第17話 俺の彼女は怒っている
俺、田代優弥は今、彼女である福尾柚羽とデートをしていた。はずだった…
「私、優弥くんの彼女の福尾柚羽です。よろしくお願いします、お姉さん」
さっきまでの優しい、おっとりとした彼女から一変、どこか挑発的な口調で姉の未那に自己紹介をする。
本来ならもっと優しい、ほんわかな雰囲気で会話が始まる。はずなのに…
二人はピリピリとした空気の中、お互いを見つめ合っている。
…え?何でこんな事になっちゃったの…?
すると、柚羽が口を開いた。
「お姉さん、さっきまで私たちの事、尾行してましたよね?」
「…さあ?なんの事かな?」
「とぼけないでください。私ずっと分かってましたから、お姉さんが私たちのデートの邪魔してること」
柚羽は未那が俺たちを監視していた事、更にはデートの妨害をしていた事も分かっていた。
そりゃ誰だって大切な人との二人きりの時間を邪魔されたら怒るだろう。
「ふーん、まあ私はそんなことした覚えないけど」
どうやらまだ、しらを切るつもりらしい。まあ、姉からしたらここで認めてしまったら柚羽から何を言われるか分からない。最悪、「もう優弥くんに近づかないで」とか…
「そういえば、お姉さんに会ったら一度聞きたい事があったんです」
「ん?なにかな?」
「お姉さん、優弥くんにすごいスキンシップとってるらしいですね、男子生徒から聞きました」
「あー、それはね、今度男の人と二人でお出かけしないといけなくて…だから、慣れるために、ね?」
ん?本当か?姉さんが他の男子とデートだなんて、聞いたことがない。ましてやあんなヤバいノートを書いてる人がデートなんてするはずがない。
「あー、そうだったんですね、お姉さん可愛らしいからてっきり経験豊富かと思ってました」
「いやー、全然そんなこと無いから困ってるんだよねー」
大丈夫、姉さんそんな予定どうせ入ってないでしょ。なんて言えるはずもなく。
次の瞬間、未那からとんでもない発言を耳にする。
「だからー、柚羽ちゃんの彼氏、明日だけお借りするね♡」
……え?聞いてないんですけど?
いや待て落ち着け俺、これを柚羽が許すはずが無い。だって相手は俺たちを監視していた挙句、デートの邪魔をした俺の姉だぞ?そんなの、いいわけ…
「分かりました、明日だけですよ」
ちょっと柚羽さん!?いいの!?こんな人に俺を貸しちゃって!俺、何されるか分からないよ!
「やった!ありがとね!柚羽ちゃん」
ちょっと…俺の意見は…?
◇
「はぁ…別の女子と二日連続デートなんて…聞いた事ないよ…」
俺は自室のベッドに横になりながら悩んでいた。
…
デートが終わった直後、俺は姉さんと一緒に家に帰っていた。
「じゃあさ、明日一緒にプール行こうよ!」
「その前に姉さん、本当に男の人とお出かけなんてあるの?」
「え?……あるよ?」
いや嘘下手か。まあいいか、どうせ嘘だって分かりきってた事だし。
「でさ、いいよね?プールデートで!」
「ああ…いいよ」
「やったぁ!」
姉さんは嬉しそうに俺に抱きついてきた。はぁ…結局可愛いから困るんだよな…
…
そんな事があり、明日の姉とのデートはプールに行くことになった。
姉さんの水着姿…ダメだ。こんな事を考えている自分を殴りたい。
「あ、そういえば」
俺は思い出したように今は誰もいない姉の部屋に入る。勉強机の上にやはりそれはあった。
最近はしっかりと姉妹ノートをチェックできていなかったため、久しぶりに内容を確認する。最近のページを開くと、早速今日の出来事が書いてあった。
『今日はゆうくんのデートをこっそり監視した。ゆうくん…すごい楽しそうだったな…そう思ってたらいつの間にかデートの邪魔をしていた。ほんとに申し訳ないことしちゃったな…でも明日デートすることになったから、いっか!ゆうくん大好きだよ♡』
いや『いっか!』じゃないよ!どこがいいんだよ!こっちは何も良くないよ!
はぁ…困った事になったな…何か色々あって、明日が月曜日になったりしないかな。
そんな事を考えながら、俺は姉の部屋を後にした。
…
次回、デート(姉編)スタートします!
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