第13話 妹は我慢できない

学校から帰ってきた俺は、自室で彼女(仮)である柚羽と通話をしていた。


一連の通話が終わった頃には、もう夜ご飯を食べる時間になっていた。


リビングに向かうと、テーブルには夜ご飯の支度がされていた。今日は生姜焼きらしい。


「いただきます」


家族みんなで夜ご飯を食べていると、ふと前から視線を感じた。


前を見ると、何やら不服そうな顔で俺を見つめる未那がいた。


「ん?どうかした?」


「……え!?あ、なんでもないよ!」


何かあったのか、未那は動揺しながら返事をした。


何か悩み事でもあるのか、大変そうだなぁ。そう思いながら俺は生姜焼きを口に入れる。



「ごちそうさまでした」


食べ終わった俺は自室へ向かう。





夜ご飯を食べ終わった私は、自室に戻り、自分の勉強机に置かれている『姉妹ノート』をチェックする。今日はお姉ちゃんが書いているはずだ。


一番最近のページを開くと、そこにはお姉ちゃんの字でノートが更新されていた。


『今日、ショックな事があった。ゆうくんから、知らない柔軟剤の香りがした。確認すると、ゆうくんは私たちの知らない女の子と連絡を取っていた。通話してるゆうくん…楽しそうだったな…』


その内容を読み、絶句した。お兄ちゃんが、知らない女の子と通話…?


お兄ちゃんは女子と必要最低限の会話しかしないのを知っている。だからこそ、この出来事は衝撃的だった。


「そんな…どうしよう……」


私はその場で立ちすくむことしか出来なかった。





今まで私は、自分を過信していたのかもしれない。お兄ちゃんは私に興味を示してくれている。そう誤解していたのかもしれない。


「もっと私のこと見てよ……」


自分に嘘をつけない。お兄ちゃんが好きだけど振り向いてくれない。そんなやるせない気持ちがだんだん溜まっているのが分かる。


もう、我慢できる気がしない。だから…


「お邪魔します…」


静かにドアを開くと、そこにはすやすやと寝息をたてるお兄ちゃんがいた。


「すー…すー…」


お兄ちゃんがいるベッドの横へと足を進める。


ここはお兄ちゃんの部屋。時計を見ると、深夜一時を回っていた。


本当はこんな事をしてはいけないと分かっている。もしお兄ちゃんが起きたら、何も言い訳する事が出来ない。


でも、そう分かっていても、自分を押さえつける事が出来なかった。


「お兄ちゃんが…もっと私の事見てくれないから…」


お兄ちゃんの頬へと手を伸ばす。とても温かくて、すべすべしていた。お兄ちゃんの体温が、私の身体に伝わってくる。


気が付くと私は、お兄ちゃんのベッドの中へと入り込んでいた。


「お兄ちゃん…♡」


お兄ちゃんの身体に触れる。その身体はとても男性的で、ごつごつとしていた。でも帰宅部だからか、どこか女性的な、艶のある白い肌をしていた。


お兄ちゃんの身体に触れながら、自分の身体にも手を伸ばす。身体は熱を帯びていた。


もう理性を抑えきれない私は、自分の身体の大切な部分に触れる。


「んっ…あっ…♡」


お兄ちゃんに聞こえないように、静かに嬌声を出す。絶対にしてはいけないという背徳感が、より一層私の理性を崩壊させる。


「ふぅ…はぁ…♡」


私は自分の身体を触りながらお兄ちゃんの顔と距離を縮める。もうすぐ唇同士が触れる…その時だった。


「ん…うぅ…」


お兄ちゃんがもぞもぞと動き出した。まずい、ここでバレたら大変な事になってしまう…!


急いで私は音を立てないようにお兄ちゃんの部屋から出ていった。


「もう少しだったのに…」


自分の部屋に戻った私は先程の光景を思い出す。


その夜は眠るのに時間がかかってしまった。





変な夢を見た。目を開けると、そこには瑠那がいて俺の体をたくさん触っていた。


こんな夢を見てしまうなんて、俺は末期なのか…?


重い体を起こし、俺は制服に着替えるのだった。

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