第12話:魔王同盟会議


「さあ、集まったね。それでは、第一回魔王同盟会議を始めよう」

 様々な伝説の怪物たちの装飾が彫られたドーム状の建物の中、四人の魔王が円卓を囲んでいる。

“海の魔王、9つの首を持つ大海の悪魔、リヴァイアサン。

 獣の魔王、今も語り継がれる三つ首の夜の怪物、ケルベロス。

 森の魔王、クリフ森林の死の大樹、クリフォト。

 大地の魔王、未だ語られることのない歴史なき謎の岩、キト。”

「ちょっと待て!ほか三人はいいが、何だ俺のこの薄っぺらさ!」

 レヴィアタンの魔王一人一人の紹介文にツッコむこの白い軍服を着た茶髪の男は、なにを隠そうこの俺、鬼頭和馬(現在は、キト)である。

 完全な《人化》に成功した、というわけではなく少々強引な方法で何とか人間の体を手に入れたのだ。

「仕方ないじゃないか、君は新人の化け物だ。まだ、何にもしてない」

「そりゃそうだが……」

「そんなことより、早速本題を頼むよ。レヴィアタン」

「そうだね、クリフ。それじゃ、本題のリヴァイアサンVSキトについて改めて話そう」

 明日決行されること、それはざっくり言うと「キトを英雄にしよう大作戦」である。

「これからキトくんには、時期を分けて僕たちと戦ってもらう」

「殺し合いではなく、戦ってキト君が勝つ。このシナリオに沿って演技をするって感じだね」

「まあ、それでも私たちは伝説にもある怪物。生半可な戦いは、疑いの目を持たれる可能性がある」

「ある程度は、ガチでやらなきゃならないってことか」

「そう。だから僕たちは、キトくんに負けるために僕たち自身の弱点を教えてあげる。まずは、明日戦う僕の弱点をね」

 レヴィアタン改め、リヴァイアサンの弱点。

 それは……。

「正直、僕にも思いつかないんだよね〜」

 無かった。

「……どうすんだよ。9つあるとか言う首をどうこうすればとか、なんか無いのか?」

「そもそも、僕の首は9つもないからね。誰かが見間違えたのさ」

「そうなれば、キトの頑張りに期待するしかないということだな」

「伝説の怪物に頑張って勝てるものか?」

「頑張れば?」

「……怪物からみて、レヴィアタンの弱点は見えないのか?」

「俺たちの中でも最年長だから、彼女が暴れてた時代は知らないしね〜」

「まあ、とにかく僕も隙を見せるようにするから頑張ってくれ!」 

 ということで、キト初のボス戦は「高難易度:弱点不明リヴァイアサンを撃退せよ」ということとなった。

「あ、そうだキトくん。今回僕たちが戦う場所は、海上都市シーゼル近郊の海だ。僕は最初、そのシーゼルに向けて攻撃する」

「了解」

 止めろ。そういうことだと、俺は受け取った。

 

 さて、ここからは脳内作戦会議だ。まず、今回戦うのはリヴァイアサンだ。あの3人の反応を見るに、お互い本気で戦うなら勝ち目はない。だが、今回は俺が勝つことを前提とした戦い。つまり、表面上だけでも殺せているように見えればいいのだ。

「……よし、まあなんとかなるさね」

俺は、考える事をやめた。

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