17.面倒くさがりの話
パソコンが相変わらず調子が悪い。新しいの買おうかなーとか思っているうちに七月である。こういう怠惰な性格はどうにかしたほうが良いと思っているのだが、それが出来たら苦労はしない。
最近色々面倒になったので、某通販で使い捨てスポンジと使い捨て布巾を購入してみた。これは非常に便利である。食器を洗ったついでにガスコンロやシンクの見えない箇所まで掃除が出来る。専用のスポンジなどを他に用意しておかなくてもいいし、「いつかの休みにまとめてやるかー」というささやかなフラグを樹立しなくてもいい。
怠惰なりに色々と考えてはいるのである。理想的なのは物を一切置かないミニマリズムな生活だが、それが無理なのは以前に述べたとおりである。無い物ねだりしても仕方ない。今日も私は愛すべき金塊漫画とRPGゲームに埋もれて生きる。
クイックルワイパーでクイックルした後の床にごろごろ寝転がっていたら、妹から連絡があった。
「Excelで、この欄に数字を入れたら自動で六十倍の数字にしてくれる方法ってあるの?」
「掛け算すればいいだろ」
「電卓で?」
暗算でも電卓でも算盤でも好きにすればいいと思うが、Excelの質問をしておいてその返しはないだろう。
Excelでの数式の使い方、また算出するための具体例を教えてやった。妹は「やってみるー」とだけ言い残して、その日の会話は終了した。
しかし翌日、再び連絡が来た。「教えてもらったとおりにやったけど、わからない」と、古より存在する「何もしてないのにパソコンが壊れた」レベルに信憑性がない内容だった。
床をクイックルしながら送られてきた画像をみる。パソコンの画面をそのまま写したそれは、少し歪に反射していたが、内容は読み取れた。その瞬間に思わず二度見した。Excelを知らない人がいるかもしれないので、簡単な言葉でまとめよう。
数式を入れるべきでない場所に数式を書き込んでいた。
具体的にいうと、セルの書式設定に書き込んでいた。
例えるなら、冷蔵庫に入れて欲しいものを手渡したら、冷蔵庫の場所がわからないからと床に置かれたような、そんな感覚である。
「言われたとおりにやったのに」
私はそんなことを教えた記憶は一切ない。というかここに至って気がついたが、妹はExcelのことを何も知らないらしい。知らないなら数式を使おうとするな。
しかもよくよく聞いてみたら、一つのセルに数字を入れたら、そのセルの中で計算して欲しいらしい。へぇ、なるほど。
よしよし、まだお前には早い。お前には早いんだ、ベイビー。
お前がやりたいことは、別の手段を用いれば出来ないことはない。しかし、お前には数光年早い。電卓使おう、電卓。電卓は便利。お前の代わりに計算もしてくれるし、保証だってしてくれる。
早々に諦めさせた上で会話も放棄した。これが仕事の後輩なら兎に角、妹にそこまで構っていられない。だって面倒くさい。
しかし、まさかあんな発想をするとは思わなかった。あれが凡人ならざる発想というものなのだろうか。あぁいう発想力をもっと別のことに発揮してくれないものか。そして皆が驚くような新商品を発明して金を儲けて、こちらの恩恵を与えて欲しい。
自分で考えて稼ぐのは面倒くさいので、そんなことを考えながら人を駄目にするソファーに沈み込む。駄目人間が乗ればもうそこは最強のユートピア。どんな高尚なものも入り込むことは出来ないのである。
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