大きなベッド
「さて…」
一度宿屋へ帰ってきたアスタルテ達はゼルとコトハを起こして机に座っていた。
理由は勿論、一緒に住もうと提案してきたことについて話し合うためだ。
正直アスタルテとしては一緒に住むことに関しては全然構わなかったが、いくつかの懸念点はあった。
まず、私達はまだお互いの事を深く知らないのだ。
アスタルテが生前よく聞いていたのは、付き合い始めてすぐ同棲をしたら家では彼氏がぐうたらで結局分かれてしまった… や、仲の良い友達同士でシェアハウスをしたのは良いものの、生活リズムや家での過ごし方ですれ違いが生まれて仲が悪くなってしまった、などだ。
そして一番心配だったのが、自分自身の精神が持つのかということだった。
前も言ったが、レーネさん達はかなりの美人なのだ。
そしてアスタルテの心は男である。
今は身体こそ女性だからまだマシだが、仮に生前の状態で女性4人と一緒に住むって言われたら迷わず断るだろう。
(う~む…どうしようかな…)
アスタルテが悩んでいる間に、ゼルとコトハに成り行きをレーネが伝え終わる。
「…私は…強く賛成…アスタルテと…一緒に住みたい…」
「う、ウチはどっちでもいいけどな!でも、レーネ達が住みたいって言うんならウチはそれに乗っかるぜ!」
何故かゼルは少しキョドっていたが、2人とも賛成のようだ。
「ノレスはどう?」
「我か?我は別に構わぬぞ?」
ノレスはなんだか他人事というか、どんと構えてるなぁ…
「アスタルテ君、どうかな?勿論私達も生活費を収めるし、それに…」
レーネが少し止まり、やがて意を決したようにアスタルテを見つめる。
「私達のパーティに加入…いや、私達を君のパーティに加えてはくれないだろうか?」
──────それは正直、願ってもない提案だった。
むしろアスタルテからお願いしようと思っていたほどだ。
レーネさん達は実力だけでなく、この世界の地理やギルドのいろはを多く知っているのだ。
今後アスタルテがこの世界で生きていく上で必要な知識を持ち合わせたこの三人に是非付いていきたいと思っていた。
そのレーネさん達が、逆に私のパーティに加えてくれとまで言ってくれているのだ。
とてもじゃないがアスタルテは断ることができない。
「レーネさん、ゼルさん、コトハさん…」
アスタルテは心を決め、三人に向き直る。
「むしろ、私からお願いしたいくらいです。よろしくお願いします!」
──────こうして、アスタルテと魔王ノレス、そして三人のSランク冒険者のパーティが結成されるのであった。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
「さて…とりあえずこんなものかな?」
結局チャムに紹介されて物件を購入したアスタルテ達は、各々で部屋に家具を設置していた。
アスタルテも色々家具を購入したのだが、中でも一番のお気に入りは部屋の3分の1はあるキングサイズのベッドだった。
アスタルテ5人分が大の字で寝てもまだまだ余裕のある大きさは見ていて壮観だった。
「これくらいの大きいベッドで自由に寝るのが夢だったんだよね…!」
テンションの上がったアスタルテはベッドに飛び込み、その上をぐるぐると転がった。
(いやーこれは人をダメにしちゃう寝心地だね!)
ごろごろと転がってはしゃいでいると、部屋に近づく足音が聞こえ我に返る。
そこに現れたのはゼルだった。
「おーいアスタルテ、ギルドの酒場に飯食いに行くぞー。って、なんだそのバカでけぇベッドは!?」
「大きいベッドは最高ですよ!ゼルさんも試しに寝てみてください!」
「お、おう…」
アスタルテの気迫に押されゼルも試しに寝てみる。
「あー、確かにこれだけ広がっても全然余裕があるのはいいかもな」
「ですよね!!」
2人がベッドを満喫していると、続けてコトハが部屋に入ってきた。
「…ご飯…準備まだ…?……ゼル…何してるの…?」
「あっ、コトハさん!どうですかこのベッド!」
アスタルテがコトハにベットの説明をすると、コトハもベッドに寝そべる。
……何故かアスタルテの真横に。
「…確かに…広々してて…良い…これなら少し激しく動いても…大丈夫…」
「激しく…?まぁ、そうですね!」
(コトハさんは寝相が悪いのかな?)
いまいち意図が汲み取れなかったアスタルテだったが、あまり深く考えないことにした。
そこへレーネとノレスも現れる。
「ゼルもコトハもアスタルテ君を呼びに行って帰ってこないと思ったら…何をしているんだい?」
「どういう状況なんじゃ、これは…」
「あ!レーネさんにノレス!これはですね…」
その後レーネとノレスもアスタルテのベッドに引き込まれ、予定より少々遅く一同は酒場に向かうのであった。
第2章 =グレイス王国と目覚めし巨竜= ~完~
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