閑話 アスタルテとのデート

プロローグ ~アスタルテとのお出かけ計画~





今日はレーネさんと2人きりでお出かけだ。





アスタルテは少し早めに起きて部屋で支度を始める。

なんせ今日から4日間予定がギッチリ詰まっているからである。





事の発端は一昨日に遡る─────









▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲











「う~ん、とりあえず新居での生活も落ち着いてきたし、街の探索でもしたいなぁ…」

アスタルテがぼそりと呟く。

ここを購入してからというものの、家具の購入や家でのルール決め、実際に生活して気になるところの改善などなど、落ち着いて街の散策をする機会が無かったのだ。




今ならそれらも無事に解決したことだし、住んでいる地域の探索をしてもいいかも知れない。





アスタルテが考えていると、近くにいた三人が同時に反応する。




「それなら、私が案内するよ」

「なら、ウチと散策にでも行こうぜ」

「…私…案内する…」




まさかの同時発言にそれぞれは顔を見合わせる。




「私がこのグレイスにおいては一番詳しいと思うよ?」

「悪いがレーネ、ここに一番詳しいのはこのウチだ、ウチがアスタルテを案内する。」

「…ゼル…方向音痴…私が一番…詳しい…」

「ウチは方向音痴じゃねえ!」





気づいたら誰が一番詳しいかで口論が始まってしまった…

「え、えっと~、全員に案内してもらうというのはどうでしょうか…?」

アスタルテはおずおずと手をあげて聞いてみる。




「アスタルテ君、それもありだと思うけど、出来れば私が君をエスコートしたいんだ」

「アスタルテ、ウチが一番良いこの街の周り方を知ってる、他には譲れねぇ」

「…私の…案内が…一番分かりやすい…」




(えぇ…別にそんな気合いを入れるほどじゃなくて、フラっと買い物気分で行こうと思ったんだけど…)




しかし、今更そう言える雰囲気でもなく…

アスタルテがどうしようかとおろおろしていると、ノレスが口を開いた。




「じゃったら日を分けて一人ずつ案内してやったらいいじゃろう…というか、お主らはただこやつと二人きりでデートしたいだけじゃろうが」




ノレスの言葉でレーネとコトハはハッとし、ゼルは顔を赤くした。




「ふむ、確かにそれが一番の解決策だな、そうしようか」

「…異論…無し…」

「ゼルもそれでいいね?」

「でで、デートって!う、ウチは別にそう思ってた訳じゃねえ!」

ゼルが顔を赤くして叫ぶ。




「ふむ、それじゃあゼルは辞退するって事でいいかい?」

「んなこと言ってねぇだろ!ウチもそれでいい!」

「…ゼル…闘牛モード…」

「コトハ、てめえぇぇ!」





なんか…状況悪化してない…?

「なんなら、我もお主とデートしたいからの。順番はそなたらに任せるぞ」





(あの…私の意志とかって…聞かれないんですかね…?)





こうして、アスタルテは全員とデートに出かけることになったのであった。





結局くじ引きの結果一番レーネ、二番ゼル、三番コトハ、そして最後にノレスという順番になった。




アスタルテが知らぬ間にルールも決められていたらしく、それらの内容は、

《その日は一日、案内者のみがアスタルテと過ごす。》

《他の者は邪魔にならないように大人しくしていること。》

《翌日の朝になったら次の案内者がアスタルテとの行動権を得る。》




の3つだった。




うん、完全に私の意志は関係ないみたいですね、ハイ。





(ってか、その日の夜までならともかく朝までかよ!!)




疑問に思うも口にしないアスタルテであった─────


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