第18話 姉はデートの練習がしたい

柚羽とのデートが終わったその翌日の朝、俺は自室のベッドで目を覚ます。


スマホを確認する。今日は月曜日…ではなく、日曜日だ。


「はぁ…」


今日の予定を思い浮かべ、思わずため息をつく。今日は姉の未那とプールでデート。もちろん、二人きりで。


まさか二日連続でデートをすることになるなんて…数ヶ月前の俺がこの状況を見たら、恐らくドン引きしているだろう。


別に姉とのデートは嫌ではないのだが、昨日の出来事があった後のデート。どんな顔をして二人きりでいればいいか分からない。


一応本人曰く、『男子と二人きりになる練習』と言っていたがどうせ嘘だ。きっと俺と柚羽の様子を見て、デートをしたくなったのだろう。


そんな事を考えながら服を着替え、身だしなみを整える。よし、こんな感じで良いだろう。


リビングに向かうと、大きな荷物を持った未那がいた。


「じゃあ行こっか、ゆうくん」


俺は未那と一緒に家を出る。駅の方へ歩き始めた時、俺は気になった事を未那に質問する。


「なんか姉さん、荷物多くない?」


「あ、あのね、ゆうくんの為にお弁当作ったんだ」


「へぇ、ありがと姉さん、嬉しいよ」


「えへへ〜、ゆうくんにたくさん私の手料理食べて欲しいなって思ってね〜」


「姉さんの料理美味しいから、今日のお昼が楽しみだよ」


「ほんとに?嬉しい〜」


少し褒めすぎたのか、未那は今にも溶けそうなくらいににへらとした笑顔を浮かべていた。


「あ、重そうだから荷物持つよ」


「ありがとゆうくん……はぁ…もう結婚したい…」


おーい、未那さーん、本音漏れちゃってますよー。てかそもそも姉弟で結婚出来ないし…


さあ、いよいよ本格的にデートが始まった。義理の姉とはいえ、これはデート。だから、いつもよりも見た目に気をつかったはずなんだけど…


未那の姿を見て、改めてその高すぎるレベルを実感する。他の人からどんな目で見られるのか分からないが、少なくともこれをカップルとして見る人は少ないだろう。見た目に差がありすぎる。


「ん?どうかした?」


「いや、何でもないよ」


おっと、未那の事を見すぎてしまった。気をつけなければ。


すると、いきなり未那から質問された。


「ねえ、今日の服装…どうかな…」


これ、昨日もあったな。なんて言ってはいけない。


改めて未那を見る。よく見るといつもは束ねていない艶のある黒髪が、今日は結ばれてポニーテールになっていた。


「ポニーテールにしたんだ、いつもは下ろしてるけどこっちも似合ってて可愛いよ」


「やった!ゆうくんに褒められた〜、嬉しい〜」


きっとこれは未那からしたら、’’好きな人に褒められる’’という事なのだろう。褒められたと喜ぶ未那の顔を見て、思わずドキッとしてしまった。


はぁ…この人がちょっと歪んだ愛情さえ持っていなければ、めちゃくちゃ可愛いお姉さんなのになぁ…


まああのノートを見る限りは…もう普通には戻れないだろう。





電車に揺られてからおよそ三十分。俺たちが来たのは、室内プールや遊園地がある複合施設だ。きっとカップルで来たらたくさんイチャイチャ出来る、良い場所だ。そう、カップルで来たら。ね。


まさか、ここに柚羽じゃなくて姉さんと一緒に来ることになるなんて…


「じゃあ、先に遊園地の方に行こ!その後に一緒にプールに入ろっか!」


「うん、そうしようか」


プールでデートの予定だが、せっかく遊園地があるんだ、遊ばない訳にはいかない。


「よし、それじゃあ行こうかって…姉さん?」


未那を見ると、何やら不服そうな顔をしていた。俺はすぐに何をして欲しいか分かった。


昨日もデートしてるんだ。そこで学んだ経験がかなり活きている。ありがとう柚羽さん…


俺は未那の手を繋いだ。もちろん、恋人繋ぎで。


手を繋ぐと、未那はとても満足そうな顔で俺に微笑んできた。ああ、なんて可愛いんだ…まるで天使じゃないか…


そのまま俺と未那は歩幅を合わせながら、遊園地に向かっていった。

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