第34話 魔人島の最後の1種類

 ダークインプを含めると、ダークコング2体、グリフォン、ヤタガラスが仲間になった訳だ。

 しかし最後の1体が残っている。

 そのモンスターがどんなモンスターなのかという情報は全くなかった。

 ヒントを持っていそうなのは狩人であるレイであったのだから。



 僕達は沢山の岩が突き出ているポイントから抜け出る事にした。

 レイが教えてくれるモンスターとは鎧その物が動くのであって、

 その中にモンスターがいる訳ではないらしい。


「その動く鎧はアンデット系のモンスターなのか?」

「そういう訳ではない、付喪神系のモンスターだと聞いた事がある。まぁ食べる所がないので、近づかないのが無難とされてきたが」


 僕はこくりと頷いていた。

 荒野から抜け出ると、しばらくは平原が続く、

 エメラルドの緑はとても華やかにさえ見える。

 そこに到達した時、僕は唖然と口を開いていた。

 平原から抜け出るとそこは墓場ではなくて、ゴミ捨て場のようにありとあらゆる物が捨てられていた。しかも見たところ現実世界にしかないようなものまであったり、見た事もない物があった。


「この魔人島は異世界から流れてくるものを拾ってきてしまう場所なんだよ。だから付喪神も元々は別な世界のモンスターであったと考えられるんだ」


「なるほどなぁ」


 僕は心の底から頷いていた。

 付喪神とは日本の物に宿る妖怪だと聞いた事がある。

 絶大なる確証をもって妖怪とは断言出来ないが、色々なパーツが融合して動く鎧になったのであろう、そしてその鎧達は何を目指して彷徨い続けるのだろうか?



 きっと元の持ち主の所に戻りたいとか思っているのだろうか、

 彼等には記憶がない、

 だけど魂には記憶が宿る気がする。


 僕はとても行き場のない感情を体内に留めていた。


 かさかさ、どしどし、ばんばん、


 三種類の音を発しながら、

 何かが動いている音が聞こえる。

 その時まるでゾンビのように立ち上がる付喪神となった鎧達。 

 付喪神が鎧に憑依したのか、

 それとも鎧そのものが付喪神となったのか、

 それは妖怪研究科ではない僕には理解が出来ないけど。

 

 それでも彼等が行き場のない怒りを抱えている事は分かっていた。


 沢山の物が次から次へと接合していく、

 鎧そのものを通り越して、巨大なモンスターとなる。

 身の丈7メートルの化け物はこちらを見て、無言でこちらを殺そうとするジェスチャーを取るのだが。

 なぜだろう彼等にこちらを攻撃する意識を感じる事が出来ないのだ。


 例えば「殺すぞいいのか? 本当は殺さないけど、殺すぞ?」みたいな事をしているようにすら見える。


 その隙にとばかり、僕は鑑定スキルを発動させていた。


【九十九神:レベル30:仲間条件本体を晒せ】


 付喪神という名前でくると思ったが、

 似たような名前で、九十九神となっていた。

 レベル30だという事にも驚きを隠せない僕は、僕自身がレベル6だという状態に恐ろしさを覚えていた。下手したらパンチ一撃でこちらが死ぬのではないだろうかと。


 仲間条件も本体を晒せという意味不明なものだし、

 ぜひとも九十九神は仲間にしたい、

 色々と便利になりそうな気がする。


 

「グーリーズとガラガラは空から攻撃してくれ、死にそうになったら即時逃げる事」


「まかせてくれ」


「まかせな」


 グリフォンとヤタガラスが空を飛翔するなか、

 

「ビックフットとスモールゴリは僕の右側と左側から攻撃を仕掛けてくれ」


 2体のダークコングがこくりと頷く、

 どうやら緊張しているようで、一言も発せない状態。


「レイさんは背後から援護射撃で頼む」

「言われずともそうするつもりだ」



「うわあああああ、まさにこれモンスターテイマーじゃん」


 僕は間抜けな声を上げていた。

 そして戦闘が本格的に始まったのは、周りがいつの間にか暗くなり、

 気付けばお月様が空を支配している事すら忘れる。

 それほど世界はとても明るかった。


 グーリーズとガラガラのカギヅメ攻撃により、

 九十九神は絶叫を上げていた。

 そしてその音は物と物をこすり合わせて怒る摩擦のような音であった。

 その事から九十九神には体がなくて、

 本当に魂のようなもので、それが物に宿るのだろう、

 まるで伝染病のように近くにある物を取り込み、

 次から次へとでかくなっていく、

 ある意味最強なモンスターなのかもしれない。


「うらぁあああ」

「こんにゃあああ」


 グーリーズとガラガラが空を飛翔しながら、

 滑空して、頭のパーツを引きはがし、

 その次にグリフォンがタックルを仕掛けるのであった。

 ダークコング達は棍棒を握りしめて、

 足元のパーツを引きはがしにかかる。

 その後ろからはレイさんが弓矢で援護射撃をしている。


 僕はエンジェルスタッフを握りしめて、

 魔法剣モードに展開する。

 次にデビルアーマーに異変がないか調べるが、

 残念ながらすごく異変が生じていた。

 真っ赤に輝き、まるで血のようになっている。

 鎧と一体化するように不思議な感覚を感じる。


 そして次の瞬間、時間外に飛ばされていた。

 全ての物体がそこに静止しており、

 デビルアーマーから抜け出るように1人の悪魔が鎧から抜け出ていた。

 そして九十九神の巨大な体から1人の悪魔が出てきたのだ。


 僕は訳の分からない状況に陥りながら、

 なるようになれと、

 なぜか時間外なのに身動きが取れる中、

 その悪魔たちを見ていた。

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