第13話:作戦開始!キトVSリヴァイアサン

 翌日の朝、シーゼル近郊の海に8つの触手と龍の頭を持った巨大な怪物が現れた。

「でっかー!」

 大海に現れたその龍は、8本の触手をうねらせシーゼルの街へと前進する。

 リヴァイアサンは、ある程度近づいたところで停止しシーゼルを見つめている。

 俺はというと、シーゼルの防衛団と手を組み化け物退治をするということとなっている。なんでも、レヴィアタンの聖光使団とシーゼルは仲がいいらしい。そして、今俺の隣にいる青い軍服を着た不安げな表情の女はシーゼル防衛団副団長のアルマだ。

「キト殿、あれを討つなど本当にできるのだろうか?」

「大丈夫、一応腕に自信はあるんでね!」

 嘘である。

「あのオルカさんのご友人ならば、信じましょう」

「ただの昔からの腐れ縁ですがね」

 真っ赤な嘘である!

「私たちはどのようにすればよいでしょう?」

「あなたたちは、この都市の防衛に全力を注いでください。あれの討伐は、俺の役目です!」

 俺は、キラーンと歯を見せて笑う。

「動くぞ!」

 防衛団の誰かがそう言った。その瞬間、リヴァイアサンは8本の触手を束ねてシーゼルへと向ける。その触手の先端にだんだんと水が球体に集まっていく。

 俺は、次の瞬間にあの水がシーゼルを襲うと確信し、地面の土を操りシーゼル全体をドーム状に覆う。シーゼルが、土で覆われた瞬間――。

 ――ドバァーーン!

 リヴァイアサンの束ねられた触手の先の水の球から、凄まじい勢いで水が噴射される。

「街は!?」

 アルマの声で、リヴァイアサンの攻撃に圧倒されていた全員が街の方へ振り向く。しかし、全員の心配をよそに街を囲む土壁は傷一つついていない。

「何とか守れたか……」

「すごい、あんな攻撃を簡単に防いでしまうなんて」

 アルマを含む団員全員が、きらきらとした羨望の眼差しで俺を見つめる。

「さあ、これからが本番だ。行ってくる!」

 俺はそう言うと、予め用意していたリヴァイアサンとの決闘場(陸地から土を操作して作った平らな島)へと移動した。

「オルカさんが言っていた、大地を操る凄腕のスキルマスターというのは本当ですね」


「さてと、やろうか……凍れ!」

 俺は、両手を冷気の魔力結晶になるように意識する。すると、両手がピキピキと音を出し青い結晶になり、冷気を放ち出す。

「人間の体でも結晶に出来る。まずは、一安心だな」

「人間、なぜ私に挑む?」

 ここで、会話するの?と思った人への説明をしよう。まず、今回の作戦はキトというスキルマスターがあの伝説を討ったという実績を積むためのものである。だが、そこで生じる疑問として「誰?そしてなぜ?」というものがある。幸い、リヴァイアサンの声は肉声であるため、疑問が解消される会話をすれば問題を解決することが可能なのである。

「俺は、スキルマスターとしての己の力を確かめるため。そして、腐れ縁の友の友のためお前を討つ!」

 俺は、リヴァイアサンの問いに利己的な目的と人情的な目的を回答をした。

「いいだろう、その心意気に免じて本気で相手をしよう!」

 え、言葉だけだよね?

 次の瞬間、リヴァイアサンは触手を俺に向けて叩きつける。 

 俺は、とっさの判断で地面を操作し触手を避ける。そして、地面に叩きつけられた触手を地面を操作して掴む。

「一本ゲットォ!」

 俺は、土で触手を掴むと抜けられる前に急いで強い冷気を纏う両手で触手にしがみつく。

「――ッ!凍る!」

「冷気の魔力結晶だ、出来てから2分は経っている。結構痛いはずだぜ?」

 魔力結晶の属性の強くなる速度は、俺の作れるやつは100%の強さになるまでには10分かかる。ただ、レヴィアタン曰く100%まで強くするとリヴァイアサンでも死ぬまではいかずとも危険な状態になるらしい。

 このまま凍って死んだふりってのも有りだが……。

 と考えていると、リヴァイアサンは凍り始めている自分の触手を無理矢理ちぎった。

 簡単にやられるのは、ダメか。

「貴様、私の触手を一つ奪うとはやるな」

「そりゃどうも。次で終わらせるぞ」

「やってみろ!」

 俺は、地面の土を操作しリヴァイアサンを円で囲む。

「私も技を見せようか」

 俺と同様に、リヴァイアサンも最後の技を出す。リヴァイアサンは、真上を向いて口を開け、そこに水の球体を作り出す。

 それと同時に、俺の作ったリヴァイアサンを囲む円も動きだし、リヴァイアサンを閉じこめる10本の槍状の柵の檻が出来上がり、槍の刃がリヴァイアサンに向けられる。

「《ポーリングオーシャン》!」

 僅か一瞬の差でリヴァイアサンの技が発動される。リヴァイアサンの口に生成された水の球が弾けると、無数の水の矢が降り注ぐ。

「《インパレッドケージ》!」

 リヴァイアサンの技が発動した瞬間に、俺の技も発動する。リヴァイアサンの頭上に向けられた、10本の槍が同時に突き刺さる。

 

 一方その頃、リヴァイアサンとキトの戦闘中、アルマ等シーゼルの防衛団は見守ることしかできない。

「何だ、静かになったぞ?」

「決着がついた……のか?」

 周りの団員が困惑の声を上げる中、アルマは祈るように手を組み水しぶきが晴れていく戦場をじっと見ていた。

 勝敗が明らかになる。

「キト殿……!」

 アルマたちの視線の先には、大海に沈んでいくリヴァイアサンの姿と拳を空に突き上げ勝利を宣言するキトの姿があった。

 シーゼルから、歓声が上がる。

これで、魔王同盟の最初の作戦が完了した。

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