第15話:シーゼル
海上都市シーゼル。
そこは、大きな平らな島の上に建てられた都市である。
昔は、シーゼルという王国であったが、戦争に敗れシーゼル王家の血が無くなった。しかし、シーゼル王は国民に一番愛されている王であったため、今もこうして国ではないがシーゼルの名を残し続けようと、この都市が作られた。
「そんなにいい王だったのか、ちょっと会ってみたかったな」
「もう国が無くなって随分経ちますからね。私も会ってみたかったです」
「アルマは、シーゼル出身なんだっけ?」
「ええ、産まれも育ちも」
俺は今、リヴァイアサン戦を終えてシーゼル防衛団団長に会う予定なのだが、少し時間が掛かるとのことでアルマと雑談をしている。
俺の戦いっぷりを見たアルマは、その姿に感服したらしく「強さの秘訣は?」「どんな特訓をした?」などと質問してきた。
戦いに関してはアドリブだが、勝敗については八百長だからちょっと罪悪感があったが、答えないわけにもいかず「イメージが大切」などと話した。
まあ、全部レヴィアタンからの受け売りなんだが。
「キト殿、改めて今日は本当にありがとう。私たちのために、その身を賭して戦ってくれたこと、本当に感謝してもしきれない」
「言ったろ?俺は、俺の思惑があってあいつと戦ったんだ。あまりキツく思わないでくれ」
俺とアルマが話していると、一人の男が近づいてくる。
「あ、団長!」
アルマは、その男に気づくと立ち上がり男の隣に移動する。
「キト殿、こちらが我らシーゼル防衛団の団長、レジナルド団長です!」
「シーゼル防衛団団長、レジナルドだ。今回、この都市を危機から救ってくれたこと、誠に感謝する」
レジナルドは、そう言うと同時に深々と頭を下げる。
「頭を上げてくれ。アルマにも言ったが、俺は俺の為にやったんだ」
レジナルドは、俺の言葉に静かに頷く。
その後、俺はレジナルドとも軽く話して、シーゼルを出た。
シーゼルからかかる橋を渡り、少し行くと丁度俺とリヴァイアサンが戦ったところを一望できる高台へと進む。
そこには、木のテーブルを囲む魔王三人とオルカの姿があった。
「お、キトくんお疲れ!」
「キト君、中々の戦いぶりだったよ」
「レヴィアタン、無事だったか」
「うん、割とギリギリだったけどね。無傷だよ!」
「で、なんで団長さんがいんの?」
俺は、レヴィアタンを見たままオルカを指さし問う。
すると、レヴィアタンは口元に片手を添えてオルカには聞こえないように話す。
「僕が勝手にオルカの名前使っちゃったから、「本当だよ」ってシーゼルの人に言いに来てくれたんだって」
「おお、それはそれはご苦労様です」
「……。レヴィアタン様、そろそろ白い街に送っていただけますか?」
「俺は、レヴィアタンに転移で連れてきてもらったけど、団長さんはここにはどうやってきたんだ?」
「それは、僕の人形を使ってきたんじゃないかな?」
レヴィアタンの人形には、レヴィアタンの使えるスキルのほとんどが使用可能という能力があり、オルカはその人形の転移のスキルを使用してきたのだ。「まあでも、一回使うと人形が壊れちゃうから行きで使うと帰れないんだよね」
「そうなのか」
「そう。そして、キトくんはこれから2ヶ月の間、僕たちとは別行動です」
「何、急だな?」
「キトくんを英雄にしよう作戦のため、君には2ヶ月の間でその世間知らずをどうにかしつつ、キトと言う名前を広める活動をしてほしい」
つまり、人間キトとしての名前と評判を上げて「英雄に成れるかも知れない存在になれ」ということだ。+でこの世界の知識常識も知りなさいと言うこと。
「まあ、了解した。まずどこに行けばいい?」
「そうだね、まずは聖光使団団長の友という肩書きもあるし、一度シーゼルに戻るといいよ。それじゃ、僕たちは帰るね」
そう言うと、レヴィアタンらは各々の転移でその場を後にした。
ということで、ここからは俺の単独行動開始である。
俺はまず、レヴィアタンの助言どおりにシーゼルへと向かった。
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