アスタルテ大人バージョン
「そういえば…」
リビングでぼーっとしていたアスタルテはふとあることを思い出す。
(
アスタルテが念じると、視界に様々な項目が現れた。
その中の日常スキルの欄に注目する。
「ええっと…あ、これだ」
アスタルテが選択したのは、滅一撃などと同時期に覚えたスキル、状態変化~成人~ だった。
アスタルテは自身が持つ神の加護というスキルによって身体が成長せず、寿命というものも存在しない。
そのせいもあってか、200歳というとんでもない年齢にも関わらず容姿は幼いのだ。
といっても実際アスタルテとして生き始めたのは200歳からなのだが…
(う~ん、このスキルってもしかして神の加護が無かった場合の姿になるのかな…)
200歳ともなると、人間ならまず生きていないだろう。
しかしアスタルテは神と悪魔のハーフなので、本来寿命も長いはずだ。
一般的にこの世界では、種族にもよるが多くの人が長生きする。
魔族だと500歳ほどで、ノレスのような高位な者は平気で千年とか生きるそうだ。
あとはコトハさんのようなエルフ族も非常に長生きするらしい。
他にも竜族やドリアード族などなど、とにかく多くの種族が長生きして当たり前の世界である。
(そう考えたら、人間ってかなり非力なんだな…)
長生きしても100年ほどで寿命を迎え、30歳を超えると体力が落ち始め、50歳を超えると激しく動き回る事が辛くなってくる。
他種族と異なり見た目も老けやすく、身体に一太刀の傷や弓矢を1本食らうだけで致命傷になりやすく人為的な手当てを行わなければそのまま死に至ってしまうことだってある。
アスタルテが詩憐で地球にいた時はそれが当たり前で何の違和感も無かったが、この世界に来て様々な種族を知ると、人間がいかに脆いかを思い知る。
「って、なんでこんな事を考えてるんだ私は…」
そうだ、200歳相応の見た目がどうなるのかだ。
いきなりおばあちゃんになったら動揺されかねないので、リビングにいる皆に声をかける。
「ふむ、変身魔法のようなものだろうか」
「そういや、アスタルテって200歳だったんだよな…すっかり忘れてたぜ」
「……恋愛に年齢は…関係ない…」
レーネさんゼルさんコトハさんに伝え、皿洗いをしていたチリアとそれを指導していたノレスにも同様に伝える。
「にゃ!?ご主人様って200歳だったのかにゃ!?とてもそうは見えないにゃ…」
「ほう、また面白いスキルを覚えたのう」
チリアは初耳だったらしく驚いていた。
まあそりゃ、どう見ても小学生くらいだもんね…
何はともあれ、全員にその旨を伝えると早速アスタルテはスキルを唱える。
「状態変化!」
アスタルテが唱え終わるのと同時に、その身体が光に包まれる。
光が消えその眼を開けると、そこには驚きの表情を浮かべる五人がいた。
「あれ…?」
アスタルテは違和感を覚えた。
なぜなら、レーネさんの顔が自分より少し下にあったからだ。
下を向くと、いつもは見えるはずの足が見えない。
胸もいつものぺったんこではなく、歩けば揺れるほどの大きさになっていた。
「おおお…!」
アスタルテは姿見鏡の方を見ると、感嘆の声を上げた。
身長はノレスより頭一つ低いから170辺りだろうか、オレンジ色の髪は腰まで伸びており、顔も人間でいうと20代半ばといったところだろうか、大人びたものになっていた。
そしてなにより特徴的なのが、いつもはあってないようなレベルのサイズの羽が、1メートルほどの立派な羽になっていたのだ。
「おお、これは中々いいかも…」
いつもと全く違う自分をまじまじと見つめる。
そういえば、5人から反応が無いな…?と思って振り返ると、レーネさんがぷるぷると震えていた。
「れ、レーネさん…?」
「アスタルテ君…」
「はい」
「ちょっと私の部屋に来ないかい?」
「…へ?」
言っている事が唐突で意味が分からずキョトンとしていると、肩をレーネさんに掴まれる。
「普段の君も愛らしくてたまらないのだが、今の君も限りなく素敵だ!さあ、私の部屋へ…」
れれ、レーネさん?
ちょっと呼吸荒くないですか怖いんですけど!?
「おいレーネ!アスタルテが困ってるだろうが!」
すかさずゼルさんが止めてくれたが、当の本人も頬を染めつつアスタルテの方をチラチラ見ていた…
ぎゅっ
お腹に何かが当たる感覚がして下を見ると、コトハさんが抱きついていた。
「えっと…コトハさん…?」
「……今のアスタルテ…大きくて…たくましい…」
「変な言い方しないでくださいね!?」
まずい…
普段意識しないようにしてるのに、この状況だとつい意識してしまう…!
アスタルテの顔は赤くなり、心臓もバクバク鳴っていた。
身体は女性でもやはり中身は男なのだ、この状況でドキドキしないほうがどうかしている…
しかも全員とんでもなく美人なのだ…
このまま流されてしまっても……いやいや、理性を保つんだ私!
私が望むのは純愛物であってなし崩しの関係ではないのだ!!
そうだ、こういう時はノレスに…!
なんだかんだこういう状況だと毎回ノレスが一番冷静なのだ。
「ノレス…!皆をなんとかして……へ?」
ノレスの方を向いたと思ったら、ノレスは既に目の前にいて、何故か顎をクイッと持ち上げられた。
「ノレス…?」
「気が変わった」
「え…?」
「アスタルテ、お主は我だけのものになれ。我だけを見るんじゃ」
トゥンク……
(いやトゥンクじゃないからね!?何ときめいちゃってんの私は!?)
スキル使わなければ良かったかも…
若干後悔するアスタルテだった─────
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