41.Callの過去形はColdだと思っていた
英語が苦手である。具体的に言うと受験英語の類が苦手だ。道ゆく人に英語で話しかけられても、身振り手振りでどうにか伝える努力はするが、道ゆく人に「此処にはどの単語が入るでしょうか」なんてクイズを出されたら速やかに気絶する。それぐらい苦手である。
英語が話せる親には「英語を頑張れば学力が向上する」とか「国語が出来るなら英語も出来るでしょ。同じ勉強法よ」とか焚きつけられたが、全く効果はなかった。国語が出来るなら英語が出来るなんて、「足を交互に出して走れるんだね。じゃあフルマラソンして」ぐらいの突拍子もない話である。学力の向上については、理屈ではわかるがどうしてもやる気が出なかった。根っからの怠惰だ。ハングリー精神など持っていない。
国語が好きなのは本を読んでいて「これがどうしてこうなったのか知りたいな」とか思うから、考察したり知識を求めたり出来ただけで、英語についてはそれが無かった。ボブと花子が「あれはミカンですか」「いいえ、犬です」と話をしている文章を見たって、それ以上の好奇心は湧かないのである。眼科に行けと思う程度だ。
だから例えば、ある日突然好きな作家さんが英語でしか書かなくなったら死に物狂いで覚えるかもしれない。それぐらいの事が起きないと私は英語を学ばないと思う。
しかしシステムエンジニアをしていると、頻繁に英語というか英単語が出てくる。ログには英語、コマンド実行結果も英語、そもそも医療装置なんて大体外国製だからキーボード配列もあちらの仕様。その説明も英語である。
英語わかんないからやりません、なんて通用しないので頑張って必要なことは覚える。よく出るエラーとかコマンドも記憶しておく。そうすれば大体は理解出来るようになる。「ははぁ、この文字列は見たことあるぞ」と嬉々として仕事をすることが可能になるのだ。
だが、これには落とし穴がある。あくまでログやコマンドは「口に出さずとも良い文字列」なので、頭の中だけで理解する。その綴りが本当に正しいかとか、読み方は何かなんて気にしないのである。意味がわかって自分打つことが出来ればそれでいいと思っているので、過ちを修正する機会がない。
そんなわけで良い歳して先日「Delay(遅延/ディレイ)」を「デライ」と言ってしまって、皆に滅茶苦茶笑われた。恥ずかしい。穴があったらそこに皆入れて埋めてやりたい。そう思いながら心の中で泣いた。こうして私の英語嫌いは自業自得に加速していく。
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