全ての原因




「皆集まったな」




騒動が落ち着き、家へと帰ってきたアスタルテ達はリビングの席に着いた。

理由はノレスから大事な話があると言われたからだ。




皆が集まっているのを確認し、ノレスが口を開く。

「今回の事件の首謀者、変異種が急増した理由等、全ての原因が分かった」




「「!?」」




ノレスの言葉に、その場にいた者が驚く。




「その首謀者ってまさかそいつじゃねぇだろうな?」

ゼルがカヤを睨みつけ、ノレスに問う。




「いや、こやつではない今回の首謀者それは……」




ノレスが言葉を溜め、やがて続きを言う。





「────魔族だ」





その言葉に皆はまた驚いた。




「魔族…それは確かかい?」

レーネが確認のため、ノレスに尋ねる。




「うむ、首謀者の名前はクエンといい、我の部下だった者だ」




「ちょ、ちょっとまって!」

アスタルテにとある疑問が浮かび、ノレスの話を止める。




「ノレスって魔王なんでしょ?なのになんで部下の人が勝手に計画してるの?」

普通、魔王を差し置いて勝手な行動を取るのはおかしい…

アスタルテにはどうしてもそれが疑問だった。




「あやつは我がいないのをいいことに、自らが新たな魔王として勝手に活動しておるらしい」

「留守してる間に裏切って魔王を乗っ取ったって事?」

「そういう事じゃ、そして奴の狙いは……世界の支配じゃ」




「お、おいおい…なんでだよ、意味わかんねーぞ…」

「ふむ…中々大変な事になりそうだね…」

「……世界が…危ない…?」




混乱している三人の横で、アスタルテも頭を抱えていた。




「そのためにクエンが作り出したのが変異種じゃ」

「えっ!?」




アスタルテは声を上げる。

最近やけにダンジョンで見かけるようになった変異種…そしてカンの町に現れた変異種達……




「まさか…」

「うむ、最近のダンジョンでの変異種出現そして町の襲撃…全てヤツの仕業じゃ」




衝撃の告白に、一同は固まってしまう。




しかし、ゼルはある疑問を覚え口を開いた。




「って事は、そいつが関わっているって事か!?」

ゼルはカヤを睨みつけ、立てかけてあったバスターソードに手をかける。

しかし予想していたかのようにノレスはゼルの手を抑える。




「まぁ待て、こいつの話を聞いてやれ」

ノレスがカヤの方を見ると、カヤはおずおずと話し始めた。












▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲














「ふん、納得いかねぇな」

ゼルが足をテーブルに投げ出し、腕を組む。




「お主の気持ちも分かるがの、これは間違いないじゃろう。それとも我が信用できぬか?」

ノレスがゼルに問いかける。




「お前とはそこそこ長い付き合いだし信用してるがよ、どうもなぁ…」

「なにか気になる点があったのかい?」




ゼルの様子が気になったのか、レーネもゼルの言葉に耳を傾ける。




「あいつの喋り方がどうもうさんくせぇんだよ!」

「……ゼル…それは偏見…」

「えぇ…私の喋り方のどこが胡散臭いんですかぁ?」

「その語尾をいちいち伸ばす言い方だよ!」




ガヤガヤと盛り上がっているのを他所に、アスタルテはカヤの話を頭でまとめていた。




カヤの話はこうだ。

クエンという魔族がノレスの席を乗っ取ったが、カヤはそれに満足していなかった。

ノレスが帰ってきたらすぐに伝えようと思ったが全然帰ってこず、計画がどんどん進行していく。

居てもたってもいられなくなり、魔界から抜け出そうとするが見つかり失敗。

昔から事あるごとに自分を見下してくる双子の姉を監視に付けられ、カンの町崩壊作戦に強制参加。

町の様子を見に行かされた際にノレスに遭遇。

監視があるため全てを素直に話すわけにもいかず、戦闘を行い負けた時に全て話すと。





(う~ん…なるほど…)




まぁ本当かどうかは分からないけど、一応警戒しとくに越したことはないだろう…




「……ところでカヤさん…?」

「なんですかぁ?アスタルテ様ぁ…」

「えっと…なんで様付け?あとなんで腕にくっついてるんですか…?」




ついさっきまでゼルさんと口論していたはずなのにいつの間に来たのか…




「私より強くて素敵な方には様を付けるのが私の常識なんですよぉ」

「そ、そうですか…出来ればやめてほしいんですが…」

「それは私自身が許せないので駄目ですねぇ」

「は、はぁ…それでこの腕は一体…?」

「それは勿論好きな方の傍にずっといたいじゃないですかぁ?」

「なんで!?」




カヤの言葉に思わずアスタルテは後ろへ飛び退く。




するとカヤは赤面しクネクネしだした。




「アスタルテ様の素敵な拳ぃ、あれが私の心に突き刺さったんですよぉ…」

「は…?」




何を言ってるんだこの人は…?




アスタルテが困惑していると、ノレスが肩を叩く。

「こいつは真性のドMじゃからな…これはめんどくさいことになったぞ」

「はぁ!?」

「アスタルテ様のような小さい方に力で組み伏せられてぇ、一切身動きが取れない状態で気を失うまでぇ…いや気を失っても強引に叩き起されてぇ…そのまま永遠に責め続けられたいぃ!」

「えぇぇ…」




流石のアスタルテもドン引きだった。




「…私はどちらかというとそんなアスタルテさんを屈服させたい…」

ボソッとレニーが呟き、他の人も考え始める。




「私は純愛派かな?お互いに愛し合いとろけ合いたいね…」

「……私は…責められたい…かも…」

「ふむ、我は責めたいのう」

「わっちは責められたい…って、にゃに言ってるのにゃわっちは!」

「お、おおお前ら!こんな時になんて事想像してんだ!」

「……ゼルのむっつりスケベ…」

「コトハ!てめぇ!!」





なんでこんな事になったんだ…?

こんな緊急事態時なのに…と思う反面、それぞれの言葉を少し想像をしてしまって思わず顔を伏せるアスタルテだった────



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