第20話 スローライフと暴走族

 僕が今日お送りするはずだったスローライフが崩壊を辿り、

 30人以上の先輩をぼこぼこにするという失態をおかした。

 せめてやられたふりをしておけばよかった。


 今、僕の後ろには寺伝先輩が背後霊のように追いかけてくる。 

 全力疾走のスキルを使用して逃げる事も考えたが、もう僕は諦めている。


「分かりました。その暴走族を壊滅させればいいんでしょ」

「か、壊滅はやりすぎな気が」

「男ならそれくらいやる気でないとな、それで暴走族はどこにいる?」



 寺伝先輩はぶるぶると震えながら、 

 口をゆっくりと動かして話し出す。


「お前は鯉なのか」

「ち、違います」


 上靴から外靴に取り換えながら、そのようなやり取りをしていたら、

 そこに七条さんがやってきた。

 

「やほーそのいかした人は誰?」

「こ、これは兄貴の彼女ですね、すごいべっぴんじゃないですか」

「い、いや、これは彼女ではなく友達で」

「う、うん、私はヤマアキ君の友達だよ」


「今回は友達さんには失礼ですが、暴走族を討伐しに行くのは兄貴と俺様だけのほうが」


 七条さんは頷いている。


「色々とあるみたいだから、私は先に帰ってるよ」

「なんかせっかく待たせたのにごめん」

「気にしないで、あなたの勇士を見た1人のファンとして」

「どこから見てたんだい?」

「あなたが窓からジャンプする所から」

「ほぼ全部じゃん」

「とっても格好いいからヤマアキファンクラブなるものが作られているそうよ」

「ある意味すごいなぁ」


「あ、兄貴のファンクラブがあるんですかああああ」

「寺伝君は少し黙ろうね」


「は、はい調子こきましたあああああ」

「いや、気にしないでくれ」


 僕としては七条さんと小説トークをする楽しみを奪われたので、 

 少なからず寺伝先輩をぼこぼこにしてやろうかと思ったりしたのだ。

 しかし、そのような事をすれば、僕は相当ひどい奴となるだろうし、


 暴走族は放っては置けない、

 いつか七条さんとか七条さんとか七条さんとかに迷惑がかかるなら、

 僕は七条さんの為に、七条さんが為に叩くのだ。


「あ、兄貴、頭で何を考えていらっしゃるので」

「ちょうど君を料理する事を考えていた」

「あ、兄貴いいいい、それだけは勘弁してくれえええ」

「そもそもあんたが先輩で僕は後輩、お分かり? 僕が兄貴と呼ぶのは寺伝先輩であり、寺伝先輩は僕の事を後輩と呼ぶ、よろしい?」

「よろしくない、年齢で上か下かを決めるのはおかしい、だからヤマアキ殿は兄貴なのだ」


「うん、分かった。君がとてつもなく馬鹿だという事が」

「は、はい、ありがとうございます」

「ほめとらん」


 寺伝君は学ランを着用しているが、 

 どことなく不良感を醸し出している。

 なんだかんだ言って2人で面白みの欠ける漫才をやりながら、

 廃墟に到達していた。


 寺伝先輩の案内でやって着たこの廃墟は、元々バイク工場で、バイクのアクロバティックな技を磨く場所でもあったらしい、

 今では倒産してしまい、廃墟となった建物は放置、

 鍵もかけられず、沢山の悪者達の拠点となってしまった。


 僕は寺伝先輩とそこの入り口に立っている。

 目の前にはとても広い広場があった。

 通常の公園くらいの大きさである広場は、 

 沢山の活かした兄ちゃん達がいた。 

 ほとんどがリーゼントとアフロであった。

 なぜにアフロと思ったが、リーゼント派とアフロ派に分かれているみたいで、

 リーゼント勢力とアフロ勢力が融合したのが、今の暴走族なのかもしれない。


「兄貴、リーゼント勢力とアフロ勢力が融合したのが、今の暴走族です」

「お前は僕の心を読んだのか」

「い、いえなんとなく思った事を」

「そ、そうか」


 俺はびっくりしながら、

 堂々と彼等の前にやってくる。

 後ろにはびくびくしながら寺伝先輩がやってくる。

 後輩に向かわせて、後輩を盾にする先輩ってどうなのよ。


 リーダー格らしき人がこちらに振り返った。


「福寺ってやつがリーダーです。頭がいかれているので、気を付けてください」


 頭をアフロにしながらリーゼントにしている。

 すげー髪型だ。なるほどだから頭がいかれているのか、さすが寺伝先輩描写がすごい。


「うひひ、お前は寺伝だな、今月の10万がまだだぞ、そんな事してたら高校に乱入しちゃうよ? いいの?」


「てめーら、今日は兄貴を連れてきた。全ての責任は兄貴がもつ」

「何勝手に全ての責任が僕なのよ」


「兄貴がんばってください」

「てめーは逃げるの早すぎなの」


 寺伝先輩は後ろの建物を登って、 

 高い所からこちらを高見の見物にしている訳で、どこまで卑怯で、

 どこまで臆病なのか疑問だらけだ。


「へぇ、兄ちゃんが相手してくれる訳かい、最近喧嘩してねーしな、野郎ども片付けてしまいなさい」


「なぜにお姉さんのように断言してるのおおお、確かに福寺さんは頭が可笑しいのかもしれないけど」

「あっしは元から頭が活かれており可笑しい存在さ」

「自覚があるのかい」

「自覚がないとやってられないさ、さて、こちら300人だがどうする?」


 先程までいなかった奴等が福寺さんが号令をかけると、

 どこからともなく集まってくる暴走族達、

 彼等はこちらを見ながらぐへへと笑っている。

 特にエロイ事はしないと思うのだが、

 こちらは半殺しになるとは思うのだが、

 ようは負けなければいい訳だ。


 とりあえず数を減らそうと思い、スキル【投擲】を使用する事に、

 周りには沢山の物が落ちている。 

 それを掴み、持ち上げると、沢山の暴走族達が向かってきた。

 それは映画でよく見る奴だ。

 1人の強者に向かって何100人の雑魚達が向かって行く光景、

 後敵は全て鑑定済みであり、

 鑑定結果としては皆は雑魚だった。

 福寺さんという大人だけが少し攻撃力があった。

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