第21話 だが断る


 鉄の板、鉄の塊、石に石に石、鉄の棒、生卵、生卵、生卵。


 ありとあらゆる物を投擲している。

 なぜ生卵があったのかは理解出来ないが、

 高速で投擲していく、

 石が顔面に直撃するだけで、

 暴走族のメンバーは後ろに吹き飛ばされる。

 よく、頭がもげないものだと感心しながら。

 それでも容赦なく野球の構えをして投げる。

 それは巨大なレンガ、

 顔面からレンガに直撃した暴走族は一回転して吹き飛んだ。


 あらかた投げまくると、

 投げる物が無くなっていく。


 200人にまで減らした暴走族のメンバー達、

 彼等は最初、拳で僕をボコボコにするつもりだったのだろう、

 次からは容赦がない感じで、それぞれバッドや鉄の棒を握り締めているし、

 10台くらいのバイクが僕を追いかけ回したり、

 一応僕は形として逃げるふりをしている。


 壁が目の前にあった。

 逃げるポイントがなくなった。

 少しでも油断をすればバイクにひき殺されても可笑しくなかった。

 そして僕はスキルのダメージ削減を発動させる。

 右の拳を固めると、


 僕とバイクは真正面から激突する事に、

 ダメージ削減の効果で、さほどこちらに衝撃はなかったが、

 バイクの部品を1つ1つ崩壊を辿り、

 後ろに回転しながら吹き飛ぶ、

 それに巻き込まれた。バイク達は全滅を辿り、

 爆発炎上をする事に、

 その煙の中から現れる僕を見ていた暴走族達は、

 恐怖のつりあがった表情をしていた。


「さてお掃除しましょうか」


 暴走族の人々が問答無用とばかりに、

 真っ直ぐに叫び声をあげながら僕のほうへと走ってくる。


「君達は大人でしょ、学ぶ事も覚えないとさ」


 先頭を切るのは、福寺族長であり、

 この人は相当なバカだと思った。


「大将が先陣を切ってどうするの」


 僕は福寺族長に向かって周りの雑魚もうるさいので攻撃魔法レベル1を発動させる事に、


 ネズミ程度の大きさのサンダーを繰り出すと、

 暴走族達は意味不明な顔をしながら次から次へと感電していく、


 彼等は鉄の棒をもっているので、それが触媒となり、サンダーがあちこちに散らばる。

 もちろん福寺族長は全身を雷に打たれたようになり、 

 リーゼントとアフロがまざりぐちゃぐちゃヘアーになっている。

 それでも奴は倒れなかった。

 正確には鉄の棒がひっかかって倒れなかった。

 それを見た仲間達は感激の声を上げる。


 気付け仲間達よ、そいつは半分気絶してます。


「あいつは手品師だ気を付けろ」

「こんな乱戦の中で手品を使うとは卑怯な」

「違う、あれはスタンガンだ」

「そんなずるい物を今の高校生は持ち歩いているのか、俺が高校生だった時は身1つでタイマン切って見せたのに」

「るーせ、あの高校生をなんとかするぞ」


 先程から言いたい放題の暴走族の集団たち、

 僕のサンダー魔法はスタンガンまたは何かの手品だという事になったようだ。

 それはそれで一安心だが、

 僕としては少し納得のいかない話である。


 なので問答無用で、

 空高くそびえる巨大なサンダータワーを食らわせてやる。


「うおおお、あれはスタンガンで出来る範囲じゃない」

「も、もしかしてあのガキ超能力者じゃ」

「そんな事ありえないだろうが」


「あ、兄貴いいいすごすぎますううう」


 最後に寺伝先輩がこちらを応援してくれる訳だが、

 全ての現況はおめーだぞとは言えないので。

 サンダータワーを振り落とす。

 沢山の暴走族体は、それを見て悲鳴どころか断末摩の大声を張り裂けんばかりに叫んだ。


 そしてサンダータワーは200名近くの暴走族を一網打尽にして見せる。

 そこにはほぼ全員のリーゼントとアフロがめちゃくちゃになっており、

 ぷすぷすと頭から煙をもくもくと出している。


 僕はケジメとして半分気絶している暴走族のリーダーである福寺族長に声をかける。

 彼は感電している状態でゆっくりと逃げようとしていた。

 僕が暖かい手で彼の肩を叩くと。


「ひ、いいいいいい」


「1つお願いがあるのですが」


「な、なんでもします。ラジオ体操もします」


「なぜにラジオ体操かは知らないけど、ここら辺でお金を巻き上げたり暴力活動を辞めてもらえるね?」

「も、もちろんです。リーゼントとアフロが無くなったら俺様は生きていけません」


「そこはどうでもいい」


「ど、どうでも」


「では寺伝先輩後始末よろしく」


「は、はい、任せてください、色々とありがとうございました。またお願いする事があるかもしれませんが」

「だが、断る」


 僕は全力疾走で逃亡を図ったのであった。


 地下鉄とバスを乗り継いて実家に帰りつくと、

 母親が屋敷の外の掃除をしていた。

 一応、僕は無傷であるが、

 母親はくんかくんかしており、


「ヤマアキ、何か匂うわね、どちらかというと煙みたいなもの、ま、まさかヤマアキ、薬をやってるんじゃ」

「なぜそうなる」


「ち、違うのね、よかったわ、ご飯出来てるけど食べる?」

「うん、食べるよ、今日の用事は後回しにするかな」


「今日はハヤシライスよ」

「母さんのハヤシライスは最高だからな」


 母さんは掃除道具をしまうと、屋敷の中にと入って行った。


 太陽は沈もうとしている。

 今日の我が家の夕ご飯はとても速かった。

 この前僕が夕食を食べなかった事が母親には気がかりなのかもしれない、

 そうだとしたら少し心配をかけてしまったなぁと反省すると。


 その日のハヤシライスを父親が還ってくるまで食べた。

 それから僕の時間がやってくる。

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