第8話ワンワン!

「願い事、なんにしようか迷うなぁ~?」

『願い事?なんのことだ?』

「忘れたのぉ~?今日は七夕だよー?」

『そうだったっけ?早いな。もうそんな時期か....。』

「チヨちゃんは、願い事なんにするの?」

『うーん........。たくさんパフェを食べても太らない体になりたい!とかかな。』

「本当にパフェ好きだねぇ。」

『おいしいし、見てるとワクワクするからな。』

「パフェ見てワクワクするって、変なのぉ~。」

『喧嘩売ってんのか?』

「そ、そんな訳ないよ!じゃあ放課後部活で、また会おう。さらばでござる!」

『おい、逃げるな。まだ話が終わった訳じゃ.....。』

もういない....。逃げ足だけは速いな。

~~~~~放課後~~~~~

ガラガラガラ(ドアを開ける音)。

「おっ!やっと来たぁ。遅いよぉ。」

『悪い。生徒会の雑務があって遅れた。』

「生徒会!?チヨちゃんって生徒会に入ってたの?」

『まあ一応入ってる。』

「へぇ~。私も入ろうかなぁ~?」

『入っても、楽しいことなんてないと思うぞ。自分のやるべきことが、増えるだけだからな。私だって頼まれてなかったら、入っていない。』

「そうかぁ~。でも生徒会ってなんかかっこいいよねぇ。」

『入ることはおすすめしない。第一お前が生徒会に入ったら、生徒会が滅びる。』

「うっ....。そんなことにはならないよぉ!」

『どうだかな....。ところでそれはなんだ?』

部室に入ったときから、妙に存在感を放っている笹らしきモノについて質問する。

「その質問は愚問だよぉ。チヨちゃん!七夕と言えば、笹でしょ。常識でしょ!」

ミウがなぜか勝ち誇った顔でそんなことを言う。

ものすごくうざい。

『どうせ、その笹もただの笹じゃないんだろ?世界を滅ぼしかねない機械とかなんだろ?』

「ち、違うよ!これは正真正銘の本物の笹だよ!触って確認してもいいよ!」

触ってみても、異常は感じなかった。たしかに、普通の笹だ....。

『.....大丈夫そうだな。』

「当然だよぉ。気を取り直して、短冊に願い事を書こう!」

ガラガラガラ(ドアが開く音)。

「おやおや、なんか楽しそうなことをやっていますねぇ。」

『こ、校長先生!!なんでここに....。』

「ここの部活の顧問である私が、来てはいけない理由なんてないでしょう?」

『まあ、そうですけど....。』

「校長先生!!一緒に短冊書きませんかぁ~?」

「それは、楽しそうですね。」


「みんな書けたぁ~?」

『ああ。一応書けた。』

「時間はかかりましたが、書けましたよ。」

「校長先生!先に短冊を笹にくくりつけていいよぉ。」

校長に向かってため口とは......さすがミウだな。

「ではお言葉に甘えて.....。」

校長が笹に短冊をくくりつける。

ピカーーーーーーン。

突然笹が、輝き始めた。

『まぶしい!なんだ!?この光は?』

思わず目をつぶる

「わ、わかんないよぉ!」


目を開けると目の前には、一匹の大型犬が座っていた。

【ワン!ワン!】

『なんで犬がこんなところに....?ミウ!この犬はなんなんだ!どうせお前の仕業だろ?』

「ち、違うよぉ!そんな犬知らない!」

そういえば、さっきいたはずの校長がいない。

『校長先生!どこにいるんですか?』

【ワンワン!】

犬が私のそばによってくる。

『うるさいな。犬!お前は呼んでねぇよ!!.....校長先生!!どこにいるんですか?』

【ワンワン!】

『しつこいなあ。この犬。.....校長先生!!』

【ワンワン!】

『うるさい!!いい加減にしろ。犬。』

「ちょっと待って。チヨちゃん!その犬が校長先生なんじゃないかな?」

『はぁ?そんなわけないだろ!』

「校長先生!!!」

【ワンワン!】

犬は尻尾をふりながら、ミウのところへと走っていった。

『本当だ。校長という名前に反応している。じゃあなんで校長は犬に変わったんだ?』

あの笹が怪しい。というかあの笹以外、原因が考えられない。

だが、笹を触ってみても異常なところは見つからなかった。

「その笹は普通の笹なんだよぉ~。信じてよぉ~。」

原因は笹ではないのか?だとするとなにが原因なんだ?......待てよ。そういえば、短冊もミウが用意してたよな。まさか、短冊が原因なんじゃないのか?

『おい!ミウ!その短冊。なにか細工しただろ?』

「えっ?なんでわかったのぉ~?」

『どんな細工をしたのか言え!』

「そんな大したことじゃないよぉ~。短冊に書いた願いが少し叶いやすくなる程度だよぉ。」

『どう考えてもそれが原因だろ!』

すぐに校長の書いた短冊を確認する。

[世界中の人たちがポチ(校長の愛犬)のように優しくなりますように......。]

うそ....だろ。

『このままじゃ、世界中の人間がポチ(校長の愛犬)になるんじゃないのか?』

校長の短冊をミウに見せつける。

「そ、そんなことあるわけが.....。」

『本当にそんなことあるわけがないのか?』

「......................................ありえるかもぉ~!!どうしよぉ~!助けてぇぇぇぇえ。チヨちゃああああん!!!」

やっぱりこうなったか。

『とりあえず、短冊に全ての人間が犬になりませんようにって書いて、笹にくくりつけるぞ。それで解決するのか?ミウ?』

「ワン!ワン!」

マジかよ。ミウが犬になっている!!

『くそっ!早くしないと手遅れになる!』

短冊に急いで願いを書く。

『よし!後は笹にこの短冊をくくりつけるだけだワン!』

やばい。なんか語尾がワン!になってる!!

『タイムリミットが近いってことかワン!やばいワン!』

猛ダッシュで笹のところまで行き、短冊をくくりつけようとするが、なぜか上手くいかない。おそらく、犬に近づいていってるせいなのだろう。

『ワン!ワン!ワン!ワワン!ワン!(しっかりしろ!自分を保て!この短冊をなんとしても笹に結びつけるんだ!)』

そう言った瞬間、私の意識はなくなった。


『うっ....。ここは?』

「チヨちゃん...。大丈夫?」

『おい!犬はどうなった?』

「大丈夫!解決したよぉ~。今回もチヨちゃんは世界を救ったんだよぉ~!!すごいねぇ!!」

ゴツン

「い、いたいよぉ~。」

『はぁ....。結構危なかったんだぞ。勘弁してくれよ。』

「ごめんねぇぇぇぇええ。」

ゴツン

ゴツン

「さ、三回もなぐった!うえぇぇぇん!!うわあああぁぁん!」

『当然の報いだ.....。校長はどうなった?』

「グスン。まだ気絶しているよぉ~。」

『そうか....。校長はここで寝かせといてやろう。今回のことは夢だったんだ、とか思ってくれれば好都合だからな.....。』

世界を救うたびに自分の考えが悪に染まっていっているような.....。まぁ気のせいだろ。












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