カヨとクロ




アスタルテがクロと対峙していた時、レーネ達3人はカヨと戦っていた────




日々成長していくコンビネーションで着々とカヨを追い詰めていた。




「何度来たって結果は変わらない、私達はどんどん強くなっている!」




言葉と共に放った斬撃がカヨを大きく吹き飛ばした。




「チィ…!こイツぁ本当ハのれスに使う予定だったンだが…仕方ネエ!」




そう言うとカヨは懐から黒い木の実のようなものを取り出し、パクリと食べた。





「……あれは…!」

「コトハ、あれがなんなのか知ってんのか!?」




コトハが冷や汗を垂らし、静かに語りだす。




「……あれは…ステータスを底上げする木の実…身体への負担が余りにも大きいから…栽培も販売も禁止されているはず……」

「なっ…!し、しかし木の実一個だろ!?その程度なら……」




ゼルの言葉に、コトハは首を振る。




「……あれは昔、数十倍…数百倍に薄めた物をほんの少し…舐める程度で飛躍的な効果があった…それこそ、木の実一つで数百の兵士が手を付けられなくなったくらい……」




それを聞いたゼルは驚愕する。




「そ、そんなもの存在していいものなのかよ!?」

「……だから禁止されたし、木ごと全て焼き払われたはず……でも、何処かに残っていた……」

「ふむ…なるほどね…」




今まで静かに聞いていたレーネが口を開く。




「木の実一つを食べた場合はどうなるんだい?」

「……確か書物では、一人の兵士が食べて……自分のエネルギーが膨れ上がって抑えられず……そのまま死亡したらしい…」

「ふむ、しかしカヨはそこらの兵士とは違うからね…」

「でも確かあいつ、全てを無力化する胃袋持ってんじゃなかったか!?」

「無力化する前に作用しているのかもしれないね…」




レーネの考察に、ゼルが怒る。




「んなの、都合が良すぎんだろう!」

「……だからこそ、持たされてたのかもしれない…」

「チッ!じゃあどうすんだ!めっちゃ薄めたやつ舐めるだけでやべぇものを丸ごと喰ったやつなんかウチらでも倒せねぇぞ!」




「───いや、すぐに倒す必要はないじゃろう」




後ろから聞こえる声に、三人は振り向く。




「ノレス、カヤ!!と、SSランクの……」

「そういえば挨拶がまだでしたわね、SSランクのマギルカといいますわ」




そういえば三人は大量の変異種と戦っていたんじゃなかったっけ…?

そう思ったゼルが視線を後ろへずらすと、もう既にそこには死体の山が積み重なっていた。




「すぐに倒す必要がないというのは?」

死屍累々の光景に驚くゼルをよそに、レーネがノレスに問う。




「木の実の効果を受けるのであれば、それと同様に身体への負担もあるじゃろう。ましてやあやつは丸々一個喰ったんじゃ、そう長くは持たんじゃろうな」

「……つまり…攻撃に耐えて…効果が切れて弱った所を…叩く…」




「耐えるったってよ……あああもう!こうなりゃヤケだ、やってやるぜ!」



















▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

















「!?」




カヨから発せられる尋常ではない気配に、思わずアスタルテは振り向く。




「え…?」

アスタルテは自分の身体に違和感を抱き、そして驚いた。






─────冷や汗…?





アスタルテは額から流れた雫を指で掬い、その濡れた指を見つめる。




(冷や汗なんて、最近かく事無かったのに…)




この光景に衝撃を受けていたアスタルテだったが、ハッと我に帰り両手にガントレットを召喚する。




「皆が危ない!」

「キミの相手は私だよ…」




アスタルテが走り出そうとしたその時、クロがどこからともかく出した投擲物を投げる。




「くっ…!」

咄嗟にガントレットでキャッチしたアスタルテは、クロが投げた投擲物を見て疑問を浮かべた。





「手裏剣…?」




アスタルテがキャッチしたそれは、手裏剣のようでどこか違うものだった。




ドーナツのように穴が空いたその円盤は持つところが無く、円の外側は鋭く研がれていた。




(なんだっけこれ…何かのゲームであったような……チャクラム…とかなんとか…?)





「私の円月輪を防いだのはキミが初めてだよ」




え、えん…なんだって…?





「ともかく!今あんたの相手をしてる場合じゃないんだ!」




アスタルテは叫び、力任せにその円月輪とやらをクロに向かってぶん投げる。




しかし、真っ直ぐに飛ばしたはずの円月輪は途中で斜めに傾いたかと思うと、そのままあらぬ方向へ飛んでいってしまった。





「この武器は、こう投げる物」




クロが小さく呟き、人差し指を輪に通してくるくると回し始める。




そしてサイドスローのような投げ方で円月輪を指から飛ばした。

すると、円月輪は目にも止まらぬ速度でカーブを描きながら一瞬でアスタルテの元へと到達した。




「…!?危な!」




アスタルテはそのステータスによる圧倒的な素早さでそれを紙一重で避けた。





「キミ、やっぱり強いね」




いつの間にか指に戻ってる円月輪をくるくる回しながらクロは呟く。





(皆の所へ助けに行きたい…けど、そうしたらあの武器の矛先が皆に向きかねない……クエンの様子だって気になるし……)




上手くかみ合わない事にイライラしたアスタルテは思わず歯を噛み締める。





「とにかく速攻で倒す!それから後の事を考える!」

「そうはさせない」





フードの奥で光るの目が、アスタルテを鋭く見据えるのだった────







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