第14話:作戦の傍観者たち
キトとリヴァイアサンの戦いの裏では、久しぶりに顔を合わせたレオナードとクリフォトが、少し遠いところから戦いを見守っていた。
「昔に一度見たことはあったけど、すごい迫力だな〜」
「あのときは、迷惑をかけた……」
二人は、クリフォトが操り作った木のテーブルを木のイスに座り囲んでいる。
「君が彼の大蛇の子供であっても、その大きな力を初めから制御するのは無理がある。今でも少し暴走気味だからね」
「ああ……」
「でも、あまり気に病むことはない。君のおかげで、俺の森は人間に犯されずにすんでいるんだ。感謝しかないよ」
人間に伝わるクリフ森林とは、日が昇るうちには人を惑わし死に誘う大樹が襲うと言われ、日が落ちると巨大な三つ首の狼がその眼孔を光らせ侵入者を必ずその凶爪の餌食とすると伝わっている。
「お、キト君対リヴァイアサン、始まったみたいだね」
「キトは、レヴィ曰く魔力の操作は素質があるらしい」
「彼の存在は、前例がないにしろ、魔力結晶の上位互換のような石の生命体だからね。そう考えてみれば“大災厄、魔王”と同じと言える」
「大災厄、魔王。時間がないな」
「憑代の件と言い、今のところレヴィアタンの聖光使団で保護されているとはいえ、間に合うかな……?」
「レヴィアタン様は、聡明な方です。私たちは、信じています」
レオナードとクリフォトの背後から、オルカが話に入る。
「あれ、団長さんがこんなところで何を?」
「レヴィ……レヴィアタン様の様子を見に来たんです。最近、あの鉱石に夢中のようですし」
「嫉妬かな?」
クリフォトは、オルカに冗談混じりに笑いかける。
「そう言う訳じゃありません!あの鉱石とは違うやつに、我ら聖光使団の一人が殺されました。レヴィアタン様に心配は無いと思います、でも……」
「殺されたということは、人間か?」
「はい。ですがイルカは《アンチデス》を持っていましたし、人形たちにも引けを取らない戦闘能力はありました」
「キト君と同じ存在か……」
「大災厄に、その憑代。そして、キトと同じ存在。聖光使団は忙しいな」
「ええ。でも私は、団長としてイスに座り、書類に目を通して命令を出す。そんなことばかりです。実際に動いている者たちの大変さを、想像することも難しい」
「レヴィアタンは、子育てが上手いんだね」
「私を育てたのは…レヴィアタン様ではないですよ……」
オルカは、クリフォトの言葉を苦しそうに否定した。
「決着がつきそうだぞ」
レオナードの発言で、二人も戦場へ目を向ける。
今、キトとリヴァイアサンの技が発動し合う。リヴァイアサンの技により水の矢が降り注ぎ、キトの技でリヴァイアサンの体に10本の土の槍が突き刺さる。
「レヴィ……!」
『あれ、オルカ何でここにいるの?』
リヴァイアサンの海に沈む姿を見て、オルカは思わず焦ったような声を出す。その瞬間、オルカの背後から魔力体(肉体ではない、魔力だけの体)レヴィアタンが現れる。
「――?!」
『あれれ、もしかして心配してくれたの?』
「い、いえ、そう言うわけでは」
「でもあれは俺もひやっとしたよ。キト君、意外とやるね」
『まあ、僕が育てただけはあるよね!』
「……ッ」
オルカは、自身の右腕をぎゅっと握りキツく感情を押さえ込む。
「レヴィアタン、お前は少し――」
「――そんなことより、レヴィアタン様、あなたですよね。私が、キトとか言う人間と旧知の間柄だとアルマに伝えたのは」
オルカは、レオナードの言葉を遮りレヴィアタンに問う。
『あ、バレた?』
「私の名前を無断で使うのなんて、あなたぐらいしかいないでしょう?」
『それもそうだね。じゃあ、それを証明するためにわざわざ来てくれたの?』
「ええ、シーゼル防衛団団長と話してきました」
『それは、苦労をかけたね。オルカ、ありがとう!』
「本当に、苦労しました!」
レヴィアタンの純粋な感謝の言葉に、オルカは照れくさそうに返した。
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