レーネと二人のSランク冒険者




「誰だ?その子」

牛のような角の生えた女性がこちらを見て言う。

「この子はアスタルテ君といってね、今しがた冒険者の仮登録をした所だ」

レーネに紹介され、アスタルテは会釈する。




「彼女らは私の仲間でね、一緒に行動しているんだ」

そう言って彼女らに自己紹介を求める。




「ウチの名前はゼル、種族は魔人でミノタウロスと人のハーフだ。ランクはSでやらせてもらってる」




(ゼルと名乗る女性はミノタウロスと人のハーフか…どうりで牛っぽい角だと思った)

身長は170くらいだろうか、健康的な小麦色の肌に、赤い髪は首の半分位までの長さで、なんとビキニアーマーを着ていた。

寒くないのだろうかと、同じく薄着のアスタルテは思った。





すると、続けて隣の子が自己紹介を始める。




「コトハ…エルフ…同じくSランク…」

お腹辺りまで伸びた銀色の髪にエメラルドのような透き通った目、そして尖った耳。

まさしくアニメに出てくるエルフそのものだった。




(すごい…!本物のエルフだ…!!)

目を輝かせていると、アスタルテに生えている羽を見てコトハがこてんっと首を傾ける。

「羽…魔人…?」





それを聞いてハッと我に帰ったアスタルテも自己紹介をする。




「アスタルテです、悪魔と人のハーフでCランクです!」

とりあえず神ではなく人の設定にしておこう。

そう思いつつ告げる。





「改めて、私はレーネという。種族は人間だ」

レーネはそう言うと、テーブルへと向かう。





「アスタルテ君は昼食はまだかい?良かったらそこで話さないか?」

「あ、はい。まだですけど…」

「それは良かった。それじゃあ行こうか」





こうして、三人と共に席に着くのであった。










▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲










「私に考えがあるんだが、アスタルテ君。グレイスまで共に行かないか?」




開口一番レーネがそう言う。




「丁度私達もグレイスに行く予定でね。君も本登録をしに行くのだろう?」





正直、土地勘の無いアスタルテはグレイスに簡単に着ける気がしなかったのでそれは願ってもない話だった。

「自分も同行していいんでしたら是非付いていきたいです。でも、どうして…?」




それを聞いたレーネが少し照れる。

「いや、どうにも君を気に入ってしまってね。これもなにかの縁だろう。二人はどうだ?」

レーネがビールを飲むゼルとハムスターのように野菜を食べるコトハに尋ねる。




「ウチは全然構わないぞ」

「アスタルテ…歓迎する…ようこそ…」






─────こうして、アスタルテはレーネのパーティに加わるのであった。






「まず、一応戦いに発展した時のために役割を確認しよう。私は前衛で多少魔法スキルが使える。武器はこの剣だ」




そう言ってレーネは腰に差していた剣を見せる。

素人目で見ても強さが分かるようなオーラを放っていた。





「ウチも前衛、肉体強化と攻撃スキルで戦っている。ウチの相棒はこのバスターソードだぜ」




ゼルはそう言うと、背中に背負った大剣を指差す。

(某RPGの金髪主人公が似たようなの持ってた気がする…)

アスタルテはそう思ったが通じないと思ったのでやめた。





「私…後衛…攻撃、回復、強化魔法…使える…このスペルブック…詠唱短縮できる…便利…」




コトハがそう言うと、どこからともなく手に本が現れた。

(武器に詠唱短縮のスキルが組み込まれている感じなのかな…?魔力を使って固有スキルが使える神器みたいな感じなのだろうか…)





アスタルテが考えていると、レーネがこちらを見る。




「アスタルテ君は…見た感じ武器を持っていないみたいだけど、魔法スキルを使うのかい?」

そう言われ、アスタルテは気付く。

そういえばスキル“アイテム収納”でしまっていたんだった。





「自分もメインは前衛で、攻撃魔法スキルも少し使えます。武器はこのガントレットです」

そう言ってアイテム取出しのスキルでガントレットを机の上に出す。




すると、ガントレットを見た三人が激しく驚いた。

レーネは目を開いて身を乗り出しているし、ゼルはビールを吹き出し、コトハは手に持っていた人参が皿の上に落下していた。




「お、お、お前それ!神器じゃあねえか!?」

ゼルが興奮して声を上げる。

「これは驚いた…まさか神器をこんな近くで見れるとは…」

レーネはガントレットをまじまじと見つめる。




(Sランクの人達でもこの反応って…なんでこんなのをレニーは持っていたんだ…)

アスタルテはそう思いつつ、ブーツも神器だったことを思い出しそれも机の上に置く。

「確かこれも神器です」




アスタルテがそう言うと、レーネは おおっ! っと目を輝かせ、ゼルとコトハはポカンとしていた。




「こ、コトハ!これ、鑑定してみてくれ!」

ゼルがそう言ってコトハを揺さぶると、我に帰ったコトハは詠唱し鑑定スキルを使った。




「名称…天穿うがちし拳…そら駆けし靴…階級…神器…主…アスタルテ…」





「マジモンかよ…アスタルテ、神器に認められるって…お前一体何者なんだ?」

それを聞いたゼルが問いかける。




そう言われても、アスタルテはただ装備しただけだったので自分にも分からない。

「レニーっていう道具屋をやっている子がいるんですけど、命を助けてくれたお礼にって事で貰いました…装備したら認められた?みたいで…」





「あの娘がこんなものを持っていたなんてな…これ、ちょっと触ってもいいか?」

まじまじと見ていたレーネが言う。

アスタルテが承諾すると、持ち上げようとするが全く動かなかった。

「くっ!あれ、おかしいな…びくともしないぞ…」




それを見ていたコトハが口を開く。

「神器は…主と認めた者にしか…扱えない…他人は…持つこともできない…と思う」




それを聞いたレーネが名残惜しそうに手を離す。

「そうか…それは残念だ。私もいつかおのれを認めてくれる神器と出会いたいものだな」




そこでふと三人のステータスが気になったアスタルテは何気なく状態確認ステータスチェックを使ってみる。






○●○●○●○●○●○●○●○●





✩名前 - レーネ -



✩冒険者ランク - S -



✩Lv - 38 -



✩種族 - 人間族 -  



✩ステータス


HP(体力) - 180/180 -


MP(魔力) - 110/110 -


STR(物理攻撃力) - 90 -


INT(魔法攻撃力) - 40 -


DEF(物理防御力) - 70 -


RES(魔法防御力) - 45 -


AGI(素早さ) - 55 -




✩スキル一覧

《任意発動スキル》

・スラッシュストーム MP消費10 ▽斬撃でなぎ払う。

・滅一閃 MP消費80 ▽高速で駆け抜け、相手を貫く。

・明鏡止水 MP消費10 ▽心を落ち着かせ回避力、命中率を上げる。

・反撃の型 MP消費0 ▽相手の攻撃を見切りカウンターを仕掛ける。

・ファイアーボルト MP消費30 ▽火の矢を打ち込む。

・ウィンドカッター MP消費5 ▽高速な剣さばきで風を生み出す。


《常時発動スキル》

・司令塔 ▽仲間の物理・魔法攻撃力+10

・剣術強化(大) ▽剣装備時素早さ、物理攻撃力+15

・剣スキル効率(大) ▽剣スキル使用時消費MPを大きく抑える。

・特殊剣技(左) ▽唯一無二の自己流の型。 ※左利き限定

・弱点解析 ▽相手の弱点が分かる。

・危険察知 ▽危険が迫った時素早さが上昇する。



○●○●○●○●○●○●○●○●







(おおっ、見事に剣に特化してるんだな…)

森の主のアングリーベアを余裕で凌ぐステータス、そして無駄なスキルのない構成だった。

そのスキルは見事なまでに前衛に欲しいものを揃えていた。

これで更に魔法スキルも覚えているのだから流石Sランクは伊達ではない。

アスタルテは、続けてゼルのステータスを見る。







○●○●○●○●○●○●○●○●





✩名前 - ゼル -



✩冒険者ランク - S -



✩Lv - 35 -



✩種族 - 魔人族 -

(種族①ミノタウロス 種族②人間)  



✩ステータス


HP(体力) - 230/230 -


MP(魔力) - 50/50 -


STR(物理攻撃力) - 140 -


INT(魔法攻撃力) - 15 -


DEF(物理防御力) - 110 -


RES(魔法防御力) - 70 -


AGI(素早さ) - 20 -




✩スキル一覧

《任意発動スキル》

・大切断 MP消費5 ▽大剣の重量を1.5倍にする

・天地両断 MP消費70 ▽大剣の大きさ及び重量を20倍まで引き上げる

狂戦士化バーサーク・モード ▽HPが減少し続けるが、HPを除く全ステータスが二倍に上昇


《常時発動スキル》

・大剣使い(大) ▽大剣装備時、物理攻撃力+20

・大剣スキル効率(大) ▽大剣スキル使用時消費MPを大きく抑える。

・ミノタウロスの血 ▽生まれながらにして力に長ける。大型の武器装備可能。

・逆境での本能 ▽HPが減少するほどステータスが上昇する。(1.1倍~1.5倍)

・解体屋 ▽モンスターの部位を損傷させる事なく切り分ける事ができる。




○●○●○●○●○●○●○●○●







これもまた見事なスキル構成だった。

(魔人はやっぱりステータスが高いな…)

レーネと比べ素早さや魔力、スキルのレパートリーは劣るものの、それ以外はかなり高く、狂戦士化バーサーク・モードとやらでステータスが二倍、そしてその効果でHPが減少するたびに更にステータスが上がる。

瞬発的とはいえ、その上昇量は尋常ではない。




(しかし、見事なまでに攻撃特化だな…)




そう思いつつ、最後にコトハのステータスを見る。








○●○●○●○●○●○●○●○●





✩名前 - コトハ -



✩冒険者ランク - S -



✩Lv - 40 -



✩種族 - エルフ族 -  



✩ステータス


HP(体力) - 70/70 -


MP(魔力) - 410/410 -


STR(物理攻撃力) - 20 -


INT(魔法攻撃力) - 120 -


DEF(物理防御力) - 40 -


RES(魔法防御力) - 85 -


AGI(素早さ) - 35 -




✩スキル一覧

《任意発動スキル》

・ファイア MP消費10 ▽火を放つ。

・ファイアボルト MP消費15 ▽火の矢を打ち込む

・フレイム MP消費20 ▽炎を放つ。ファイアの上位互換。

・フレイムボルト MP消費30 ▽炎の矢を打ち込む。ファイアボルトの上位互換。

・フォースレーザー MP消費250 ▽炎・氷・大地・嵐それぞれの属性を含むレーザーを照射する。

・エレメントスイッチ MP消費5 ▽スキルの属性を変更する。

・ヒール MP消費20 ▽1人を回復する。

・ヒールオール MP消費40 ▽4人までを回復する。

・パーフェクトヒール MP消費40 ▽1人を完全回復する。

・ステータスアップ MP消費30 ▽1人のステータスを1.2倍上昇させる。

・ステータスダウン MP消費30 ▽1人のステータスを1.2倍減少させる。

・鑑定 MP消費0 ▽装備の鑑定を行える。


《常時発動スキル》

・四大元素を秘める者 ▽火・水・土・風属性を操る。

・四大元素を極めし者 ▽炎・氷・大地・嵐属性を操る。

・魔法強化(大) ▽魔法の威力が大きく強化される。

・MP効率(大) ▽消費MPを大きく削減する。

・詠唱短縮(武器スキル) ▽詠唱時間が短縮される。





○●○●○●○●○●○●○●○●







(なんだこのスキルの量は…)

体力は低いものの、魔力がずば抜けており、何よりもスキル量が凄まじかった。

四大元素と、その上位を全て扱えるうえに回復からバフ・デバフスキルまで持っていた。





見た限りだとこの三人は相当強そうだったが、他がどんなものか分からないので、試しにたまたま通りがかった金のアームレットを付けた人のステータスも見てみた。







○●○●○●○●○●○●○●○●





✩名前 - ミノフ -



✩冒険者ランク - A -



✩Lv - 20 -



✩種族 - 人間族 -  



✩ステータス


HP(体力) - 40/40 -


MP(魔力) - 30/30 -


STR(物理攻撃力) - 31 -


INT(魔法攻撃力) - 20 -


DEF(物理防御力) - 25 -


RES(魔法防御力) - 15 -


AGI(素早さ) - 17 -




✩スキル一覧

《任意発動スキル》

・ファイア MP消費15 ▽火を放つ。

・スラッシュ MP消費10 ▽剣でなぎ払う。


《常時発動スキル》

・剣術強化(中) ▽剣装備時、物理攻撃力+10

・剣スキル効率(小) ▽剣スキル使用時消費MPを少し抑える。





○●○●○●○●○●○●○●○●





(え、弱くない?)

思わず声に出てしまいそうだったアスタルテは慌てて口を抑える。





─────SランクとAランクの差に驚くアスタルテだった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る