レーネとのデート①




─────コンコン。




扉がノックされ開くと、レーネが現れた。





「アスタルテ君、それじゃあ行こうか」

レーネはそう言ってアスタルテの身体を抱き寄せる。




「れ、レーネさん!?」

突然の出来事に困惑するが、レーネはそのまま離してくれなかった。




「ふふ、せっかく今日はアスタルテ君を一人占めできるんだ、ならば普段出来ない事を思う存分やっておくべきだろう?」

「そ、そういうものなんですかね…?」





グイグイ来るレーネに、思わずアスタルテは恥ずかしさで耳を赤くしてしまうのであった…











▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲













「本日の予定はどんな感じなんですか?」

街を歩きながらアスタルテが尋ねる。

「ふむ、そうだね…まずは朝ご飯を食べようか、何か食べたい物はあるかい?」




「う〜む…」

(考えてみればこの世界の食べ物全然知らないんだけど…)




「それでは、レーネさんのおすすめでお願いします!」




美味しいお店とかも知らないし、ここはレーネさんに美味しいお店を教えてもらおう。




「ふむ、おすすめか…なら私の行きつけのお店を紹介するよ」




そう言ってレーネはアスタルテの手を引き歩く。




少し歩くと、のれんのような物が店前に下がった所に着いた。




(ラーメン屋…?)

外観はアスタルテが前世住んでいた日本のラーメン屋とほぼ同じような感じだった。

異世界にもラーメンがあるのだろうか…




「さ、入ろうか」

レーネに促され、アスタルテは考えるのをやめて中に入る。





「らっしゃっせ!あ、レーネさん、どうもっす!」

中に入ると、ハチマキを巻き、大きなしっぽの生えた娘が厨房から顔を出した。




「ドラゴン…?」

アスタルテは疑問を口にする。

それを聞いた相手は少し恥ずかしそうにしつつ話した。




「えへへ、それはお世辞でも嬉しいっすね、でもあっしはそんな高位なモンじゃあないんでさ、ただのリザード族っすよ」




リザード…爬虫類に近い感じということだろうか。

爬虫類ならあながちドラゴンのようなものだと思うのだが、下手なことは言わないでおこう…




今まで軽率な発言から変な方向に物事が進んでいったので、言葉を慎むアスタルテだった。





「じゃあレクス、いつものを2つ頼む」

「あいさ!了解っす!」




レクスさんっていうのか。

アスタルテは座りながら厨房を眺める。

スープに麺と、完全にラーメンだった。




時間的にブランチだが、起きて最初のご飯ラーメンか…この身体って胃もたれしないよね…




心配しつつ見守っていると、あっという間にラーメンが完成した。




見た感じは塩系だろうか?あっさりしていてとても美味しそうだ。




「それじゃ、最後の仕上げっす!」

レクスはそう言って大きく息を吸い込む。





─────すると次の瞬間、ラーメンに向かって炎を吐き出した!





「あっつ!え、なに!?」

「炎ラーメン、お待たせっす!」

驚きも束の間、2人の前にどんぶりが差し出される。




見ると、先ほどのあっさりした見た目は綺麗さっぱり消えており、一面真っ赤に染まりグツグツと音を立てていた。




(え…?これ食べられるの…?)

レーネの方を向くと、彼女は目を輝かせて食べようとしていた。




(ま、まあ…レーネさんの行きつけだし、大丈夫だよね…?)

アスタルテは恐る恐る麺を口に運ぶ。




「かっっっら!!」

今にも口から火が出そうなほど辛かった。




慌てて水を飲み干すが、まだ舌がビリビリする上に更に辛さが押し寄せてくる。

ちらりとレーネの方を見ると、頬を紅潮させつつも次々と麺を口に運んでいた。




流石に残すわけにもいかない…

アスタルテは覚悟を決め、全力で挑むのであった。











▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲










「ありゃしたー!またどうぞ!」




レクスの元気な声と共に店を出る。

「い…胃の中で小惑星爆発が続いてる…」

やばさで言ったらロックドラゴンよりも脅威なんじゃないだろうか…




なんとか完食したアスタルテだったが、口から胃まで燃えているような状態が続いている。

辛さで汗をかいたせいで身体もぺたぺたしていた。





「さあ、次はこっちだよ」

レーネが指差すと、すぐそこに銭湯があった。




「辛いものを食べて汗をかいたら、次はそれを流す番だ」

そう言って先へ進む。




(確かにその流れは気持ちいいかも…!)

アスタルテも続けて中へ入る。





「おぉ…」

中を見ると、銭湯というよりは少しお高い旅館の大浴場という雰囲気だった。

これはかなり楽しみかもしれない。




「アスタルテ君?」

わくわくしつつ脱衣所へ向かおうとすると、レーネに呼び止められる。

「…?どうしました?」

「そっち、男湯だよ?」

「…え?」

「え?」





ぶわっと汗が出るのを感じた。

もしかしたらさっきのラーメン以上かもしれない。




(まってまってまって、そうだよねよく考えたら私女性だもんねうん、ちょっとまってどうしよう!?)




アスタルテは考えたが、流石にここまで来てしまって出るわけにもいかない…




(そうだ!さっきのラーメンでお腹壊したことにしてとりあえず考えて…)

「アスタルテ君、ほらこっちだよ」




アスタルテが戸惑っているうちにレーネにぐいぐい手を引かれ、脱衣所まで連行されてしまう。




「いや、あの」

「さあ、汗を流してスッキリしよう」





(だあああ!どうすればいいんだああ!!)





ある意味最大の局面を迎えるアスタルテであった─────




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