9.裏技は便利だが使いすぎに注意

 先日見つけたラズパイだが、更に断捨離を進めていたら人感センサーだのLEDだのコードだのが出てきたので、暇つぶしに色々弄っていた。ファイルサーバとしては既に設定済みなので、言うならばこれはオプションである。

 その結果、理系でもなければプログラマでもなく、ついでに言えば手先が不器用な人間でも「人の動きを察知したら映像を撮り、それをSlackに投稿する」ものが出来たので、ネットは偉大である。ありがとう、先人達。飼ってるペットの残像ばかりがSlackに投稿される新しい生活様式がここに爆誕した。


 仕事はシステムエンジニアで、プログラマではないし、技術屋でもないのだが、周囲には「変な知識だけは豊富なやつ」と思われている。システムの仕様の裏を突いて特殊な設定を行うのが得意なためだと思う。自分でも偶に「よくまぁこんなの思い付いたな」と呆れることもある。保守作業(トラブルが起きた時に対応したり、点検作業を行う)の人たちからは若干恨まれているが、お金が無かったのだから仕方ない。恨むなら私ではなく営業だ。


 前にやった案件では、「お金はないけど特殊なことをしないと要求を満たせない」という状況下で、私みたいなタイプのSEが集まってしまった。船頭多くして船山登る。登るどころか羽が生えて飛んでいった。それぞれが持ちうる技術や裏技を総動員して、難しい仕様に立ち向かった。

 これが熱血バトル漫画なら胸熱展開であるが、現実だとそうはいかない。確かにそれぞれの技術により稼働は迎えられた。無事に動いて良かったね、と祝杯を上げたのも束の間、数週間後には全員で頭を抱える羽目になった。


 保守用資料が作れない。


 保守というのは、システムが稼働した後に問題が起きた時に対応したり、定期的にサーバや端末のメンテナンスを行うことを指す。それは稼働メンバではなく、別の保守メンバが行う。彼らに「此処ではこういう仕組みでシステムが動いてますよ」と説明するための資料を作る必要がある。

 それが書けない。

 あまりに皆で裏技を使いまくったので、それを書こうとしても文章での説明が困難だったり、複数のシステムで似たような、しかし絶妙に違う作業をしているので注意書きだけで数ページ費やしてしまったりと、混沌極まる状態になってしまった。当然、受け取った側も「これじゃわからない」と悲鳴を上げる始末である。


 結局、稼働するのに使った工数と同じぐらいの時間をかけて資料を作る羽目になってしまった。勿論その間に起きたトラブルは自分たちで解決である。裏技の使いすぎはよくない。まして全員で使ってはいけないのである。伝説のモンスターを裏技で捕まえると画面がバグるのと同じだ。物事には正道がある。邪道を使って解決したら正道には戻れない。その病院のトラブル内容は、今日も私のメールアドレス宛に送られてくる。

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