第10話:魔王たち

 目が覚めると、そこは鮮やかな緑の木々と、色とりどりの花や実が優しく揺れている落ち着く雰囲気の場所だった。

「あ、起きたかいキトくん?」

 声の方に視線を向けると、ティーポットやお菓子が置いてある丸いテーブルがあり、それを緑のドレスを着たレヴィアタンと緑のスーツを着た穏やかな雰囲気の男が囲んでいる。

『外?』

「ここは、このクリフの森林の中だよ」

 俺の問いにレヴィアタンは、緑のスーツの男を指さし答える。

「ご紹介に与りました、私このクリフ森林の主クリフォト・アリスと申します」

 クリフォトは、胸に軽く手をおいて自己紹介をする。

「キトくん、このクリフォトが君がまだ会っていない魔王の一人だよ」

『そうなのか』

「そう、俺は森の魔王。今回の戦いは、二人の戦いだから俺は大きくは参加しませんが、よろしくね」

『俺とレヴィアタン?』

「もしかしてレヴィアタン、説明してない?」

「うん、さっきまで忘れてて教えるついでに君たちに会わせようと思ってさ」

「はあ……それじゃ、こんなところでゆっくりしている暇はないのでは?もうすぐ日も落ち出すよ」

「ほうはね、ほおほおひほうは」

 レヴィアタンは、口いっぱいにお菓子を詰め込みながらクリフォトに答える。

「お菓子もお茶もいつでも用意しておくから、早く行きなさい」

「ああ、よろしく頼むよ。キトくん、何か今のうちにクリフと話したいことはあるかい?」

『いや、大丈夫だ』

「それじゃあ、行こうか」

 そう言うとレヴィアタンは俺を抱き上げ、ここへ来たときと同じように自身を水で包む。そして、俺は再び意識を失った。


 目が覚める。するとそこは、鮮やかな緑の木々と、色とりどりの花や実が優しく揺れている落ち着く雰囲気の場所だった。

『うん?まさか俺……死にもd』

 いや、違うわ。

「キトくん起きたね、このでっかいのがクリフォトと同じく君が会っていなかった魔王レオナだ」 

 レヴィアタンの言う方を見るとそこには、灰色のくせっ毛長髪のケモ耳の女がいた。レヴィアタンの言うとおり、背も胸もでっかい。

「私はレオナード・ケルベロ。獣の魔王だ」

『ああ、よろしく……』

「何か言いたげだな?」

 俺の微妙な返事に何か感じ取ったのか、レオナードが俺に問う。

『ここってさ、クリフ森林じゃないのか?』

「ああ、そうだぞ。それがどうした?」

『わざわざ転移する必要あったのか?』

「キトくんは、世間知らずだからね〜。先生が教えてあげましょう」

「先生?」

「僕は、キトくんの先生なのさ」

『それで先生、早く教えてくださーい』

「いいでしょう。ここは、キトくんの言うとおりクリフ森林。じゃあ、何で長距離移動を行ったのか。それは、ここが森林の最奥部だからなんだ」

『最奥部?』

「つまり、この森林はそれほどに広いと言うことだ。クリフォトのいるところからだと、ここにたどり着くには二日はかかるだろう」

『そんなにか?!』

 俺は、予想以上の森林の広さに驚く。

「おっと、そろそろ帰ろうかキトくん」

『クリフォトのところでも思ったが、そんなに急いでどうしたんだ?』

「うん。それは、私のせいだな」

『どゆこと?』

「キトくん、その話は帰ったらしてあげるからね。それじゃあ、レオナまた明日」

『ああ、またな』

 レヴィアタンは、急いで俺を持ち自身を水で包む。

 俺は、遠ざかる意識の中レヴィアタンらが急ぐ理由をみた。それは、大きく凶悪な顔をしたバケモノだった。


 目が覚め周りを見渡すとそこは、白い街の俺の部屋だった。

「ふう、危なかったね」

『焦ってた理由ちょっと見えた気がする』

「彼女の本来の姿は、あの森林の夜の守り神って言われてる三つ首を持つ狼」

 ケルベロって名前は、やっぱりそう言うことか。

「夜クリフ森林に入ったが最後、森林全体を見ている三つの首から逃げることは不可能であり、見つかれば抵抗空しく大きな凶爪で一撃ってね。人間の間でも、子供に向けて夜遅くまで起きてると喰われるぞって話されてるらしいよ」

『有名人だな』

「僕も昔は、ちょっと有名だったんだよ?大海の悪魔なんて呼ばれて、それはそれは恐れられたんだよ!」

 レヴィアタンは、自分語りをしながら口を尖らせ腕をクネらせる。そんなレヴィアタンをよそに俺は、考え事をする。今日みた研究書、そこに書かれていた関連案件のことだ。

 勇者の石の捜索、そしてその捜索者二人の死。

 俺の脳内で嫌な想像が浮かんでくる。

「キトくん、聞いてるかい?」

『あ、うん。聞いてる』

「ほんとかな〜?さあ、今日はもう遅いから休もう。明日は、特訓のあと魔王全員で集まるよ」

『……わかった、じゃあまた明日』

「キトくん、ちょっと失礼」

 そう言うと、レヴィアタンはベッドの俺に触れ「《メルトラヴ》」と唱える。すると、もやもやとした嫌な意識がぼんやりとし出し、温かい魔力とレヴィアタンの手の感覚に安心する。そして、ゆっくりと眠るような感覚に俺はその身を委ねた。

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