第9話 畑作業はシルカの仕事
住処の屋敷がある無人島に到着すると、
僕とホログラムの祖父とシルカが巨大な木に到達する。
「前にも言ったがのう、この木に食べ物を与えると、どんどんと成長していく、この島そのものも大きくなっていく、とても不思議な木なのじゃ」
僕はアイテムボックスからブーリンという紫色のリンゴのような形の果物を5個黒い口に放り投げた。
すると、目の前にケージが出現する。
そのケージがどんどんと赤色に染まっていく、
透明なケージが赤で満タンになると。
―――おめでとうございます。島レベルが2になりました。大きくなります―――
その音を響かせて、無人島がめきめきとまるで地震のような揺れを引き起こしながら、
どんどんと巨大になっていく。
まさかたったブーリン5個でこんなに成長するとは思わなかった。
確かに無人島は1・5倍ほど広くなっている。
僕はまた5個のブーリンを入れるとケージが5分の4までたまり、
めんどくさいのでブーリンを合計30個まで放り投げる。
残っているブーリンは20個と言う所で、シルカの食料として必要だと思っていたからだ。
ケージが何度もマックスになると、
レベル5でとまる。
―――おめでとうございます。島レベルが5になりました。大きくなります―――
なんか最初の無人島の3倍くらいの広さになっている。
とてつもなく広くなったはいいが、人がいないので少し寂しく感じる。
祖父が魔法でエリクサの種と色々な種を持ってきた。
シルカはその種と会話しだすと、
にこにこしている。
一人芝居ではないようなので、僕としては凄い事だと思う。
シルカは風魔法で種をふわふわさせている。
まるで種の体操のようだ。
「これすると種が元気になる。後は地面を耕す。この巨大な木の近くだと土のパワーがあるから、すごくいい物が作れる。作物は任せて」
シルカは魔法で雑草を片端から抜き始める。
風のように雑草が根っこから抜かれ、その全てが、巨大な木に吸い込まれる。
しかもケージが少しだけ上がる。
本当になんでも食べるようだ。
雑草がなくなると、茶色い土が見えてくる。
島レベル5なので、畑の広さも結構ある。
シルカはそこにふわふわさせていた種達を1つずつ大切にするように植えて行く。
全ての種が植え終わるのに15分くらい、雑草を抜くのに5分ほど、水やりに2分ほど。
凄いハイスペックな農業に、僕とホログラムの爺ちゃんは唖然と見ている。
「わしが畑をするとなると、たぶん4日はかかるぞ、この畑の広さで、数分で終わるのは、シルカちゃんだからじゃのう」
「爺ちゃん、僕はチートを使っているのだろうか?」
「チートという言葉は知らんが、お主は頑張っているさ」
僕はにこにことし、
シルカはこちらに飛んでくる。
「畑の準備と種植えと水やり終った。後は、成長するのを待つだけ、種の体操もしたから、すぐに出てくると思う。エリクサはとても気難しい、ジャガイモと人参はとても明るい、ホウレンソウと小松菜は笑い上手」
すごい表現に、僕は戸惑いつつも。
「ありがとう、これでしばらくは大丈夫そうだよ」
どうやらジャガイモと人参とほうれん草と小松菜を植えたみたいだ。
「後よく分からない種も植えたんだよ」
「う、うん、それは怖いな」
僕とシルカと祖父は屋敷に入る事とした。
武器と防具を玄関に置くと、いつでもすぐに着用出来るように準備したのだが、
アイテムボックスに入れる事とした。
そのほうが手っ取り早い事に気付いたからだ。
アイテムボックスレベル1にどのくらい入れれるかは分からないけど、レベル3になったらとんでもない物を入れれそうで少し怖い。
シルカは初めての人間の建物に感動したようで、
至る所を飛翔している。
僕は居間に到達する。
現実にある屋敷の祖父の分館をコピーしたものなので、
とても狭苦しいが、今はそこにいる。
生前ここで祖母と仲良く暮らしていた事を知っているし、
なにより祖父はいつも馬鹿な事ばかりして、祖母に突っ込まれていた。
テーブルにアイテムボックスから取り出すのは、
【ビーチスライムの魔石】×21個
【グリーンゴブリンの魔石】×5個
【精霊食い蜥蜴の魔石】×1個
「さて爺ちゃん、この魔石をどうすればいいんだ?」
すると祖父はにかりとほほ笑むと。
「どうやらお主にあれを渡す時が来たようじゃ、そこの棚の奥からボードを取ってきてくれ」
「そうするよ」
僕は棚の奥を調べると、
そこには丸いボードが仕舞ってあった。
それを引き抜き、
テーブルに乗せる。
祖父が直接触れる事が出来ないので、
魔法で触れると、
盤を開く、
そこには魔石を嵌める所が無数にあった。
「わしはこの番をコンプリートしたものでな、どうやらリセットされているようじゃ」
「コンプリートってこの数の魔石は無理だろ」
丸い盤と言えども結構な大きさであり、
魔石はとても小さい、
穴は無数にある訳だ。
「これをマジックボードと言うものでな、例えばこの窪みにはそれぞれ名前が書かれてある。ゴブリンならゴブリン系の魔石を入れれば良い、グリーンゴブリンも可能だ。スライムならビーチスライムも可能だ。後同じモンスターを100回窪みに入れると称号を貰える。称号には色々な力がある」
「なぁ爺ちゃん、同じ所に入れてもまた入れれないのでは?」
「その上から押すと下の魔石が盤に吸収される」
「例えばスライムの魔石を1つ盤に入れたらどうなる?」
「何かの恩恵が起こる。それがスキルなのか魔法なのか設備なのか道具なのか武器なのかは分からない」
「なるほどなぁ、なら1個入れるだけで100個入れる必要ない訳だ」
「じゃが称号はとてつもなくいいぞ」
「なるほど、例えばこの世界に1体しかいない魔石だったらどうなるんだ?」
「安心しろ、それも考えられて作られている」
「なるほどなぁ」
「わしがこの世界の主だった時は商人から魔石を購入したり、他の人と交換したりした事があるのう、まぁお主の器で商人をこの世界に出現させられるかにかかっておるがのう」
「なるほど、てか、カードゲームじゃねーか、じゃあこのマジックボードはフォルダーかよ」
「それはよく知らんがのう」
「で別な使い方もあるんだろ」
「うむ、例えばスライムにスライムの魔石を食べさせると、テイム率があがる」
「何かのゲームの肉かよ」
「そのゲームは知らんがのう」
「じゃからお主がビーチスライムを仲間にしたいなら、スライム系の魔石を投げて、食べさせるとテイム率があがる。シルフをテイム出来たのはイベント性のなんたらじゃ」
「途中で説明を放棄しないでくれええ」
「ふぉふぉ、わしは全能ではないのじゃ」
「なるほど、とりあえず。ビーチスライムの魔石ことスライムの魔石とゴブリンの魔石と精霊食い蜥蜴の魔石を嵌めてみるよ」
その時きっと何かが起こるであろうと、
僕は身構えながら、カチット魔石と嵌めたのであった。
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