第21話 親友は気付いてしまった
姉の未那とのデートが終わったその翌日、またいつもの学校生活が始まった。
今までと何ら変わりない生活。退屈な授業に、親友とのお昼ご飯。しかし、その日の放課後はいつもとは違った。
俺は家に帰っていた。しかし、俺の横にいるのは彼女の柚羽ではなく、親友の太一だった。
「はぁ…まさかお前と一緒に家に帰る日が来るとはな」
「ったく、そんな険しい顔すんなってー、別に良いだろ〜?」
何故こんな状況になっているのか、時は三十分ほど前に遡る。
授業が終わり、放課後。俺はいつものように柚羽と帰ろうとした。その時だった。
「なあ、優弥」
そう言って話しかけてきたのは、太一だった。
「ん?どうした?」
すると、俺の親友はいきなりこんな事を言ってきた。
「今からお前ん家行っていい?」
「は?何で?今日は金曜日じゃなくて、月曜日だぞ?」
「いやー、来週からテストあるだろ?一緒に勉強したいなーって」
「いや何で俺ん家なんだよ、それにお前勉強しないだろ」
こいつは全然勉強しないくせにいつもテストの点数が高い。正直、めっちゃムカつく。
ほら、よく「勉強した?」って聞くと、「いや、全然してないよ〜」とか言ってめっちゃ点数高いやついるじゃん?それがこいつだ。
「いやちゃんと勉強するからさー、頼む!」
どうせ俺の家に行きたいのは、姉妹の部屋が気になるからーとか、本当はそんな理由だろう。まあこいつが勉強せずとも、こいつから分からない所を教わることが出来るのはとても良い。
「分かった、今日だけな」
「まじ!?サンキュー」
こんな事があり、俺は今太一と家に帰っている。
親友と他愛もない会話をしていると、あっという間に家に着く。
「お邪魔しまーす」
玄関を開け、太一が挨拶をするが返事がない。姉妹もまだ帰ってないのだろう。
リビングを素通りし、自室に二人で入る。
「へぇー、ここがお前の部屋かー、案外綺麗だな」
そういえば太一を俺の部屋に入れたのは今日が初めてだった。
「まあな、ちょっとは掃除してる」
太一が部屋を見渡す。親友に部屋をまじまじと見られるのは、あまりいい気分じゃない。
「ほら、勉強するんじゃないのか?」
「ん?ああ、もうちょっとだけ」
あ、こいつ絶対勉強しないな。そう思った時だった。
「なあ、優弥」
ふと、太一が俺を呼んだ。ったく、今から勉強を始めようと思ったのに。
「あ?どうした?」
立ち上がり、俺のベッドの上に座る太一の方に向かう。
「あれ、何だ?お前が置いたの?」
そう言って太一が指を指した方を見ると、天井の上、明らかに不自然な黒い物体がそこにあった。
「本当だ、俺あんなの知らないぞ?」
俺は太一に肩車をしてもらい、その物体を確認する。
「ん…?カメラ…?」
そこにあったのは、よく店にも置かれているような、小さな定点カメラのようなものだった。
姉妹ノートに俺の部屋の中での事が書いてあった気がするが、これで監視していたのか。
というか、今までこの部屋にいた俺よりも早くそれに気付いた太一に驚いた。
「え?何でお前の部屋、こんなカメラなんて置いてあんの…?」
あ、まずい。間違いなくこれを仕掛けたのは姉妹のどちらかだろう。しかし、二人が仕掛けたと言ったところで太一は信じてくれるだろうか。いや、まず信じないだろう。
それに信じてもらえたとしても、学校一の人気者の姉妹のイメージダウンは計り知れないことになるだろう。
なんて言おうか…そう思った時、太一が声をあげる。
「あー!もしかしてお前…」
ま、まさか、バレたか?
「柚羽ちゃんに、束縛されてる…のか…?」
……はぁ!?何でそうなった!?
「いや、別にそういう訳じゃ…」
「いや優弥、我慢しなくていいんだぞ?困ったら俺がいつでも相談、乗ってやるからな…」
いや何お前!?何勝手に俺の彼女を悪者扱いしてんの!?自分で決めつけるんじゃないよ!人の話を最後まで聞け!
「ああ、まあ違うけど…困ったら相談はするわ」
「ああ、そうしてくれよ」
結局その日はお互いに何も勉強する事が出来なかった。
◇
生徒会での面倒な会議が終わり、家に帰る。
「はぁ…疲れた…」
そんな疲れを癒してくれるのが、部屋の中でのゆうくんの姿。それを見るだけで何だかほっとして、明日も頑張ろ!ってなる。
いつものようにパソコンを起動し、映像を確認する。しかし、カメラからの映像にはゆうくんの姿は映っておらず、ただ真っ暗なだけだった。
まさか…バレた…?そんな事を考え、思わず身震いをする。
もしバレたら、ゆうくんに嫌われるかもしれない…
その日はゆうくんと何も会話する事が出来なかった。
…
今回は親友のちょっと天然(?)な一面を書きたかったので、書かせていただきました。
これからまた更新頻度が遅くなるかもですが、是非応援やフォロー、よろしくお願いします<(_ _)>
P.S. 新作、執筆中です!お楽しみに!
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