第2話 姉は俺を甘やかしたい

新しい家族からの挨拶が終わった後、俺は美人姉妹に家を案内していた。


元々俺と母親で住んでいた家は二人で住むにはかなり大きく、新しく三人が住んでも不自由のない広さだった。


「じゃあこっちが未那さんの部屋ね」


なんて呼べばいいか分からない俺は、二人のことをさん付けで呼んでいた。


「うん、ありがとう」


俺の両隣に空いていた空き部屋をお互いの部屋にした。


二人とも何やら満足気味な顔をしていたが、何か良いことでもあったのだろうか。


二人を案内した俺は自室に戻る。


「マジか…」


正直、現実を受け止めきれない。だっていきなり親が再婚して学校で一番の美少女姉妹が家族になったんだよ?


いきなり普通の生活が終わりを迎え、普通じゃない生活が始まると考えると、とても心配になる。


しかも、この事がクラスメイトの男子にバレたら間違いなく男子から殺意のある冷たい目で見られることになるだろう。


その日の夜は色々と心配になって、眠ることが出来なかった。





翌日、目を覚ました俺は時計を見る。まだ時間は朝の六時を指していた。


まだ寝ていても大丈夫だ…そう思った俺は眠りにつこうと、一度寝返りをうつ。


その瞬間、俺の眠気は一気に飛んだ。


「おはよう、ゆうくん♡」


目の前に、絶対にいるはずのない未那がいたのだ。


しかも、今俺の事をゆうくんって…


「え!?未那さん!?なんでいるの!?」


すっかりと眠気が無くなった俺はベッドの上に起き上がり、未那に質問をする。


「だって〜、ゆうくんのこと起こそうかな〜って思ってね〜」


ゆっくりと話す未那の声が心地いい。しかし、今の状況が衝撃的すぎて、全く眠れる気がしない。


「いや、わざわざ大丈夫だよ!」


「だ〜め!お姉ちゃんとして、ゆうくんのこと起こさせて!」


上目遣いでおねだりをする未那。うわめっちゃ可愛い…じゃなくて!


「えぇ…本当にそこまでしなくていいのに…」


何故か俺に献身的な未那の事が気になり、思わず口に出る。


「だって…ゆうくんの寝顔、すごいかわいかったんだもん♡」


「!!?」


あまりにも恥ずかしい告白に、俺は戸惑いを隠せなかった。


「あ、ああ、そうなんだ…」


今までそんな言葉を言われたことがなかった俺は、曖昧な返答をするしか無かった。





俺には刺激の強すぎる普通じゃない朝を迎えた後、俺は姉妹と一緒に学校に行った。


二人と別れ、教室に入るとクラスの男子が俺の周りに寄ってきた。


「おい!お前あの安藤姉妹と一緒に学校来たらしいじゃねぇか!」


「どういう事だよ!何があったか教えろ!」


「返答次第では…分かってるな?」


どこから話を聞いたのか、俺が二人と学校に来たことを知っていた。


っていうか、なんか男子みんな怖くね?最後の奴に関しては、返答次第で俺の命奪おうとしてるよね!?


これだから普通じゃない生活は嫌なんだよ…


仕方なく俺は、昨日の出来事の一部を説明した。流石に今朝の事を説明すると、俺の命が危うい。


説明すると、周りの男子は呆然としていた。


それもそうだ。こんな非現実的な話、信じる方が難しいだろう。


話が終わった後、周りの男子と一緒に話を聞いていた親友の佐藤太一が話しかけてきた。


「おいおい、お前羨ましい奴だな〜」


「こっちは普通の生活じゃなくなって大変だよ」


「いやいや、だって学校一の美少女姉妹が家族になったんだぞ?普通じゃなくたって人生勝ち確だろ〜」


「呑気でいいな、お前は」


太一との話を終えた俺は、自分の机に座ろうとする。


すると、廊下側から聞き覚えのある声が聞こえてくる。


「ゆうくん〜!お弁当渡すの忘れちゃった!」


「え!?未那さん!?」


「あ、あとこれからは未那お姉ちゃんでいいからね〜」


「あ、はーい、ありがと…」


未那からお弁当を受け取った後、男子からの視線がとても怖かった。


やっぱり普通の生活が一番良いと痛感した瞬間だった。

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