第15話 姉は俺の様子が気になる

俺の彼女である柚羽とのデートが始まった。


のは良いんだけど…


「じゃあ、行こっか!」


柚羽の一言で俺は二人で歩き出す。すると、遠くの影がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。


あれってー…、姉さんだよね?いや、姉さんだわ。あれ。


遠くでさっきからこちらを凝視していた彼女は、マスクをし、深めに黒い帽子を被っていた。変装をしているつもりなのだろうが、俺にはすぐに姉さんだと分かった。


だって、姉さん俺が外に出て一分もしないうちに外に出てきちゃうんだもん。そりゃあ、すぐ後ろからついて来てるの嫌でも分かるわ。


まさか後をついて来るとは… 姉さんならやりかねないとは思っていたが、本当にしていると思うと流石に怖い。


「ねぇ、優弥くん!」


「…ん?あぁ…ごめん」


俺がずっと姉さんの尾行について考えていたせいで、柚羽からずっと呼ばれていることに気づかなかった。


「映画までまだ時間あるから、先に一緒にお昼食べない?」


「お、いいねー、そうしよっか」


地図アプリを開き、近くのお店を調べる。近くに美味しそうなパンケーキのあるカフェを見つけたので、そこでお昼を食べることにした。


「よし、じゃあ行こうか」


俺が目的地に向かって歩こうとすると、何やら不満そうな顔で柚羽がこちらを見てきた。


「あー…」


察した俺は、柚羽の手を恋人繋ぎする。確かに女子からこれをさせるのは男として良くない。


「…あ、そっち?」


しかし柚羽は、まるで予想外の答えが返ってきたような反応を見せる。


あれ…?こうじゃないの?


「あのね…?私がしたかったのは…」


そう言って柚羽は俺の左腕に抱きついてきた。…って、あ、そっち!?


「ゆ、柚羽…?」


「これくらい…恋人なんだし、いいでしょ?」


そう言ってこちらを見てくる柚羽。ったく当たり前だろ可愛いなぁおい!


てか、これやばいな…


ワンピースの生地が薄めだからか、柚羽の中々に大きな双丘が俺の腕を包み込む。


流石は学年一の美少女。顔だけでなく身体の方も…


そんな邪な事を考えていると、俺のスマホから着信音が鳴った。





私、安藤未那は今、ゆうくんの後をつけて来ています。


だって、気になっちゃうんだもん。仕方ないよね?


後をつけていると、ゆうくんの彼女らしき人が来た。


なるほど…確かに可愛い。私の妹の次に可愛いわ。


しばらく二人の様子を見ていると、彼女はいきなりゆうくんの腕に抱きついてきた。


ちょっと!私のゆうくんに何やってんの!?


流石に耐えられなかった私は、彼女の行動を止めるためゆうくんに電話をかける。


『もしもし?ゆうくん?』


「あー、姉さん?どうしたの?」


電話の相手は姉さんだった。しまった…今俺、姉さんから監視されてるのすっかり忘れてた…


『あー、今日何時頃に帰ってくるのかなーって』


「…それ、今必要な質問?」


『いや、ゆうくんのことが心配だからさー、それに、今から食材買うためにお買い物行こうと思って、ゆうくん夜ご飯必要かなって』


なんて堂々と真っ赤な嘘を…


「ああ、夕方には帰るよ、夜ご飯準備しといて」


『うん、分かったー』


一分近く電話をしてしまった。これ、メッセージで送ればよくね?という質問はきっと無意味だろう。


「今の、お姉ちゃん?」


「うん、何か、何時に帰ってくるかって」


「ふーん…」


何やら不穏な空気が流れる。あれー…、俺なんかまずいことしちゃったかな…?


「それよりさ、はやく行こ!早くパンケーキ食べたい!」


すると、さっきまでの不穏な空気が嘘のように、笑顔の柚羽が再び俺の腕に抱きつき言った。


「おう!行くか!」


俺たちは再びテンション高めで目的地に向かって歩いていった。





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