第12話 図書館で習得

 先生の慟哭を聞いた後、しばらくしたら授業が終わった。

 僕は今日、図書室に籠る事にした。

 図書室の閉館時間は夕方の5時までと決まっており、

 今からだと2時間程読書をする事が出来る。


 僕は図書室の扉をゆっくりと開く、 

 そこには無数の本があり、

 人生に悲観していた時にはよく遊びに来たものだ。


 小説がもしかしたら僕のスキルアップに関係する可能性があると思ったので、無人島育成もあるが、自分自身を育成する事も大事だと思っていた。


 なので図書室に再びやってきたのだ。皆が静かに読書をしている。

 図書委員の人がカウンターでゆっくりとした目線で姿勢をよくしながらも、

 読書をしていた。


 僕は適当に気になる本を見つけて5冊程手に持つと、

 それをテーブルに乗せた。 

 周りの生徒達がこちらを見ると、にこりと挨拶してくれる。

 どうやら僕がいつも図書室にやってくるチビでデブと言う所に気付いていないのだろう


 僕はそれから黙々と読書を続ける事にした。

 小説とは不思議なものだと思う、 

 言葉や挿絵みたいなもので、そのストーリーを表す事が出来るのだから、

 人間が読書から得た知識は莫大なものである事は断言出来るだろうし、


 周りの世界がゆっくりと突き進む中、

 太陽がゆっくりと地平線に降りて行く事にも気付く事はせず、


 僕は右肩を図書委員の生徒に叩かれるまで、時間が5時に到達している事に気付かなかった。


「あなたいつも来る小さなおデブさんですよね」


 太陽はゆっくりと沈んで行く、

 それを視野に入れつつ、図書室には光が無かった。 

 電気を付けていなかったのだろう、


 暗闇の赤、彼女の顔がくっきりと見えた。

 眼鏡をかけて、ほっそりとした顔に、にこやかでチャーミングな笑顔。

 ほっそりと痩せすぎているのではないかと言うくらいの女性だった。

 身長は今の僕と同じくらいだし、


 なぜ彼女は僕が元々のデブとチビである事を見破る事が出来たのだろうか?

 

「なぜ君は、僕の事を?」

「はい、あなたがすごく本を読んでいる所をよく見ていました。あなたは無我夢中で本を読む、あなたみたいな人と沢山お話がしてみたかったのです。私、地味だから友達いなくて、小説が好きな友達もいないんです」


「そうなんだ。なら友達になる?」


 僕はなぜこんな事を平気で言えたのだろうか?

 それでも彼女が友達になりたそうにしているってすぐに分かった。

 それはモンスターがこちらに向ける視線と似ている。

 仲間にしてくださいという視線だ。


「は、はい!」

「一緒に帰る? 駅までは同じだろ?」

「はいです」


 その日から僕は生まれて初めて女性の友達が出来ました。

 後は読書をする事や今の出来事でスキルを習得したみたいだ。


 やはり現実の世界でもスキルを学習する事は可能なようだ。


―――レベル4になりました―――

―――先読み思考を習得しました―――

―――忍耐力を習得しました―――

―――釣り竿作成を習得しました―――

―――釣りを習得しました―――


 レベルが上昇するのは誤算であったが、

 嬉しい事には変わりない事であった。

 他のスキルについては後程祖父に聞いてみる事にしつつも、

 

 僕と図書委員の女性は地下鉄駅まで一緒に歩く事になった。

 そこで僕と図書委員の名前とメールアドレスを交換する事となった。

 もちろん電話番号すらも交換していた。


 彼女はそれを見て涙を流しそうな程感激していた。


 自己紹介の結果、彼女の名前は七条楓(ななじょう かえで)という名前だと発覚した。

 七条さんは僕の隣のクラスらしい、

 虐めとかがある訳ではないけど、孤立しているとの事、

 2人は沢山の本の話をした。

 ライトノベルや歴史小説や恋愛小説や冒険小説、あらゆる小説を七条さんは読んできたようだ。


 僕も七条さんに見てきた小説の話をしていた。

 それはファンタジーだったり、超能力の主人公だったり、

 最初は児童文学から入ったと言うと、七条さんは驚きの表情を浮かべていた。


「僕は基本的に沢山の本を読むタイプじゃなかったんだ。だけど児童文学で培った力は大きくて、読む力がついた僕はそこからライトノベルや歴史小説や恋愛小説に乗り込んでいったんだよ」


「それはすごいです。私は児童文学が合わなかったのですけど、絵本で学びました。沢山の絵本を見ると物語が頭の中で動きだすのです。それから恋愛小説とかに入って行きました。やっぱり恋愛小説は最高です」


「僕も恋愛小説は大好きだよ、男子と女子の使い方とか、どうやって告白するとか、告白しないでその気持ちを伝える難易度の高い事など、恋愛小説は沢山を学ぶ事があるんだ」


「そうですよねぇ、分かる方で嬉しいです」


「じゃあ僕はこっちの駅だから、明日また会いましょう」

「あい、よろしくお願いいたします」


 高校に入ってからの初めての友達は、

 とても真面目そうで、なにより優等生のようなのだ。

 七条さんを大切にして行かなければならないと思い始め、

 僕は地下鉄に乗り込む事となった。


 沢山の人々が地下鉄に乗って、

 人の波がまるで津波のようであった。

 この沢山の人々には1人1人物語があって、

 七条さんにも高校クラスのリーダー格の伊達島君にもストーリーがある訳わけなのだ。

 

 俺のストーリーはきっと別な世界で展開されるだろう、

 今俺は地下鉄を降りてバスに乗り換えてバスから降りる事となり、

 数分の帰路につき、家に到着して、夕ご飯はいらないと母親に告げると、

 母親は別に不思議そうにする訳でもなかった。


 僕が夕飯を食べないのは当たり前な日課であり、

 特別な事ではないのだ。


 僕は屋敷の祖父の分館である玄関から入ると、

 心臓がばくばくしている。

 あの世界があるから、僕は頑張る事が出来る。


 巻物を隠してある場所から、巻物を取り出し、

 それを開く、するとそこは、異世界の無人の屋敷の中で、窓を開けると、

 そこにはこの拠点の無人島の2倍くらいしかない小さな無人島がぷかりと浮いていた。


 僕は2個目の無人島と出会い、新しい事を学ぶのだろう、

 その時祖父の赤いホログラムが目の間に飛来したのであった。


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