コトハさんと……
「あの……コトハさん?」
「……なに?」
お姫様抱っこをしながら廊下を歩くアスタルテはコトハに問い掛ける。
「まだ朝ですけど……お出かけとかは…」
「……しない」
「で、ですよね…」
「……予定では…お風呂に入ってる時間も…一緒になるはずだった…のに…」
「…?」
コトハの言葉を聞いたアスタルテは首を傾げる。
(あれ…? 起きてからずっとコトハさんと一緒にいたはずだけど…?)
意味がよく分からなかったアスタルテだったが、自室に着いたので考えるのを辞めた。
「えっと…お酒とか飲みますか?」
「……いらない…それよりも…ベッドに降ろして…」
「あ、はい! すぐ降ろしますね……ってうわ!?」
コトハをベッドに降ろすや否や、コトハはアスタルテの首に回していた腕でアスタルテの頭を引き寄せ────
そのまま横に投げ飛ばした。
「こ、コトハさん!? いきなりどうしたんです……ぐぇっ!」
訳が分からず起き上がろうとしたアスタルテだったが、思いもよらない速度でコトハに馬乗りにされる。
「あの、コトハさ…んん!?」
とりあえず一旦落ち着こうと思ったアスタルテだったが、続けて襲いかかって来たのはコトハの小さい舌だった。
慌てたアスタルテは鼻で呼吸する事を忘れ、酸欠状態になってしまう。
「こ…コトハさん…色々と急展開すぎ…ますよ…」
「……大丈夫…ここからは…ゆっくりだから…」
そう呟いたコトハの手には見覚えのあるスキルカードが握られていた。
それをアスタルテのお腹にかざす事により……
「……わ…これは…ご立派…」
コトハが魔力を込めすぎたからなのか、そこには過去1番の凶悪なモノが鎮座していた。
「……大丈夫…いける…」
「いやいやいや無理ですって! こんなの明らかにキャパオーバー……ひゃん!」
焦るアスタルテをよそに、コトハは一気に飲み込んでしまった。
「くっ、ふ……コトハさん、これ…長く持たないかもです…」
「……大丈夫…ここまで来たら…もう…動かない…」
「……え?」
コトハはアスタルテに向かって身体を倒すと、ふぅっと一息つく。
「えっと、動かない…とは…?」
「……アスタルテ…こういうのは…量より質…今から少しずつ……ゆっくりじっくり…昇っていく…」
「つ、つまり……」
コトハの言葉を聞いたアスタルテは青ざめる。
焦らしプレイ……いや、下手したらそれよりタチが悪いんじゃないか……!?
「……アスタルテ…勝手に動いちゃ…だめ…」
「え…!? そう言われましても…」
動こうと思っていたわけではないのだが、無意識に身体が動いてしまっていたらしい。
(でも…本能的に勝手に動いちゃうよこれ…!)
「……良いこと…思いついた…」
「えっと…なんでしょうか…?」
この状況でコトハが思う良い事は、アスタルテにとっては悪い事でしかないのではないだろうか……
アスタルテは冷や汗を垂らしつつコトハの動向を見守る。
「!?」
すると、コトハはアスタルテの背中に両腕を回してガッチリと抱き着いてきた。
「……こうやって…一体になれば…アスタルテだけで…動けない…」
「あわわ……」
コトハとピッタリくっついたことで、コトハの鼓動や息遣いがアスタルテの脳へと伝播する。
(しかも…なんだろうこれ…拘束されてるのが苦しいはずなのに…)
「……んっ…アスタルテ…凄く興奮してきてるの…分かる…」
「コトハさん…私、このままじゃ理性が…」
「……頑張って…耐えて…耐えれば耐えるだけ…反動が強くなる…から…」
これはもはや拷問だ……
そう感じたアスタルテは、全てをコトハに委ねるのであった────
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「やっと来たか……我の番が…」
自室で暗闇の中椅子に座っていたノレスは、不敵な笑みを浮かべて立ち上がる。
「本当に長かったのう……しかし、遂に我の悲願が果たせるかと思うと…クククッ、笑いを堪えられぬわ」
ノレスは感情と共に魔力が高まっているのに気付き、深呼吸をして落ち着く。
「おっといかんいかん……せっかくここまで来たのに奴らに感付かれてはまずいからのう。 奴らが干渉することなくアスタルテと二人きりになれるんじゃ、辛抱せねば……」
ノレスは冷静さを取り戻すと、いつもと変わらぬ顔で部屋から出るのであった────
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