第22話:新たな依頼
ドードに来て、無所属騎士になってから二週間がすぎた。
俺の思惑とは異なり、未だこれと言った功績は残せちゃいない。
依頼もほとんどヴィーツとだったしな〜。
「そろそろ、何かしないと……」
ということで、俺は集会場へと来た。
高難度依頼はないか……。
騎士の志望者不足って聞いていたから、もっと危険なものばかりかと思っていたが、意外とそうでもない。
これまでやってきたものも、小物の魔物討伐や素材収集ばかり。
「これなら、早々に騎士団に入団した方がいいか」
「キトさん、今日も依頼を受けに来たんですか?」
俺が依頼を見漁っていると、ノルが話しかけてきた。
「いや、めぼしいのがないなと思っていたところだ」
「なるべく高難度の方がいいんですよね?」
「ああ」
「では、これはどうですか?」
ノルは、一枚の紙を見せてきた。
「高難度依頼、帝国へ行け……。行くだけ?」
「丁度今日、張り出す予定の依頼なんですよ」
「……しかし、他国に行けなんて随分な依頼だな」
「ドードには、小国というのもあって騎士団が一つしかないですからね。堂々と国の騎士団を他国に動かせないんです」
「無所属騎士だから良いってわけでも無さそうだが?」
「どこ所属っていうのがない分、結構自由ですよ?観光できた。って言う言い訳も通りますし」
「なるほど……」
「ただ、キトさんもご存じかも知れませんが、帝国は今とても物騒になっています」
前にレヴィアタンが似たようなこと言ってたな。
「ああ。でも、詳しくは知らないな」
「私も、そんなに詳しくはないですけど。なんでも、奴隷商が盛んだとか、すっごい魔物を操れるとか」
「良さそうだな。そうとなると、なるべく速く行きたいな」
俺がそう言うと、ノルは世界地図を取り出す。
「帝国は、ドードとは混昏山を挟んだ真正面に位置します。一番速く着くには、早馬に乗って二日が良いところです。ですが、早馬は慣れ親しんだ人しかまともに乗せてくれないんです」
「……その山を越えていったらどれくらいだ?」
「え、そうですね……。休み無しなら一日?」
「そうか、ありがとう」
俺は、困惑した表情を浮かべるノルを余所に、まずは再び混昏山に行くことにした。
その前に、帝国を少し調べる必要もあるな。
ドード国立大図書館。
ここは、世界各国から取り寄せられた本が保管されている、ドードの図書館である。
なんでも、このドードの国王は筋金入りの読書家で優に一万冊は読んでいるのだとか。
俺も本は嫌いじゃないが、一万冊なんて何年かければ読み終わるんだ?
「でかいな」
筒状の背の高い建物の中に、壁に沿うようにして本棚が並んでおり中に入るだけでその景色に圧倒される。
俺はまず、図書館の真ん中にある受付に向かう。
「帝国のことが書いてあるものが見たいんだが?」
「リンゼル帝国の資料ですか?少々お待ちください」
受付の案内通り少し待っていると、一冊の本を持ってきてくれた。
「一冊だけ?」
「はい。リンゼル帝国は、そもそも自国外への情報漏洩に対してとても厳しい国ですので、あまり資料と言える物がないんですよ」
ノルのあの情報の曖昧さは、こういうことか。
さて、何が書いているか……。
「……アニマリア?」
この一冊の本を読んで気になったことは、3つ。
一つ目は、アニマリアと言う存在。書いてある特徴を見るに、獣人だろう。
二つ目は、ノルも言っていた奴隷。俺が読んだこの本は、帝国に潜入したある男の日記のような物で、実際に奴隷商が行われていることや商品になる物の殆どがネコのアニマリアであることが書かれていた。
そして、三つ目は魔力を喰うアニマリアのこと。そのアニマリアは、「白銀の毛並みに深い青の目を持ったネコである」と書かれていた。
「色々と問題があって、俺が求めてる物なのは確実だな」
さあ、どうなることか。楽しみだな。
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