第7話 自然の精霊と精霊食い蜥蜴

 ボロボロのイカダのコントロールはとても難しかったけど、 

 ホログラムの祖父がイカダのコントロールの方法を教えてくれて、

 なんとか大きな無人島に漂着する事に成功した。


 僕はクリムゾンリッパ―を鞘にしまって腰に差している。

 鎧はファイブアーマーを身に着けている。


「この無人島は木々が多いようじゃ、もしかしたら何か生命がいるかもしれないなぁ」

「モンスターだったら倒すとして、強すぎる敵が現れたらどうすれば?」

「それは逃げるしかないじゃろう」

「すごく原始的でしたね」


「それもそうじゃ」


 僕は辺りを見渡して、

 ゆっくりと歩き出した。

 するとお約束なのか水色の大きなグミみたいな奴が沢山ぐねぐねしていた。

 こちらに気付くと突如動きが早くなりバウンドしながらこちらにタックルしてくるではないか、


 ここは砂浜なのだが、さっそくモンスターと出会ってしまった。


 とりあえず距離を開くと。


「まず戦いの基本からじゃ、初めて見るモンスターには鑑定を使用する事をお勧めする」


「分かったよ爺ちゃん」


 僕は鑑定を作動させると、名前とレベルが表示される。


【ビーチスライム:レベル1】


まるで僕の瞳が鑑定の目そのものに変化すると、

 スライム以外にも石とか砂とか木々とか水とか、目に入るものすべてを鑑定し、


 空中にそれが表示されるものだから、僕としては驚きを隠せない。


「1つ言い忘れていたが、スライムに集中しないと別な物体を鑑定してしまうので気を付けてくれじゃ」


「それ早くいってよ」


 とりあえず僕はクリムゾンリッパーを構えると、ごく普通の上段斬りの要領で剣を振り落とした。

 スライムが真っ二つになってまるでゲームのように消滅すると、

 そこにはドロップアイテムが転がっている。


 僕はそのドロップアイテムを拾うと、

 何かの石ころのようで、それを鑑定すると。


【ビーチスライムの魔石】


 本当にゲームそのものだった。

 ゲームとかでもモンスターを倒すと魔石とかまたはアイテム、またはお金が落ちる事がある。

 ここはゲームなのか?


「この世界ではこう言う事が当たり前じゃ、魔石は色々と使用方法があるから、大事に持っておけ、ポケットにでもいれるのじゃな」


 爺さんの言う通りにポケットにアイテムを入れる事にする。


―――アイテムボックスレベル1を習得しました―――


「はいいいいい?」


「どうやらアイテムボックスのスキルはアイテムをポケットに入れる事が発動条件じゃったようじゃ」

「すごいなぁ、このアイテムボックスはどうやって使えば?」


「普通にアイテムボックスと意識すれば出現するじゃろう」


 言われた通りにすると、

 空間からルービックキューブのような箱が出現する。

 大きさもルービックキューブと同じくらいで、

 その箱に魔石を近づけると、掃除機のように吸い込んでしまった。


 驚きつつも、どうやら大きさは関係なく箱に近づけると吸い込むみたいだ。


 すごいなぁとか思っていて、

 アイテムボックスを意識して消すと、

 空間そのものに消滅した。


 これもリアルで使えたら、僕はすごい人間になりそうだ。


 少し怖いけど。


 僕はビーチから森に入ろうとするのだが、

 森からビーチスライムレベル1が群れになって出現してきた。

 その数20体。


 僕はスライム無双を始める事にした。

 クリムゾンリッパーを振り落としまくり、

 スライムを殺害しまくる。

 顔がない事が唯一の救いだ。

 顔があれば、可愛くて殺す事に躊躇いを覚えるだろう、

 最後の1体を倒すと、

 

―――レベル2になりました。おめでとうございます―――

―――剣術レベル2を習得しました―――

―――攻撃力レベル2を習得しました―――

―――素早さレベル2を習得しました―――

―――鷹の目を習得しました―――


 あとスライムの魔石を20個手に入れる事になりアイテムボックスにしまった。


「なんか鷹の目を習得したんだけどさ、これってゲームだと高い所から見える奴だよね、爺ちゃん」

「ゲームの事は知らんが、そういう効果じゃ、一度使用してみろ」

「うん、そうするよ」


 スキル:鷹の目を使用すると、

 意識が空高くに飛び上がる。

 まるで魂そのものを空に飛ばしているようだ。

 鷹のように空を飛翔してみせると、体が無い事そして魂でもない事を理解し始める。


 辺りを見渡し、沢山のモンスター等が見えたりするが、

 非常に危険なモンスターはいなさそうだし、

 この無人島の広さは1つの街くらいだろうし、1時間もあれば一周位できそうだ。


 そして異変に気付く、

 そこには緑色の羽をした1人の美少女がいた。

 それもすごく小さくて、手のひらサイズだった。

 そいつが緑色の小人達に追いかけまわされている。

 鷹の目の状態で鑑定を発動出来る事に気付いたので。


【グリーンゴブリン:レベル3】×5体


【精霊シルフ:レベル1】


 という2つの情報を手に入れると、 

 僕は鷹の目を解除して、

 意識を地上に戻す。


「爺ちゃん走るよ」

「わしは浮かんでおるがのう」


 爺ちゃんのユーモアブラックジョークを軽く流しておいて、

 僕は人生で初めて全力疾走をしていた。


 あんな可愛らしい精霊がゴブリンに殺されるところを創造したくなかった。

 だから僕は必至で走ったんだ。

 そこに到達したとき、

 気付かなかったけどゴブリンの後ろにはボスのように巨大な蜥蜴がいた。

 そいつを鑑定すると。


【精霊食い蜥蜴:レベル5】と表示されている。


 つまりゴブリン達は精霊食い蜥蜴の餌として精霊シルフを捕まえようとしている。


 精霊シルフは巨大な木々に退路を邪魔されている。

 ゴブリン達はにやにやしながら、

 ぺろりと唇を舐めているのが精霊食い蜥蜴だった。


 僕はそこに到達すると、


 先手必勝とばかりに1体のゴブリンの首をクリムゾンリッパ―で両断していた。

 クリムゾンリッパ―はゴブリンの血を吸い込み始め、

 その後にゴブリンは魔石になって消滅した。


―――チャージ&ブレイク―――


 どうやらゴブリンの血をクリムゾンリッパ―が吸い込んだ事により、

 チャージ&ブレイクというスキルを覚えたのだろう。


「爺ちゃん、チャージ&ブレイクは?」

「それはチャージしたものをブレイクさせる事、つまり充填して発射じゃ」

「了解」


 4体のゴブリン達がこちらに向かって剣を振り上げる。 

 ゴブリン達が使用している剣はぼろぼろのようで、

 防具もぼろぼろだった。

 だから僕は2体目もやすやすと首を両断して見せる事にした。

 首がまたころころと転がり消滅すると魔石となる。


 残り3体だ。

 3体はフォーメーションのようなものをとり、四方から襲い掛かる。

 僕はとりあえず、1体に向けてチャージ&ブレイクを発動させる。

 血の弾丸がクリムゾンリッパ―が射出される。

 ゴブリンの頭を貫通し、そこにぶっ倒れる。

 1体は恐怖を感じ、

 1体はこちらに迫る。

 

 迫ってきたゴブリンの首を両断すると、 

 逃げようとするゴブリンを背後からチャージ&ブレイクで頭を貫通させる。


 5体のゴブリンを全滅させ、

 最後の精霊食い蜥蜴を見る。

 奴はこちらの事など興味未なさそうに精霊シルフに向かっている。

 どうやら獲物を前にして興奮しているようで、ゆっくりと向かっている。


 シルフの前に僕は立つ。

 精霊シルフはこちらを見て蹲っていた。


「あとは任せろ」


 かくして精霊食い蜥蜴の討伐が始まる。

 僕は武術を学んでいる訳でも、剣道を学んでいる訳でもないのに、

 あれだけゴブリンを殺す事が出来た。

 それを可能にしているのが、恐らく剣術スキルとかだと、

 今の僕は思っている。

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