。こっちに来て魔鉱を出してくれないか?」
「うん。…んっ…」
ウルの掌が輝き魔鉱が生成された。
「こっ…これは…まさかこんなものを売ろうとしてたんですか!?」
ワンダが驚く様に俺に問いかける。ソートからは結構な金額になると聞いてはいたんだが…
「ダメだった?」
ウルが困った様子で俺を見ている。
「一般の市場ではこんなものちゃんとはした形では売れないですよっ!」
「そんなに価値がないものなのか?ソートの話では其れなりの金になると聞いていたんだが…」
「真逆ですっ!余りにも価値が高すぎてそこら辺の宝石商で捌ける様な代物ではないんですよ。確かに金銭は手に入ると思いますが此れは専門の行商人に依頼しなければ適正価格では買い取ってはくれないでしょう。」
「そんなに高いものなのか?」
「此れ一つで少なくとも五年は贅沢三昧で生きていけるくらいの額が手に入ります。」
「マジか」
「マジです」
俺とワンダは二人してウルが手に持つ魔鉱を見つめていた。
「これは知り合いのリタさんを頼った方がいいでしょうね。宝石商を営む方なのですが国家機関等の大口の取引にも一枚噛んでいる方です。その方に依頼した方がいいでしょう。」
「金銭は直ぐに手に入るのか?」
「これだけ高価な物なのでとりあえず手付金だけが先に支払われるでしょう。信用のない商人に売却していたらほぼ確実に雲隠れされたでしょうな。」
「そうか。街に着いたら紹介を頼むよ。手付金がどの位になるかは分からないが替えの服と宿が取れる位にはなるか?」
自分の服も必要だが、何よりウルの新しい服を準備しなければとはずっと思っていた。最近では見慣れもしたが、やはりワイシャツ一枚の少女と二人旅とは如何ともしがたい。
俺も一人の男故にこの案件は非常に、非常に優先度が高い案件だ。
「服については問題無いでしょう。宿も十星クラスの最高級の宿でも無ければ余裕で手元に余ります。他に必要な物はありますか?」
「後はこの剣の鞘とルルイエの通訳が出来る者への依頼料くらいか…」
「どうせなら武具屋と防具屋に行って装備を整えては如何ですか?併設して経営している店主もご紹介できますから。あとルルイエの通訳ならできますよ。ワタクシ。」
「へっ?」
「国から国を渡り歩く語り屋と説明したじゃないですか。そんなワタクシが他の大国の言葉を話せない訳ないじゃ無いですか。語り屋にとって多国語通訳は必須スキルですよ!」
まさかワンダが此処までの高スペックだったとは。これであの性格でなければ完璧なんだが…まぁ完璧な人間などこの世にはいないという事か…
「なら是非頼めないか?これも何かの縁だと思って」
「勿論ですともっっ!寧ろ頼まれなくても足にしがみついてでも付いていきますよっ!伝承に記された魔法を求めて世界を彷徨う心優しき二人の英雄譚っ!今から考えるだけでも興奮が止まりません!あぁ果たしてこれからどんな物語が繰り広げられるのか…興奮が止まりませんなっ!」
二度同じ事を言うな。しかし棚からぼた餅とはこの事だな。
とりあえず今日は此処らへんで一旦打ち切りにして休むか。
「話はまた明日にしよう。俺は火を見ているから先に休んでくれ」
それからはワンダと俺で火の番を回してそれぞれ休憩を取った。
二人の頃に比べると休める時間も長かったから気が楽だな。
やがて日が上り再び王都に向けて出発し程なくして森を抜けた。
空を飛んでいる訳ではないので、それなりに時間は掛かったが日が落ち始めた頃にようやくヘイオスの関所に到着した。
「いいですか?二人は牛車から降りずに静かに待っていてください。その魔鉱も見えない様にしててくださいね。」
王都への関所を潜る前にワンダから幾つかの指示を出された。なんでもヘイオス帝国は奴隷の労働力で経済を回している完全な奴隷制度推奨国家らしい。
「王都に入った後は絶対に兵士に敵対してはいけませんよ。奴等は傲慢で自分勝手な連中ですからね。可能な限り関わらない!声を掛けられればゴマスリしながら賄賂を渡す!これ基本ですからね!」
場合にもよるが奴隷の中でも扱いの差が大きく、酷い所では散々重労働を課された挙句、魔晶という魔鉱の次に価値のある魔石の材料にされて消えているなどの噂まであるらしい。そんな国の兵士が人当たりがいい筈もない。
民間人と兵士の間では恐喝や賄賂が当たり前の様に行われているわ、街中では公衆の面前で奴隷に平然と鞭打つ貴族もいるわと色々な意味で残念な国の様だ。
だからこそ無駄な争いを防ぐ為にワンダが賄賂を手に交渉に向かっているのだった。
「実は行商の際に役に立ちそうな労働力を手に入れましてな。何分身分を表す事もできない奴隷共、特に問題を起こす心配もありませんが…とりあえずこれで一晩の肴でも楽しんでください。なんならワタクシとっておきの奴隷娼店も斡旋致しますよ?」
何やら危ない会話が聞こえてくる。ワンダと兵士が握手する手の中に紙束と古い紙が収まっていた。
男としてはワンダが紹介する店の件が正直気になる…
それはそれとして汚れた外套を頭から被っていた俺とウルの顔をフードを強引に巡って確認した兵士はそのままワンダの所に戻って関所の門を開いていた。
ウルを見た時の兵士の下唇を舐め回す顔がとても気持ち悪かった。とてもイラッとした。
辺りが夕日に包まれて鮮やかなオレンジ色に染まっている。
空の彼方は青とオレンジのグラデーションの中でポツポツと輝く星々が見え隠れしている。
菱形の集まる月に違和感を覚えながら空を見上げて王都までの道を進んでいく。
ワンダから王都の話を詳しく聞く程にヘイオス王国が、特に王都はクズばかりの集まりである事は理解した。
ヘイオス王都は人口約八十万人程超巨大都市で大きく分けて四種類の差別階級がある。
総人口の0.2割が貴族階級、一割程度が国直属の兵士や聖職者等の特権階級。一〜二割程度が他の村や国からの行商人や専門職に従事する一般市民の平民階級。そして残りの六〜七割が戦地に駆り出されたり様々な重労働を課せられる奴隷階級。
毎年死亡率三割を超える奴隷階級は他国への侵略や村々の国税の徴収の際に毎年補充しているらしい。
人の尊厳すら税として徴収するとか狂っているとしか思えない。
他にも数多くの奴隷を収容している施設が国から離れた何処かに存在しているらしく、足りない場合はそこで強制労働を課せられている奴隷が出荷されるとの事だ。
聞く限りだと元の世界の家畜と同じような扱いをされているらしいが詳しい内容は更に気分が悪くなる為割愛する。
因みに奴隷達の認識としては王都に移住する事はある意味死刑宣告と同義らしい。
行商手形を持っているワンダは平民階級の為、不当な扱いを受けることはあまりないそうだが、兵士や貴族が絡んでくると面倒な事になる事もしばしばあるという。
「もしケンさんが良ければ、明日ワタクシの行商の従業員という形で個別の行商手形を発行した方がいいのですが…」
「そんな事出来るのか?」
「ええ。行商といっても多種多様ですからね。一つの行商集団が各地に散らばって活動する事なんかもよくありますから必要であれば複数の手形を所有者権限で発行できるのですよ。その場合は所有者の部下、もしくは所有物であるという証明になりますからあくまでワタクシ名義の手形となりますがね。」
「行商手形は身分を表すものになるんだったか。あれば助かるがいいのか?場合によってはワンダに迷惑がかかる事になるかもしれないが。」
「ルルイエまで同行する事は既に決まっていますし問題ありませんよ。何より新たな物語の邂逅で被る迷惑など寧ろワタクシにとって取るに足らない無用の長物。たとえ何かあって生き辛くなったとしてもワタクシは本望ですからっ!」
「そうか。なら頼む。とにかく先ずは服をどうにかしたい。」
「何分今は手持ちも少ないので一旦ワタクシの拠点に寄った後でならご用立てもできます。ですがワタクシの拠点は北地区にあります。此処は南門なので例の宝石商が道すがらにありますからそこで魔鉱の交渉をしてそのまま武具屋に寄った方が早いですよ。」
「じゃあそうしよう。」
「では日も暮れ始めていますから急いで宝石商に向かいましょうか!」
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