第33話 魔人島探検④
僕とレイさんは弾かれるように草むらから飛び出た。
僕はデビルアーマーが体を守ってくれると期待しながらも、
エンジェルスタッフで魔法を発動していた。
僕が相対しなければいけないのは、
3体の中で一番でかいグリフォンだった。
出来れば良いグリフォンをテイムしたかったからだ。
しかしそれはとても難しい事でもあるのだ。
僕は命がけになった事は何度もある、だけどこれほど怖いと思った事はあまりなかった。
いつも虐められてきていつでも死んでやるって思ってた。
だけど死が怖くて、なにより家族が悲しむ姿を思うと出来なかった。
ある時は家族なんてどうでもいいんだと、なぜ僕だけが虐められないといけないのかと、
何度も何度も思った事もある。
それを乗り越える為には、
僕自信が変わる必要があった。
だから今の臆病な自分から、
僕は変わる事にする。
迷いのなくなった視線でグリフォンを見つめ、
エンジェルスタッフの魔法剣を発動していた。
【強化魔法】で両足を強化すると、
【跳躍レベル1】を発動している事をイメージして、
【全力疾走】を発動させないようにする。
これを発動すると、通り過ぎる恐れがある。
僕はグリフォンの真下をスライディングするように滑る。
グリフォンの尻尾が地面に叩きつけられても、
それを軽々しく避けて立ち上がり、
後ろに振り返る。
こちらに振り向こうとするグリフォン。
人生を賭けて走り出す。
空気が冷たくてひんやりする。
それでも空気を求めて肺が動き続ける。
心臓が動き続ける。生きる為に心臓は動き続けるんだ。
ジャンプした。
【跳躍レベル1】があるのとないのとでは違った。
何十メートルも飛ばないように気を付けて、
ゆっくりとグリフォンの背中に着地する事に成功したが、
すぐに暴れ馬の如く暴れられて、
地面に叩きつけられた。
グリフォンの牙がこちらに向かってくる。
まるで頭蓋骨を潰すように、振り落とされた牙は、
レイさんが僕を引っ張りだしてくれて、
地面に巨大な穴が開いた。
気付けばレイさんは2体のグリフォンを倒す事に成功し、
グリフォンの魔石があった。
「これでしょ欲しいのは」
「うん、助かる」
レイさんから2個のグリフォンの魔石を受け取ると、
僕はゆっくりと立ち上がり、
目の前のグリフォンを見ている。
そいつはこちらをじっと見つめており、
獲物を見つけた瞳をしていた。
じゅるりと口から長い舌をべろりとする辺りが気持ち悪かったけど。
「レイさん援護頼む」
「任せて」
僕は走り出す。
グリフォンの周りを旋回するように、
グルグルと回転する。
それでもグリフォンはしつこく体の向きを変えてこちらから目を離さないようにしている。
その時グリフォンのお尻に矢が突きたち、
怒声が上ると、
僕はそれがチャンスだとばかりに思いっきり走り、風が僕を抗おうとしている。
それでも風に勝つ為に僕は走り続ける。
思いっきりジャンプする【跳躍レベル1】を再びイメージすると、上手く空高く舞い上がれる。
但しそれほどのジャンプ力は必要ないので、力をセーブしてグリフォンの背中に乗る事に成功する。
また暴れ馬の如く暴れ出すグリフォンに、焦りを覚える。
【忍耐力】スキルをイメージしながら、
体のバランス感覚を整えながら、
グリフォンはゆっくりとゆっくりと、
僕の呼吸に合わせてくれるようになってくる。
そしてグリフォンは静かになったのだ。
―――おめでとうございます。グリフォンをテイムしました。名前を付けてください―――
「君はグーリーズだ」
「グリフォンの名前はグーリーズだ。よろしく」
グーリーズは言葉が少ないイメージだが、
彼はこちらに紳士的に動いてくれるようだ。
レイさんはダークコング達が守ってきた荷物を受け取ると、
感謝を述べていた。ダークコング達は照れ臭そうにしていたけど、
グリフォンはそれを静かに見守っていた。
「あと2種類だな、先にあそこにしようか」
レイさんの案内の元、次に向かったのは草原地区を乗り越えた岩山地区だった。
沢山の岩が飛び出ているのは転んでしまえば、相当痛い事になるという事だ。
そこには1体の巨大なカラスがいた。
そのカラスは結構遠くからこちらを発見していたみたいだった。
それでも静かにこちらを見ている辺りが結構なつわもののイメージをもたらせる。
「ヤタガラスというモンスターだよ」
レイさんが教えてくれるが、僕も鑑定する事に。
【ヤタガラス:レベル20:仲間条件武器で地面に叩き落す】
この時に思っていたのは、
周りをよーく見るとヤタガラスが無数にいるという事、
数えただけでも10体は居るだろう、
しかも1体1体がレベル20という恐ろしい現実。
再び考える事、地面に叩き落すには相当ジャンプをしなければならない、
しかしその必要がない事を今の僕は気づいた。
グリフォンに乗って空から攻撃すれば、
それにレイさんは長弓の達人でもある。
「レイさん、また荷物をダークコングに任せて、戦えませんか?」
「もちろんそのつもりだよ」
「グーリーズ、君の背中に乗せてもらっていいか、空で戦おうと思うんだけど、君の許可が必要なんだ」
「それはグーリーズを使ってくれるという事ですね?」
「もちろんそうだ」
「快くこの翼をお貸ししましょう」
「助かる」
僕はグーリーズの背中に乗ると、
彼は空高く舞い上がり、
全てのヤタガラスが空へと飛翔する事で、
全ての戦いが始まりを告げたのであった。
ヤタガラスの仲間条件で武器で叩き落す必要があるので、
剣か何かで叩き落す必要があるだろう、
長弓だとそれには入らないのかもしれない、
叩き落とすのと射落とすのでは違う気がするからだ。
10体のヤタガラスがこちらに向かってくる、
地上から長弓で狙いを定めたレイさんが次から次へとヤタガラスを射落としている。
地面に落ちた巨大なカラスはもがき苦しみ、
レイさんが止めをさしている。
僕はエンジェルスタッフを振りまくっているが、
なかなか剣がヤタガラスに当たる事はない。
それでも次から次へとヤタガラスが矢で落下して死んでいく。
このままではテイム出来ずに終わりそうで怖くなってくる。
心の中で勇気を振り絞り、
何かに挑戦すると言う事はとても大切な事だと祖父に教えてもらった事を思い出す。
そして僕は思いっきりグリフォンの翼からジャンプすると、
そのままエンジェルスタッフを杖状態にしながら、一体のヤタガラスを地面に叩き落す。
ヤタガラスは地面に叩きつけられて、僕はそのまま地面に落ちる。
岩場だらけのそこに落ちれば激痛は仕方ない事だろうと覚悟したのだが、
グリフォンのグーリーズが嘴で僕を助けてくれたのだ。
「グーリーズ借りが出来たな」
「そんなのはいらないさ」
グーリーズはにやりと笑って見せて、僕を地上に下した。
ヤタガラスの方へ行くと、
こちらに頭を下げていた。
―――おめでとうございます。ヤタガラスをテイムしました。名前を付けてください―――
「君はガラガラにしよう」
「光栄に思います。このガラガラ頑張る次第です」
僕はガラガラを仲間にして、心が落ち着いていた。
レイさんはダークコングから荷物を受け取ると、
こちらにやってきて、肩をぽんぽんと叩いてくれる。
「9個の魔石だよ、運よく全部から出た」
「ヤタガラスの魔石か助かる」
僕はそれを受け取り、
「では次が最後だ」
僕の心臓は早鐘を打っていた。
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