第12話 束の間の安息

先程までいた暗い地下とうってかわって、眩しい日差しが木々の間から刺してくる。


時に風が吹き、辺りは鳥が気まぐれに鳴く。


まるで戦いとは無縁な静けさの森の中、かつて敵同士だった2人が空間を共にしている。



今や亡国の元将軍、つまり、肩書きも何もない、ただの1人の男になったトラバルトは、王やヨルムンガンドから救われた命をどう使うべきかを思案していた。


(陛下は私の正しきを貫ける世であって欲しいと仰った。

私の正義とはなんだろうか。悪を挫くことか?

だが今戦争をしている国々を悪だと断定するのは傲慢だ。

皆、それぞれがそれぞれの正義のもと戦っている。

ならば民衆を守ることだろうか。

確かにこれは私の望むところかも知れない。

戦火や略奪に晒される民を守る事は私の目指した正義の一歩であったように思う。

将軍の職は広義では民衆を守ってたと言えるだろう。

しかし私は思い知った。

私は自分の手の届かない範囲の人を守り切れるほど出来た人間ではない。

それに私はわがままだ、将軍にいては敵国の民を救えない。

私には全てを救うことなどできない。

ならばせめて全ての民を分け隔てなく全て救いたい。)



ぼんやりと目指す所が決まったトラバルトは顔を上げると、木にもたれかかり眠るヨルムンガンドがいる。


(信用されたものだな)


顔にこそ出ないが、ヨルムンガンドはタニア王都までの強行軍で疲れ果てていた。


(貴殿にも、報いねばな)



トラバルトはこの束の間の平和と解放を噛み締めるように、この静かな時間をジッと目を閉じて堪能した。



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