ロワーレ王国へ!
「さてと……」
ロワーレ王国訪問当日。
アスタルテ達は出発する準備をしていた。
「……家の周りに…結界…張ってきた……」
「よし、それじゃあ準備は完了だね」
レーネとノレスが結界を確認し玄関にいるアスタルテ達の元へ合流する。
「明日には戻ってくると思うけど、その間チリアとレニーをお願いね」
「分かった」
アスタルテの言葉にクロは頷く。
「そこらの者では到底突破できぬ結界も張っておるし、長期間離れるわけでもないから心配しなくとも大丈夫じゃ」
「うん……」
「むしろこやつを相手する侵入者の方が気の毒なくらいじゃ」
「……確かに」
無表情でこちらを見つめるクロにアスタルテは苦笑する。
「クロ、殺意を持って近づく人以外は殺しちゃったらダメだからね!」
「分かった」
「クロだけじゃ対処できない事態になっても命最優先だからね、絶対助けに行くからそれまで待つんだよ?」
「分かった」
「あとは……えぇっと……」
「心配しすぎじゃろうて……ほれ、さっさとゆくぞ」
心配性に見かねたノレスはアスタルテの手を掴み馬車へと引きずる。
「うぅ……それじゃあ、行ってきます!!」
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
「ここがロワーレ王国……」
目的地へと到着したアスタルテは辺りを見回す。
(流石首都というだけあってめちゃくちゃ広いし人が多い……!)
どこに目を向けても人が視界に入る程ロワーレはごった返していた。
アスタルテが周りを眺めていると、レーネが軽く手を叩く。
「さて、まだ時間はあるし何か食べに行こうと思うんだけど、何か食べたい物の希望はあるかい?」
「ウチは肉だな!」
「……油少なめ…野菜多め…」
レーネの提案にゼルとコトハは間髪入れずに答える。
「ノレスとアスタルテ君はどうかな?」
「我はなんでも構わん」
「うーん……私もお任せします!」
2人の話を聞いたレーネは顎に手を当てる。
「ふむ、それならそこの食堂にしようか」
レーネが指を差した先には庶民食堂といった雰囲気の定食屋があった。
早速食堂へと向かおうとする一行だったが、前に人が立ちはだかる。
「おい、お前」
その人は突然出てきたかと思えば、レーネに話しかける。
(なんなんだこの人……)
アスタルテは多少不快感を感じつつも、その姿を確認する。
その男性は成人したくらいの若さで、服装はキラキラと無駄に散りばめられた宝石で飾られていた。
つり目なのと表情の雰囲気から、自分に絶対の自信を持っている傲慢タイプだとアスタルテは予想する。
「私に何か用だろうか?」
レーネは一瞬戸惑いの表情を浮かべたものの、すぐに冷静を取り戻し返答する。
すると男性は衝撃的な言葉を発した。
「いくらだ?」
その言葉に一同がフリーズする。
「え、何が?」
何に対しての値段を聞かれたのか意味不明だったアスタルテがノレスに問いかけるが、ノレスから答えは返ってこなかった。
「このゲス野郎は……捻り潰しても良いかのう……」
「ちょっとノレス!? どういうこと!?」
わなわなと震えるノレスを抑えるアスタルテだったが、依然としてなぜこうなってしまったのかが分からない。
すると、レーネが男性に向かって口を開いた。
「私は娼婦ではない。 速やかに私達の前から消え失せろ」
ハッキリと力強く発せられるレーネの言葉にアスタルテは惚れ惚れとするが、言葉の意味を理解して一瞬で我に返る。
「はぁ!? あいつ何言ってんの!?」
レーネの言葉を聞いた男性はその圧からすぐに消えると思われたが、驚くことに言葉を続けた。
「んな事は恰好で知ってるよ、だから金をいくら払えばいいのか聞いてるんだろうが」
「おい、てめぇいい加減にしろよ!」
「……今すぐ…消えて……不快…」
男性の言葉を聞いて、怒りの表情を浮かべたゼルとコトハが二人の間に割って入る。
「はぁ? 俺が誰だか知っててそんな口きいてんのかよ?」
「ウチがお前なんか知ってるわけねぇだろうが!」
「……気色悪い…本気で…消される前に消えて…」
Sランク冒険者であるゼルとコトハの言葉にもけろっとした表情の男性はこちらをチラっと見ると、再び口を開いた。
「お前らが嫌だってんなら、別に後ろのガキでもいいぜ?」
「……おい」
男性の言葉に、沈黙していたレーネがドスの効いた声を出す。
「最後の警告だ。 私達の前から直ちに消えろ、私が理性を失う前に」
「チッ……」
レーネのただならぬオーラに流石に怖気づいたのか、男性は舌打ちと共に背を向けた。
「後悔することになるからな、ブス共が」
────ブチッ
「ぶん殴る」
「ま、待て! 抑えるんじゃアスタルテ!」
男性の言葉に、アスタルテの堪忍袋の緒が切れた。
しかし、ノレスによってアスタルテは止められてしまう。
「ノレス、どうして!!」
「奴はこのロワーレ王国の息子じゃ」
「え……? それってつまり……」
「皇太子じゃ」
「はぁ……?」
ノレスの言葉にアスタルテの開いた口が塞がらなくなる。
え、あれが?
あの礼儀知らずであの言動のあの輩が……。
この国の皇太子……??
「本気で言ってる?」
「残念ながら本気じゃ」
「はぁ~~~……」
アスタルテは頭を抱えて項垂れる。
あんなのが皇太子だなんて、この国は一体どうなってるんだ……
「気分を切り替えて……は厳しそうだ。 これは食事どころじゃなくなっちゃったね……」
重い気分になったまま王城へと向かう事になったアスタルテ達であった──────。
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