57.にゃんことソーシャルディスタンス

 最近、猫モチーフに嵌っている。ちょっと前は兎だったが、兎は耳が長いので小物とか揃えようとすると耳がデットゾーンを作ってしまう。そびえ立つ耳を前に人は無力だ。ということで、耳が短い猫を選んだ。合理的判断である。


 在宅時間が長くなったので、とりあえずトイレの小物を猫で統一してみた。黒猫のトイペホルダー、黒猫の便座カバー。黒猫のマット。完璧である。因みにこれらは通販で探したが、最初検索したときは、本物の猫のトイレしか出てこないので微妙に困った。兎だとあまりそういうことは無かったのだが。


 しかし実のところ、動物はあまり得意ではない。ハムスターでギリギリである。実家には犬が二匹いたが、死ぬまで分かち合えなかった。

 犬も猫も可愛いと思う。しかし、あの子達には骨がある。触るとその下に骨がある。ネズミやヒヨコぐらいだとまだいいのだが、兎以上になると骨の存在が急に大きくなるので駄目だ。どう言えば良いかわからないのだが、私は「骨」が苦手なのである。

 別にスプラッタやグロ画が苦手なわけではない。大してグロくないが「ザ・セル」見ながら馬刺しを食べたこともある。

 多分、自分で骨を触ってしまうのが嫌なんだろう。柔らかい物の中に骨が感じ取れるのが怖いのかもしれない。多分筋肉ムキムキの馬とかゴリラとかは平気だと思うが、それはそれで別の怖さがある。


 こういう「理由はわからないが苦手な感触」というのは誰にでもあると思う。ただ、私の場合はその対象が動物になってしまうので、何となく肩身が狭いことがある。世の中の動物好きの中には「犬猫を触ればその魅力にメロメロ」と信じて疑わない人がいる。別に私は犬猫が噛むこととかを恐れているのではない。その中にある骨を恐れているのだが、いまいち相手に通じない。別に理解してもらう必要もないことに気がついたので、最近はアレルギー体質ということにしている。


 ノータッチにゃんこ、ノータッチわんこ。道端でごろごろしている猫は可愛いし、散歩しながら尻尾をぶんぶん振っている犬も可愛い。ただ適切な距離は今後もキープしたい。そうすれば皆幸せに暮らせる。

 そんなことを考えながら、今日は猫型のトイレブラシを通販のカートにそっと投げ込む。そのうちトイレを猫まみれにするのが夢である。

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