母親の再婚相手の娘が学校一の美少女姉妹で焦っています。

なべつかみ

第1話 普通じゃない生活の始まり

俺、田代優弥 (たしろゆうや) は普通の高校二年生である。


物心がつく前に父親を亡くし、それからは母親と二人で家で暮らしていた。


幼い頃とはいえ、父親がいないことは当時の俺からしたらかなりショックであり、普通では無かった。


ある時は、母親に『なんでうちにはパパがいないの!』と返答に困るような質問をしていた時もあった。


それでも母親は女手一つで、当時わがままでうるさかったであろう俺を今の今まで育ててくれた。


そんな高校二年生になった俺は、普通の高校生として生活をしていた。


勉強の成績も普通、テストの点数も全部平均。


運動神経も良くもなく悪くもない。本当に凡人だ。


更には身長も体重も高校二年生の平均というまさに一般的な高校二年生。それが俺だ。


別に普通すぎて嫌になったことは無い。むしろ普通で良かったと思っている。


もし頭が良かったら誰かに勉強を教えなくちゃいけないだろうし、運動神経が抜群だったら、体育祭などのイベントで活躍しなければいけないというプレッシャーを背負わなくてはならなくなる。


だから、普通が一番良い。俺はそう思っていた。


しかし、突如として、普通の生活は終わりを迎える。







学校が終わった。今日も何も無い、普通の一日だった。


午前中は面倒くさそうに授業を受け、昼は友達と飯を食い、午後は睡魔と戦いながら授業を受ける。

至って普通の一日だ。


家に着くと、早速家の玄関のドアを開け、自室に荷物を下ろしに行く。


荷物を下ろし、リビングに向かうと、そこには普段なら仕事で居ないはずの母がいた。


「あれ?母さん、仕事は?」


「ああ、今日は休みなの、ちょっと優弥に話があってね」


「話?」


話の内容を予想したが、何を話されるのか全く分からなかった。


母親に話の内容を聞こうとすると、玄関のインターホンが鳴った。


「ん?誰だ?こんな時間に」


時計を見ると、もう既に時間は17時を回っていた。


「ちょっと待ってて」


母親はそのまま玄関の方へ行ってしまった。


まあ、宅配便か何かだろう。そう思っていた俺は、玄関から歩いてきた複数の人を見て驚いた。


「紹介するわね、私たちの新しい家族よ」


「…え?」


何食わぬ顔でそう発言した母親に俺は絶句した。





数分後、俺と他の人はリビングの椅子に腰掛けていた。


目の前にいるのは、母親以外に一人の男性と二人の女性。


「あの…これはどういうこと…」


俺が話そうとすると、母親が話し始めた。


「この人が私達の新しいお父さんよ」


そう母親が言うと、男性は立ち上がって、丁寧に挨拶をしてきた。


「安藤誠 (あんどうまこと) です。よろしくね、優弥君」


「は、はい、よろしくお願いします…」


未だに状況の整理が追いついていない俺は戸惑いながら挨拶をした。


背の高く、少し細身な体型。しかし、父親とは思えないほどに若く、整った顔。


そんな父親に続き、女性の方に目を向ける。


そしてその顔を見た時、俺は驚いた。


「安藤未那 (あんどうみな) です。よろしくお願いします」


目の前で挨拶をした女性は紛れもなく、俺の通っている学校で一番の美少女である、安藤姉妹の姉だったからだ。


艶のある黒髪に、整った顔。体つきも華奢に見える。


そんな見た目で、学校の生徒会長もやっていて、成績も優秀なのだから驚きだ。


「はい、こちらこそよろしくお願いします」


あまりの驚きに、俺は動揺を隠しきれなかった。


そんな俺を置いていくように、安藤姉妹の妹も挨拶をする。


「安藤瑠那 (あんどうるな) です、よろしくお願いします!」


元気に挨拶をしてきた妹の方は短めのボブヘアーで少し茶髪だ。顔は言わずもがな、整っている。

姉とは違い、童顔気味の顔に女性らしい体つきをしていた。


妹の安藤瑠那は、通称’’小悪魔後輩’’として学校では有名だ。


俺のクラスメイトでも、瑠那に告白をして振られた奴が何人もいる。


挨拶をしてきた際、俺の手を弱く握りながらこちらを上目遣いで見てくる動作は破壊力抜群だった。


そこで俺は気がついた。あれ?俺この事について何も聞いてないんだけど?と。


俺は戸惑いながら、母親に質問する。


「あのー、俺何も聞かされてないんだけど?」


「それは…事後承諾って事で!」


母親は開き直った顔でこちらを見てくる。正直、かなりムカつく。


しかし、新しく父親が出来て更にはきょうだいが出来たことはとても嬉しい。


「はぁ…分かったよ」


俺は仕方なく、母親からの事後承諾を受け入れることにした。


こうして、俺の’’普通ではない生活’’が始まろうとしていた。

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