第19話 不良ではなく番長だ

 教室に入ると、その威容な空間に僕は驚きを隠せない

 僕の机はボロボロにされており、椅子には無数の棘がある。

 取り合えず僕は棘のある椅子に座る。

 特にお尻が痛い訳でもなくマッサージのようなものだと思う。


 後、威容な空気は生徒達が先輩達に絡まれている事、

 生徒が数十名いるなら、先輩が30名を超えている。

 彼らは誰かを探している。

 なぜか伊達島君などはその人物の事を教えないようにしている。


 伊達島君がこちらに目線で逃げろと合図をするのだが、

 僕はなぜ逃げなくてはいけないのかと思った。

 そして教卓の前に立っている男が笑う。


「俺様はこの高校の不良グループの番長である。先日俺様の配下達がお世話になり、病院送りにされた。そこでそれをやってしまった奴の靴の中にガビオを沢山入れておいた。名前はヤマアキという奴だ。心辺りがある奴はこっちにこい、それとお前、ヤマアキの椅子に座ってるがヤマアキか? つーかすげーな棘に座ってるって、御尻血まみれだぞ」


「いえご心配なく、鍛えておりますので、後、靴を見たらガビオがはいってまして、この程度なら足つぼマッサージにもなりません、今度からアイスピックを入れてください」


「てめー生意気だなああ」


「生意気なのは先輩達です。皆は勉強をする為に高校に来ているのです。もちろん友達関係を築き社会性を鍛える事も大事です。ですが貴方達がしているのは弱い物虐めに他なりません、それと僕がヤマアキです」


 その場が凍り付く、 

 生徒達は僕を守ろうとしてくれていたのだろう。


「もうこうなったら、ヤマアキやっちまえ、ちゃんと俺達が証言するから」

「そこを心配してくれていたのです。あまり僕が暴れると捕まると?」

「皆そこを心配している。ヤマアキは今ではこのクラスのヒーローだ。もう虐める奴はいないというか地球上にいないと思う」


「そうですか、それはとても嬉しいです。では少し、お仕置きを致しましょう、僕は今日勉強を頑張ると決めたのですから」


 不良グループのリーダーであるその男、叫ぶ。


「俺様を寺伝(じでん)だと分かって、喧嘩を売っているのだな」

「喧嘩を売っているのは寺伝先輩ではないですか」

「ふははははははははは、それもそうだな、ちょっとグラウンドに出ろや」

「いいですよ」

「って窓からかいいいいいい」


 思わず寺伝先輩が叫ぶ。

 僕は窓からジャンプする。 

 ここは結構な高所であり

 足の骨が折れても不思議ではない、

 だが俺は着地すると、グラウンドで待つ。


「寺伝先輩早くしてください、授業が始まります」


「あいつ化け物か?」


 寺伝も気づき始めてきた。


 僕は寺伝達がやってくるまで、1人で体操をしていた。

 やはり喧嘩をする前は体操をすべきだと、

 人生で初めて思った。


 いつも虐められ続けてきた時代だった。

 だが今、僕は虐めに対して反抗する事が出来る。


 体操を終えると、目の前には30人以上の先輩達がいる。

 彼らはバッドや釘のついた棒をなどを握りしめて、

 寺伝先輩はメリケンサックを手に着けていた。


「いいのか? 喧嘩して、お前は病院送りだ。それから毎日こき使ってやる」

「いいからかかってこい、そして俺様は不良のリーダーじゃねー番長だ覚えておけ」

「あ、そうですか」

「なんだよその反応は、もういいわ」

「ではそちらから」


「レディーファーストはお前にくれてやる」

「僕はレディーじゃないダンディーだ」


 その距離15メートルくらい、

 その間を一瞬で僕は走り抜けて見せる。

 それは全力疾走のスキルがちゃんと発動したからだ。


 やはり最初から寺伝先輩を倒して終わらせるのはもったいないので、

 拳一発で先輩の1人を弾き飛ばす。

 まるでアニメのように後ろへと吹き飛ばされ、

 校舎に激突する。

 粉塵が起こる。


【は、えええええええ】


 校舎からグラウンドを見ていた人々は驚愕の悲鳴を上げている。


「う、そだろ、見えなかったぞ」


「早くかかってこんか」


 どうやら寺伝先輩は僕が彼の背後にいる配下を吹き飛ばした事にすら気付いていないし、

 僕が消えている事にすら気付いてない。


「では逝ってまいりましょー」


 

 1人の腹を思いっきり殴る、そいつは遥か空へと吹き飛ばされる。

 回し蹴りで2人を地面の中に叩き落す、

 地面に頭だけを出している。

 落下してくる1人を死なす訳にいかないので、

 拳で地面を殴る、

 地面が砂になり、


 落下してくる先輩を受け止める。


 全力疾走を発動し続ける。

 超人スキルも常に発動しているので、

 僕は普通で考えられない超人になっている。


 それから2分が経過する。

 寺伝先輩が辺りを見渡す。

 そして後ろを見た時、

 僕がいた事に驚き、


「あいつら逃げやがったな」


 彼は相当な天然のようだ。

 校舎やグランドを見れば彼らの残骸があるというのに、

 それでも寺伝先輩は拳を握り絞めて、向かってくる。

 それも15メートルを5秒かけてゆっくりと、

 校舎にいる生徒達は爆笑している。

 僕は先読み思考を発動させる。


 寺伝先輩の攻撃パターンが全て読む事が出来る。 

 足踏みしているかのように、

 ゆっくりと右に左にと移動する。

 それだけで先輩の拳を避ける事が出来る。


「こいつ、ちょこざいなぁああ」


 僕は軽く拳を顔面に叩き込む、

 寺伝先輩は悶絶しながら吹き飛ぶ、

 校門の入り口に激突して、ご臨終となった。


 その時授業が始まるチャイムが鳴り響き、

 僕は全力疾走で2秒後には教室で座っていた。

 ちなみに棘のある椅子は伊達島君が撤去してくれた。


 そして僕のスローライフは再び始まる事にならなかった。


 血まみれの寺伝先輩がドアを開く、

 それをぎょっとして見ているのが、先生だ。


「き、きみ病院に行け」


「そこかい先生」


 伊達島君が突っ込むと。


 俺の前にまでやってくる寺伝君、

 そして俺の前で土下座している。


「折り入って話があります、兄貴」


「いえ兄貴ではありませんから」


「兄貴お願いします。俺達の運命がかかっているのです」


「勝手に運命を託さないください」


「兄貴、俺達を暴走族集団から解放してください、毎日お布施しないと殺されるんです」

「僕が殺されるよ」


「兄貴は普通じゃないので大丈夫です」

「だいじょばないよ」

「兄貴頼みます」

「さっきまで僕に暴言を吐いていた人とは思えないセリフだな」


「どうにかしてやれないか?」

「先生は何どさくさに紛れて先生らしくない事を言っているんだ。そもそもこういうのは大人の仕事でしょうが」


「では授業をはじめまーす」


「先生ええええええ」


 男性の先生は全てを僕に丸投げしたのであった。

 大人って汚いです。

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