第2話 《審判》は《力》と再会する
目を開けたら、見慣れた天井が視界に映った――なんてことはなく。
眠る直前に見たものと同じ天井が映り、フェリシアは朝から頭を抱えた。
窓の外はすっかり明るくなっており、あれから無事に夜が明けたことを示している。しかし、目の前に広がる部屋の風景はフェリシアのもので、手や身につけているものなども昨日と同じままだ。
心の片隅では、夢なんじゃないかと思っていたが――どうやら『フェリシア』になってしまったのは、夢ではなく現実らしい。
(いや、私も現実であること前提でいろんなことを考えてたけど!)
はっきりとした形で、自分が現在進行系で経験しているのが現実だと突きつけられるとなんともいえない気持ちになってしまう。
だが、こうして現実だと確認できたのは助かる部分もある。夢ではなく現実だとわかったことで、これから先、行動を起こすときは昨日以上に慎重になったほうがいいとはっきりした。
朝の空気を深く吸って、吐き出す。肺の中を爽やかな空気で満たし、窓を開けた。
同時に、部屋の扉がノックされる。
「失礼します。お嬢様、お目覚めの時間です」
「起きてるわ、入って」
振り返り、すかさず入室許可を出す。
わずかな間のあと、ゆっくりと扉が開かれて昨日眠る前に話していた執事がティーカートとともに室内へ入ってきた。
窓から入ってくる朝の空気の中に、紅茶の優しい香りが混ざり、フェリシアの表情が緩む。
「おはようございます、お嬢様。よく眠れましたか?」
「おはよう。そうね……よく眠れたかはわからないけど、ゆっくり休めたと思う。今日の紅茶は何?」
「本日はラメラティーをご用意しました。今、準備しますので少々お待ちください」
執事がティーカートの上に乗せていたポットを手に取り、カップへ注ぐ。柔らかな赤茶色をした紅茶がカップの中で踊り、部屋の中に漂っていた紅茶の香りを色濃くさせた。さらに、そこへミルクが注がれて紅茶の色と混ざり合っていく。
自分のために目覚めの紅茶が用意される様子を眺めつつ、フェリシアはベッドへ腰掛ける。『フェリシア』になる前は、こうして誰かが自分のためにお茶を淹れてくれることはあまりなかったため、なんだか新鮮な気持ちだった。
まもなくしてミルクティーが出来上がり、感謝の言葉と一緒にそれを受け取る。一口、口に含むと紅茶の渋みと旨味、ミルクのまろやかさが舌の上いっぱいに広がった。
「ん……ありがとう。すごく美味しい。やっぱりあなたが入れるお茶は美味しい」
「お褒めいただき光栄です。お嬢様のお口にあうよう、特訓を重ねてきたかいがありました」
「わざわざ特訓してたの? そこまでしなくてもいいのに」
執事の言葉に思わず苦笑が浮かぶ。だが、同時にそこまで何かをしてくれることにほんの少しだけ嬉しいような、くすぐったいような気持ちになった。
(ゲームの『フェリシア』も、こういう気持ちを感じたりしてたのかな)
心の中で呟きながら、カップの中に残っているミルクティーをゆっくりと飲み終わり、カップを執事へ返す。
ぐぐーっと軽く身体を伸ばし、フェリシアは穏やかな笑みを執事に向けた。
「ありがとう、おかげで目が覚めたわ。支度をしたいから手伝ってくれる?」
「もちろんでございます」
執事の手を借り、身支度を整えていく。
髪を梳かして整え、派手すぎず落ち着いた上品さがあるクラシカルロリータのようなワンピースに身を包む。
今日から正式に、『フェリシア』としての日々が始まる。
「お嬢様、シャロン様がお見えです」
父に朝の挨拶をし、朝食をとったあと。
光が差し込む廊下を歩いていたフェリシアは、メイドにそう呼び止められて思わず表情が引きつりそうになった。
明日――正確には今日から本格的に行動へ移してきそうだと思っていたが、まさかこんなに早く行動を開始するとは思わなかった。彼の行動の速さに、薄ら寒いものを感じる。
(ちゃんと『フェリシア』として生きていこうって、頑張ることにした初日からこれってちょっと泣きたい!)
心の中で叫びつつ、フェリシアは微かに笑って答える。
「わかったわ。シャロン様は応接室?」
「はい。応接室でお待ちいただいております」
「ありがとう、すぐに向かうわ」
お礼を言ってから、くるりと方向転換して応接室がある方角へと歩き出す。
「お嬢様」
その途中、シャロンが来ていることを教えてくれたメイドに呼び止められた。
なんだろう、まだ何か伝え忘れていたことでもあったのだろうか。
疑問に思いながらも振り返ると、どこかほっとしたような顔をしたメイドと目があった。
「……空元気なのかもしれませんが……お元気そうで、よかった」
一瞬きょとんとして、すぐに理解する。
母が亡くなってからまだ日が浅いためだ、気落ちしているのではと心配されていたのだろう。昨日、葬儀で動揺した姿を晒していたから余計に。
(……『フェリシア』は、本当に大事にされてたんだ。この家の人たちに)
ならば、余計にゲームどおりの結末を迎えるわけにはいかない。
「あまり落ち込んでもいられないから。私は大丈夫だから、お父様を気にかけてあげて。きっと、私よりもお父様のほうがショックを受けていると思うから」
言葉を返し、フェリシアは再び前を向いて歩き出した。
かつ、こつ、と静かな廊下に靴音が響く。
迷いのない足取りで応接室へ向かい、室内へ足を踏み入れる。室内で紅茶を飲んでいたシャロンへ近づいていき、スカートを軽く持ち上げてお辞儀をした。
「お待たせしてしまい申し訳ありません、シャロン様。ようこそいらっしゃいました」
「そんなに畏まらなくてもいいですよ、フェリシア。こちらこそ、朝からすみません」
かちゃん。シャロンが空っぽになったティーカップをソーサーの上へ戻した。
フェリシアは姿勢を正し、彼と向き合うようにソファーへ座る。一体何の用事なのか本題へ入るため、穏やかな笑みを浮かべている彼を真っ直ぐ見つめた。
「それで、シャロン様。本日はどんなご用件でしょうか」
「フェリシア。フェリシアは、スネーウをご存知ですか?」
はた、と一度瞬きをして『フェリシア』としての記憶と『フェリシアになる前の自分』を探る。
確か、スネーウはリズレイ領にある町だ。冬になると雪に閉ざされる静かな町で、温泉地として密かな人気を集めている。ストーリーの主な舞台にはならないが、スネーウ出身の攻略対象のキャラクターがいるため、彼のルートに入ったときはスネーウの町へ行くイベントが発生していたはず。
小さく頷いて返事をすると、シャロンも頷き返して言葉を続ける。
「実は、兄からスネーウでちょっとした催し物が行われていると聞きまして。朝のうちにしかやっていないそうなので、こんな時間からになってしまいますが……一緒に行きませんか?」
「催し物、ですか?」
目をしばたかせ、シャロンの言葉を繰り返す。
「なんでも、スネーウの町にある言い伝え……春を告げる妖精が、朝の間だけ町に現れる日らしくて。その妖精を歓迎するためにスネーウの町では催し物が行われるそうです」
「春を告げる妖精をもてなすための催し物、ですか」
「ええ。興味はありませんか?」
興味があるかないかで答えるなら、答えはイエスだ。
スネーウの町のイベントは、見ていてとても楽しそうだった。見るからにとても寒そうな町だったが、様々なものがきらきらしていて、実際に体験できるなら体験してみたいと感じたものだ。
ただ、シャロンと一緒というのが少々不安だ。スネーウの町があるのはリズレイ領の中だ。自分たちの領土の中で、何かしてくるのではと警戒してしまう。
警戒して断るか、好奇心を優先するか。
「別に、スネーウの町であなたに何かをする気はありませんのでご安心を。純粋にあなたと一緒に出かけたいんです」
ぎくりとする。
今まさに悩んでいたことをぴたりと言い当てられ、フェリシアは心臓がバクバクするのを感じながらシャロンの顔を見た。
先ほどまで穏やかな笑みを浮かべていた彼は、今は少し困ったように苦笑いを浮かべている。
「やはり、その点で悩んでいたんですね。警戒されても仕方ないと、自分でも思いますが」
「……すみません。不用意に殿方と二人きりになるのは避けろと父から教えられているもので」
「仕方ありませんよ、あなたはブレーデフェルト卿にとって大事な一人娘ですから」
困ったような笑顔から優しげな微笑へと表情を切り替え、シャロンは言葉を続ける。
「あなたは僕にとって大切な人です。あなたに嫌われるようなことはしませんので、安心してください」
「……本当に?」
「ええ。誓って、あなたを傷つけるようなことはしません」
そう告げたシャロンの目は、真剣そのものだ。
(……ここまで言うのなら、大丈夫かな)
今のシャロンは、フェリシアからの信頼を得ようとしている。
本来なら、彼は昨日の時点でフェリシアにとって特別な存在になっていた。
だが、フェリシアは彼からの告白を断った。シャロンを自分の傍に置くのを拒んだ。
故に、計画を一部変更して今まで以上にフェリシアと親交を深めようをしている。自ら計画の邪魔になりそうなことをする可能性は低いだろう。
(私がそう信じたいだけのような気もしてきたけど)
数回深い深呼吸をし、フェリシアは少し安心したように見えるよう、微かに笑みを浮かべてみせる。
「わかりました。それでしたら、シャロン様を信じ、そのお誘いを受けさせてもらいます」
「……! ありがとうございます、フェリシア!」
ぱっと花が咲いたように、シャロンは表情を綻ばせる。好きな少女をデートに誘えた少年のように。
何も知らない者から見たら微笑ましい光景だ。実際に室内に控えているメイドたちは表情を緩めてこちらの様子を眺めている。
「では、父に出かけることを伝えてきます。シャロン様、再び待たせてしまい申し訳ありませんが少々お待ちください」
「ああ、なら今のうちに移動手段を用意しておきます。ブレーデフェルト卿へよろしくお伝えください」
フェリシアが立ち上がるのと同時、シャロンも立ち上がる。
すかさず控えていたメイドが扉を開け、フェリシアは彼とともに部屋を出た。
そのようなやり取りが行われたのが、今から一時間前のこと。
あれからシャロンが用意した馬車に揺られて移動し、フェリシアはスネーウの町に足を踏み入れた。
馬車から降りた途端に、ブレーデフェルト領土よりも涼しい空気が肌を撫でる。
少しだけ身体を震わせて、ゆっくりと顔をあげた瞬間――目の前に広がっていた光景にフェリシアは思わず声をあげた。
「わあ……!」
画面越しやイラストではなく、実際に目にするスネーウの町はとても美しかった。
空気は透明で澄みきり、遠くにあるものまでよく見える。並んでいる建物はどこか可愛らしい雰囲気があり、童話の世界を思わせる。それでいて雪や寒さに強い造りをしている。町の中央には噴水――のかわりに、綺麗に磨かれた鐘が設置されていた。
それに加えて、今は催し物の真っ最中だからだろう。あちこちに色とりどりのガーランドや吊り下げ式の装飾が飾られており、童話のような印象を強めていた。
今にも走り出しそうな気持ちを抑えつつ、フェリシアはシャロンへ振り返る。
「シャロン様! お誘いありがとうございます……! 来てよかった……!」
「あはは、どういたしまして。まさかこんなに喜んでもらえるとは思いませんでした」
両目を輝かせてはしゃぐフェリシアの手をとり、シャロンは言葉を続ける。
「ですが、これで満足するのは早いですよ。さあ、行きましょうか」
そういって、シャロンは優しくフェリシアの手を引いて歩き出した。
小さく頷き返し、フェリシアも彼の背中を追いかけるようにして歩き出す。
町の中はとても賑やかだ。人々の楽しそうな声や幼い子供がはしゃぐ声。笑い声や楽器の音色。心を踊らせるさまざまな音がフェリシアとシャロンの鼓膜を震わせた。すれ違う人の中には、まるで妖精を思わせる衣服や装飾を身に着けた者もいる。
人をかき分けるように町の奥に進んでいけば、路上で物を売っている人が増えていく。果物や食べ物、アクセサリー、すれ違った人々がつけていた装飾など、たくさんの物が並んでいる。その中にはスチルで見たことがあるものもあり、ますますフェリシアの心を躍らせた。
そんなフェリシアの様子を見て、シャロンは穏やかに表情を緩める。
「フェリシア、何か欲しいものはありますか?」
「え? えっと……」
わくわくする気持ちのまま、フェリシアは改めて周囲へ目を向ける。
今のフェリシアにとって、どれもが目新しいものでなんでも欲しくなってくる。だが、その衝動のままに欲しいものを口にするわけにはいかない。今の自分は、フェリシア・ブレーデフェルトなのだから。
(『フェリシア』が欲しがりそうなもので、私も欲しいと思えるもの……)
自分と『フェリシア』の好みが一致するもの。それを求めて、フェリシアは視線を巡らせる。
順繰りに露天を一つ一つ確認していき、やがてその中にあった小さなアクセサリーショップに目を止めた。いわゆる露天限定のデザインをしたものを販売しているお店で、子供向けから大人向けまでさまざまなアクセサリーが並んでいる。
(……いいな、あれ)
あれくらいなら、フェリシアが欲しがってもおかしくないかもしれない。控えめなデザインのものを選べば、長く使うことだってできるだろう。
じっと露天を無言で見つめたのち、ゆっくりと手を持ち上げて露天を指差す。
「……あれがいい、です」
「あの露天で売っているものですね」
一つ頷いて、シャロンはフェリシアの手を引いて露天の前まで歩いていく。
露天に並んでいるアクセサリーは、金銀さまざまな素材で作られており見ているだけでもわくわくしてくる。
露天の店主は近づいてきたフェリシアとシャロンに気付くと、わずかに表情を輝かせてから笑みを浮かべた。
「いらっしゃい、シャロン様。今日は可愛らしいお嬢さんと一緒なんですね」
「おはようございます。ええ、この催しを一緒に楽しみたいと思って連れてきました」
店主へそう答え、シャロンはフェリシアの手をそっと離した。
シャロンと店主が顔見知りだったことに驚いていたが、はっと我に返り、フェリシアは軽くスカートを持ち上げてカーテシー式のお辞儀をした。
「お初にお目にかかります。フェリシア・ブレーデフェルトと申します。本日はシャロン様のお誘いを受けて、こちらの催事に参加させていただいております」
深々と頭を下げて名前を名乗り、店主へ挨拶をする。
店主はぽかんとした顔をしていたが、すぐに何か思い出したように声をあげた。
「ああ! ブレーデフェルトって、確かリズレイ様と親しいっていう家か! そこのご令嬢が来てくれたのか、嬉しいねぇ」
「ふふ、シャロン様からこのような催事が行われていると聞いたのは今朝のことでして。間に合ってよかったです」
ゆっくりと顔をあげ、スカートから手を離してフェリシアは店主へ微笑み返す。
店主は嬉しそうに数回頷いたあと、露天に並んでいるアクセサリーへ片手を向けた。
「楽しんでくれているようで嬉しいよ。さ、好きなのを一つ選んでくれ。シャロン様のご友人なら、ちょっとだけ安くしておくよ」
「いいんですか? ありがとうございます」
店主の言葉に思わず目を丸くしたが、フェリシアはすぐにまた笑みを浮かべる。
シャロンの友人というだけで少し値段を安くしてもらえるのは、少々申し訳ない気もするが、ここは遠慮せずに安くしてもらうことにしよう。好意で安くしてもらえるのなら、その好意をありがたく受け取っておくべきだ。
露天の台の上には、いろんな形をしたアクセサリーがずらりと並んでいる。寒い土地らしく雪の結晶をモチーフにしたものから始まり、花や兎、猫、鳥、さらには羽など、たくさんのモチーフがある。アクセサリーの形状も改めて見るとペンダントやアンクレット、指輪、ネックレスなど非常に豊富だ。
ずらりと並んでいる中から、フェリシアは大きめのペンダントトップがついたペンダントを選び、持ち上げる。妖精の羽のような形をしたモチーフが使われた、シルバーペンダントだ。
「それにするんですか?」
「はい。なんだか、これに惹かれてしまって」
フェリシアの手の中にあるペンダントトップは、光を反射してきらきらと輝いている。シンプルなデザインをしたペンダントは、フェリシアが成長したあとでも問題なく身につけることができそうだ。
隣に立っていたシャロンが無言で横顔を見つめてきたのち、優しい手付きでフェリシアの手の中にあるそれを手に取る。
「では、こちらでお願いします。ああ、包装はしなくて結構です」
「わかりました」
当然のように店主へそういい、シャロンは店主が口にした代金を支払う。そして、購入したペンダントをそっとフェリシアの首にかけた。
流れるような一連のやり取りと動作に思わずぽかんとしていたが、はっとしてフェリシアは声をあげる。
「あ、あの、シャロン様! 代金は私が……!」
「気にしないでください。もともと、僕があなたに何か贈りたいと思って声をかけたんですから」
「で、ですが、あなたに支払ってもらうわけには――」
シャロンの手がフェリシアの頬を軽く撫で、次に髪へ指を絡める。
突然のことに驚いて思わず言葉を止めたフェリシアに、シャロンは優しい声で告げた。
「僕にとって大切な人に贈り物をしたかったんです。どうか代金のことは気にせず受け取ってくださいな」
甘い言葉に、甘い仕草。まるでゲームの主人公にするような一連の動作は、フェリシアを照れさせるには十分すぎるほどだった。
みるみる間に顔に熱が集まっていき、ぼんっという音が出そうなほどに真っ赤になる。何か言い返そうと思っても、突然のことに何の言葉も出なかった。
ぱくぱくと数回口を開閉させて、けれど何の言葉も思い浮かばず、最終的にフェリシアはシャロンから距離を取って逃げ出した。
(なんだあれ、なんだあれ、なんだあれ!!)
頭の中で同じ言葉を繰り返しながら、町の奥に向かってひたすらに走る。
背後ではシャロンがきょとんとした顔をしたのち、どこか楽しそうに笑っていた。
人とぶつからないよう、気をつけながら走り続けてどれくらい経っただろうか。
体力の限界を迎え、足を止めて乱れた呼吸を整える頃には、顔に集まっていた熱もすっかり冷めていた。
乱れた呼吸を少しでも早く元の状態へ整えようとしながら、フェリシアは改めて周囲へ視線を向ける。
(思わず走ってきちゃったけど……ここ、町のどの辺りなんだろう……)
先ほどまでいた場所が広場に近いのなら、今フェリシアがいる場所は住宅街に近い場所だ。右を見ても左を見ても、誰かの住居らしき建物がずらりと並んでいる。その住宅一つ一つにも、町中に飾られている装飾がついていた。
改めてこの場所が知らない場所なのだと思い知り、ほんの少しだけ心細くなる。
軽率な自分の行動を反省しつつ、フェリシアは重い足を動かして設置されていたベンチに座った。
呼吸を整えて、足の疲れが取れたら来た道を戻っていこう。がむしゃらに走っていたが、自分がどんな道を通ってきたか大体の風景は思い出せる。来た道を引き返していけば、あの店のところまで戻れるだろうし道中でシャロンと合流できる可能性もある。
少しの間、この場所で休憩をとろう。そう決めて、フェリシアは大きく深呼吸をして透き通った空気を肺いっぱいに取り込んだ。
「……フェリシア?」
ふいに、誰かに名前を呼ばれた。
空へ向けていた視線を動かし、声が聞こえた方向へと目を向ける。
フェリシアが視線を向けた先には、一人の少年がいた。年齢はおそらくフェリシアの四つ上。太陽の光を溶かし込んだような金髪はきらきらと輝き、深い森を思わせる新緑の瞳は丸く見開かれた状態でこちらに向けられていた。
目が合った瞬間、少年はまるで太陽のような笑顔を浮かべた。
「やっぱりフェリシアだ! どうしたんだ? こんなところで。ブレーデフェルト領から出てくるなんて珍しいな」
親しげに声をかけながら、少年はこちらへ近づいてくる。
ぽかんとした顔で少年を見つめていたフェリシアだったが、唇が自然と動き、彼の名前を口にした。
「……レノンフォード様?」
「ああ! 覚えててくれたんだな! 反応がないから、忘れられたかと思って一瞬ひやっとしたぞ」
「すみません、まさかこんなところでお会いできるとは思わず……。本当に久しぶりですね、レノンフォード様」
フラン・レノンフォード。それが、今フェリシアの前にいる少年の名前だ。
アルカナ・ラヴァーズに登場する攻略対象の一人である、《力》のカードを持った少年。代々騎士を輩出してきたレノンフォード家の次男坊で、自身も兄の背中を追いかけるようにして騎士を目指している。茶会に参加したとき、何度か出会ったことがある相手だが、まさかこんなところで再会できるとは思わなかった。
「ああ、久しぶり。風の噂でブレーデフェルト伯爵夫人のことを聞いたが……大丈夫か?」
「このとおり、私は大丈夫です。ご心配ありがとうございます。レノンフォード様はどうしてここに?」
「俺か? 俺は今、遍歴の最中でな。ふらっと立ち寄ったら、ずいぶん面白そうなことをしてるみたいだから滞在してたんだ」
いわれてみれば、確かに今のフランは旅の最中といった格好をしている。シンプルなシャツにカマーベスト、動きやすそうなパンツ。さらにその上から厚手の外套を身に着け、腰に剣を差した姿はまさしくファンタジー世界の旅人だ。
フェリシアがよく知っているフランの格好は、旅人というよりは騎士というイメージを強く抱かせるものだったため、なんだか新鮮に感じる。
「遍歴……? どうしてまた。ご自身の剣の腕を高めるためでしょうか」
「そうそう。この間、兄上に手合わせを頼んだらボロ負けして……それが悔しかったから、いろんなところを巡りながら剣の腕を磨くことにしたんだ」
惨敗した瞬間を思い出したのだろう。フランの表情がわずかに曇る。
だが、一瞬のうちに苦笑いへ変え、彼は頬をかいた。
「情けない話だろ。挑むのは二回目なのに、またボロ負けだなんて」
――かっこ悪いだろ。兄貴に喧嘩を売って負けるなんて。
フェリシアの脳内に、今よりも幼い姿をしたフランが苦笑いを浮かべている様子が再生される。
今よりも昔――フェリシアが『フェリシア』になっていることに気付くよりも前に、同じようなやり取りをした記憶が甦る。
あのときもフランは自分の兄に勝負を挑み、負けた。そして今この瞬間と同じように、苦く笑ってそういったのだ。
確か、あのとき自分はどう返したんだったか。ああ、そうだ、確か――。
「いいえ。情けないとは思いません」
――いいえ。かっこ悪いとは思いません。
脳内に過去の自分の声が蘇る。
昔と同じような言葉をフェリシアが紡いだ瞬間、フランの瞳が大きく見開かれた。
「レノンフォード様はあれからたくさんの鍛錬を積んだのでしょう? それでも負けてしまったのは残念ですし、悔しいことだと思いますが……そんなあなたを情けないとは思いませんよ」
「……」
ぽかんとしたような顔で、フランはフェリシアを見つめている。
数分の間のあと、彼はくしゃりと表情を緩め、そして懐かしそうに笑った。
「……はは、本当にフェリシアは変わらないなぁ」
「そう簡単には変わりませんよ、人は」
「そうかもしれないなぁ。……サンキュー、あのときと同じことを言ってくれて。ちょっと元気が出た」
その言葉とともに、フランはおもむろにフェリシアの頭へ手を伸ばす。
そして、そっと優しく髪に触れて、頭を撫でようとした。
「――何をしているんですか」
直後。きんと冷えた声がフェリシアとフランの耳に届いた。
その声色にぞくりとしたものを感じ、フェリシアはまるで弾かれたように声が聞こえたほうを見た。反対に、フランはゆったりとした動きで同じ方向に目を向ける。
「シャロン様……」
はたして、いつからそこにいたのか。
声が聞こえた方角にはシャロンが立っていた。口元には薄く笑みを浮かべているが、目は全く笑っていない。二人きりのときは穏やかそうな光を灯しているブルーグレーの瞳は、雪空のようにぞっとするほど冷え切っていた。その姿は、フェリシアが『フェリシア』になる前に画面越しに見たシャロンの本来の姿とそっくりだった。
小さく彼の名前を呼ぶ声が、微かに震える。
シャロンはそんなフェリシアをちらりと見てから、大股で距離を縮めてフランの手を強く握った。
「その方は僕の連れですが、彼女に何かご用でしょうか」
「お前は……ああ、そうだ。リズレイ家の奴か」
全身で威嚇をするシャロンとは対照的に、フランはいつもの調子を崩さない。
穏やかに、落ち着いた雰囲気でシャロンをじっくり観察したのちに、そっと彼の手を振り払った。
ほんの微かにシャロンの眉間へシワが寄る。
「ええ、僕はリズレイ家の者ですが。それよりも先に僕の質問に答えてくれませんか」
「悪い悪い。別に絡んでたわけじゃねぇよ、昔馴染みの姿を久しぶりに見たから、ちょっと思い出話に花を咲かせてただけだ」
「……本当ですか?」
ちらり。シャロンの瞳がこちらへ向けられる。
声を出さずに何度も頷いて、フェリシアはフランの言葉を肯定する。別に何かやましいことをしていたわけでも、対応に困ることをされていたわけでもない。本当に、懐かしい人と出会って話をしていただけだ。
(……というか、なんでこんな一触即発みたいな雰囲気になってるの?)
自分はただ、フランと出会って話をしていただけなのに。シャロンがこんなにも不機嫌になる理由なんて、どこにもないはずだ。
フランと話していることが気に入らなかった?
それとも、フェリシアがシャロンから逃げたのが実は気に食わなかった?
考えても考えても、答えに辿り着ける気がしない。とにかく、何故こんなにもシャロンが不機嫌になっているのか、フェリシアには理由が全くわからなかった。
シャロンは無言でフェリシアを見つめていたが、やがて何かを吐き出すように深く長く溜息をつき、手を下ろした。
「なら、別にいいんです。驚かせてしまいすみませんでした」
「いやいや、こっちこそ紛らわしいことをして悪かったな。二人で出かけてたところを邪魔しちまったみたいだし。俺はそろそろ行くよ」
その言葉とともに、フランはゆっくりと立ち上がって衣服を軽く払った。
数歩前に歩いてベンチから距離を取り、未だに座ったままのフェリシアと警戒する目を向けているシャロンへ振り返る。二人の顔を黙って見つめたのち、彼はぱっと太陽を思わせるように笑った。
「じゃあな、フェリシア。また会ったらゆっくり話そうぜ」
「え、ええ……お気をつけて。レノンフォード様」
フランがぶんぶんと手を振り、フェリシアもゆっくりとした動きで手を振り返す。
満足そうに一つ頷いて、フランは軽い足取りで人通りが多いエリアへ続いている道を歩いていった。
完全に彼の背中が見えなくなったころ。シャロンはさまざまな感情を全て吐き出そうとするように、もう一度長く息を吐き出す。その瞬間、先ほどまで彼がまとっていた極寒の大地のような雰囲気が霧散してフェリシアへ目を向けた。
こちらを見るブルーグレーの瞳は、普段フェリシアへ向けられている穏やかなそれだ。
「フェリシアもすみません。驚かせてしまって」
「い、いえ……お気になさらず。それよりも、突然走り出してしまってすみませんでした」
「いえいえ。照れているあなたも可愛らしかったですし、こうしてすぐに合流できたので気にしてませんよ。……ところで」
わずかに首を傾げ、シャロンは続ける。
「先ほどの方はどなたでしょうか。あなたとの距離が妙に近かったように感じますが」
フェリシアの脳裏に、先ほど見たシャロンの姿がもう一度浮かぶ。
どこまでもきんと冷え切った瞳。普段とは大きくかけ離れている姿。それらは思い出すだけでも、フェリシアの心を震え上がらせるほどの力がある。
それらがもたらす恐怖を呑み込み、フェリシアは答える。
「フラン・レノンフォード様というお方です。過去に何度か私の家でお会いしたことがあるお方でして……まさか、こんなところで出会えるとは思わず、つい話し込んでしまいました」
「ふむ……本当にただの昔馴染みといった感じなんですね」
呟くように口にし、シャロンは口元に手を当てて視線を彷徨わせた。
無言で何やら考え込んでいたが、やがて彼の中で結論を出したらしい。ふぅわりと笑い、そっとフェリシアの手をとった。
「あなたが良からぬ輩に絡まれているわけではないのならよかった。ですが、せっかく僕と一緒に出かけているのに、他の人に目移りしているのは少々気に入りませんね」
「え? え、いや、その、レノンフォード様は別にそのような目で見ている方では」
シャロンは何やら勘違いしているのかもしれない。確かにフェリシアにとって、フランは親しい相手だ。だが、特別な相手ではないし、これから先もそのような目で見る予定はない。
そのことを伝えようとしたが、シャロンはフェリシアよりも早く口を開いた。
「ええ、ええ。なんとなくわかっています。これは僕の気持ちの問題です」
「……シャロン様の、気持ちの問題?」
「はい」
一言、短い言葉で返事をしてから。
「大切な人が他の男に目を向けているのは、どうしても気に入らないんですよ」
相手に好意を持っているとはっきり告げる言葉を、シャロンの唇が紡ぎ出す。
アクセサリーを買ってもらったときと同じように愛を感じさせる言葉を告げられ、再びフェリシアの頬にかっと熱が集まった。
これは嘘だ。フェリシアにシャロンへの好意を抱かせるための嘘。わかっている。シャロンは本当にフェリシアのことを好いているわけではない。
そのことはよくわかっている――わかっているが、それでも彼の言葉に照れてしまう。
(さすがは乙女ゲームの攻略対象……うっかり勘違いしそうになる……)
顔をあわせるたびにこんな言葉を告げられていたのなら、『フェリシア』がシャロンを好きになっても仕方なかったのかもしれない。かといって、自分まで同じ道を辿るつもりはないけれど。
何度も自分に言い聞かせて、勘違いしそうになった気持ちを落ち着かせていく。
次第に浮かれたような気持ちは冷えていき、いつもの平常心が戻ってくる。最後に深い呼吸をし、フェリシアは口を開いた。
「……そんなことばかり。勘違いしてしまいますよ」
「別に、勘違いしてもいいし、むしろしてほしいと思ってますよ。僕は。……わかってましたが、ガードが固いですね。あなたは」
「あら。別に普通だと思いますが」
シャロンが肩をすくめ、どこか残念そうに笑う。
そんな彼に対し、フェリシアは目をぱちくりとさせてから悪戯好きの子供のように笑った。
こちらはシャロンに落ちてしまったら不幸の未来が確定する身だ、そんな簡単に落ちてやらないし彼に落ちるつもりもない。
シャロンは少し物申したげな顔でフェリシアを見つめ、やがて苦笑いを浮かべ、もう一度フェリシアへ手を差し出した。
「まあ、この話はこれくらいにしておきましょう。フェリシア、手を。もう一度お祭りを巡り直しましょう」
「……ええ。一度仕切り直しといきましょうか」
差し出された手に自分の手を重ね、もう一度彼と手を繋いで歩き出す。
思うところはいろいろあるけれど、朝はすぐに過ぎていく。今は一旦置いておいて、楽しまなくては損だ。
二人でさまざまな露天を巡り、普段は口にできない料理やお菓子を口にし、遊戯を提供している露天では遊戯を楽しむ。一度仕切り直して、シャロンとともに巡る催事は楽しい時間になった。
ブレーデフェルト領内ではなかなか見ることができないものは、フェリシアの好奇心や興味を刺激する。ずっと隣にいたシャロンも似たようなものだったのだろうか、露天を巡っている間、彼は心底楽しそうな顔で笑っていた。
「はあ……本当に楽しい時間だった」
「そうですね……僕も、ちょっとはしゃぎすぎてしまったかもしれません」
昇った太陽がわずかに傾き、朝から昼に移行すると同時に催事は終わりを迎えた。
飾り付けられていた装飾やガーランドは少しずつ取り外され、道端や広場を賑わわせていた露天も撤収が始まっている。短い時間の催事から日常へ、町は少しずつ戻っていく。
その様子を横目に歩き、フェリシアはシャロンとともに馬車が待っているほうへと歩を進めていた。片手は相変わらず繋がれたままだが、空いているもう片方の手にはお互いに今回の催事で得たものが詰まった紙袋が握られている。
(ちょっと買いすぎちゃった気もするけど……みんな、喜んでくれるかな)
スネーウの町で作られているパンにクッキー。特産のお茶。屋敷で待っているであろうメイドや執事たち、そして父親のためにお土産として買ったものは全部スネーウの町でしか手に入れられないものだ。
(……これで、お父様も少しは元気になってくれるといいんだけれど)
フェリシアの脳内に、父、バロン・ブレーデフェルトの姿が思い浮かぶ。
最愛の人である母を亡くしてからの彼は、悲しみを忘れるため、とにかく仕事に打ち込む人になってしまうはずだ。その結果、『フェリシア』は父と過ごす時間がほとんどなくなり、常に寂しさを抱えてしまうことになる。結果、それを癒やしてくれるシャロンにのめり込んでいくようになってしまった。
フェリシアがゲームの『フェリシア』と同じ結末を辿らないようにするためには、シャロンから距離を取るだけでなく父のケアもしないといけない。
それに何より、今は自分の父である人が落ち込んだ顔をしているままというのは、純粋に心配になる。
「……ブレーデフェルト卿のことが心配ですか?」
「!?」
今、まさに考えていたことをぴたりと言い当てられた。
驚き、目を見開いてシャロンを見る。彼はフェリシアの反応を見て、くすくすと笑ってから自分の眉間を軽く指差した。
「シワ、寄ってましたよ」
「う……顔に出てましたか……。いや、でも、どうしてそこから父のことを考えていたと」
「おや、本当にブレーデフェルト卿を心配していたんですね」
「!」
鎌をかけられた――!
フェリシアは大きく目を見開く。
対するシャロンは心底楽しそうな笑みを口元に浮かべたまま、言葉を重ねた。
「本当に……フェリシアは優しい人ですね」
「い、いえ……傷ついているのは私よりも父のほうだと思いますから」
今も父は全てを忘れようとするように、仕事に集中しているはずだ。
今回の外出で得たお土産で、少しでも彼の悲しみを和らげることができたらいいのだが――考えながら、小さく溜息をつく。
「現在のブレーデフェルト卿のご様子は?」
「無理に母のいない悲しみを紛らわそうとしているのか、仕事に打ち込んでいる時間が長くなっています。あれでは心身ともに悪い結果に繋がりそうなので、見ていて心配になります」
「それはそれは……心配ですね」
シャロンに父の様子を問いかけられ、正直に答える。
すると、シャロンは困ったように苦笑いを浮かべて人差し指で頬をかいた。
葬儀会場では落ち着ききっていたように見えた父だ。まさか、そのような状態になっているなんてあまり予想できなかったのだろう。
フェリシアも釣られるように苦笑いを浮かべ、見えてきた馬車の前で足を止める。
シャロンがすかさず御者に声をかけ、戻ってきたことを知らせると馬車の扉を開いて先に乗り込んだ。
「このままでは倒れるまで無理をしそうなくらいの勢いで……どうにかして、息抜きをさせたいところなんですよね」
「それでしたら、僕から父上に頼んでおきます。ブレーデフェルト卿を休ませるような提案をしてほしいと。……フェリシア、お手を」
「……ありがとうございます、シャロン様。お願いします」
今日の間に何度も繰り返された手を差し伸べるという行為。差し伸べられたシャロンの手に自分の手を迷わず重ね、フェリシアは彼の手を借りながら馬車の中へと乗り込んだ。
シャロンの父はブレーデフェルト家に恨みがある。そのことを考えると、リズレイ家にサポートをしてもらうのは少々恐ろしい。だが、ここで彼の提案を断ったら不審がられる可能性もある。表向きは、ブレーデフェルト家とリズレイ家はとても仲が良い家だから。
リズレイ家は全体的に慎重に事をすすめる傾向にあるはずだから、このタイミングで行動を起こすことはないだろう。そう思いたい。
まもなくして、動き出した馬車に揺られながらフェリシアは心の中で溜息をついた。
(ゲームと違って、現実に起きていることだから……これで本当に合っているのか、どうしても不安になっちゃうな)
選択肢を間違えてしまっていた場合に待っている未来を想像するだけで、怖くなる。
「……フェリシア? どうしましたか?」
「あ……い、いえ。なんでもありません。父が喜んでくれるか少し不安になっていただけなので」
シャロンに声をかけられ、はっとする。
しまった。おそらく顔に不安げな表情が出てしまっていたのだろう。目の前にいる彼は人間をよく観察して、物事を考えるタイプの人なのだから気をつけなくてはならない。
慌てて言葉を返して取り繕うと、シャロンは一つ頷いてから口を開いた。
「きっと喜んでくれますよ。どれもフェリシアがじっくり考えながら選んだものです。ブレーデフェルト卿も、娘からの贈り物を喜んでくれるはずです」
「そうだといいのですが……。ありがとうございます、シャロン様」
元気づけようとしてくれるシャロンの言葉に、ふ、と笑みが浮かぶ。
正面に座っているシャロンも釣られるように笑みを浮かべ、視線を窓の外へ向けた。
(……普通にこうして接することができたら、良い友達になったのかもしれないのに)
口に出さずに呟き、フェリシアも同じように窓の外へ視線を向けた。
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